26 / 46
第四章 ピアスはきっと、自分で刺した方が痛くない…と思う
第四章―08
しおりを挟む
――わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない…………。
「結局、思い出せない…というよりも、もともと凸凹坂くんの記憶には無いのよね……。でも、それは悲しむことではないわ。なぜなら、これから本当の意味で、わたしたちの関係は始まるのだから」
小春井巻はこの言葉を、自分自身、慰めるために語っている……!?
なぜかこの時、それがわかった気がした。
すると――
ふっ……と股間の痛みが和らいだ。
小春井巻がその手の力を緩めたのに他ならない。
「さあ、ご覧なさい。もう、大丈夫。怖がることはないわ」
その声に導かれるようにして、LEDライトを股間に照射する。
それは相変わらず『象さんの鼻』だったけれど、だけど、ピアッサーの狭窄板が緩められてるのを見て、ほ…っと吐息を溢さずにはいられない。
ピアッサーを挟みつけている小春井巻の親指と人差し指との間隔が見る見る広がってゆく……ということは。
――これで開放されるんだ…。
安堵が、暖められた蜂蜜のように体内に甘く満ちてゆく。
「それでは契約を結びましょう」
「え!?」
何?
「あなたはこれより、女王陛下の家畜になるのよ」
ピアッサーを掴んでいる小春井巻の右手がググッと硬直する。
「ええッ!?」
そう!
小春井巻が右手を緩めたわけは、ピアッサーを押しこむための、その前段階としての準備に他ならなかったのだ!
「や、止めてくれッ!」
本気で懇願した。
「頼むからッ、お願いだからッ、悪いところがあったら直すからッ!」
って、これじゃあ浮気男の言い訳じゃないか……。
それでもアソコが傷物にされるよりかはずっと増しだ!
ありとあらゆる、思いつく限りの言葉で小春井巻に懇願した。
でも――
「喚かないでっ。手元が狂っても知らないわよっ。それとも、亀頭に直接、突き立てて欲しい?」
キッと睨みつけた小春井巻の瞳は、暗闇でもわかるほど冷然とした光を発している。
「あッ……あッ……」
と情けない声音を断続的にあげてしまうのは、小春井巻がその右手に、キュっ…キュっ…と断続的な力をこめているからだ。あたかも、それはピアスを打ち込むべく狙いをさだめているかのように。
「じゃ、1、2、の3…でいくわよ」
もはや、ゴクリっ…と固唾を呑み込んで見守るより他に手立てはなかった。
目を閉じたい衝動に駆られたけれど、しかし、何もわからぬ間に打たれるのもかえって恐いし……。
などと考えてる内に。
「1……」
あっ。
「2……」
そして『3』の合図に備えて息を深く吸おうとした矢先だった。
ガチンッ!!
と、その音は脳天を貫いたようで、と同時に、脳内に焦臭い匂いが弾けたような気がした。
畜生っ!
この女、フライングしやがった!
後日考えてみれば、それは気絶するほどの痛みじゃなかったのかも知れない。
しかし、視覚や概念と言ったものがもたらす痛み、つまりショックというやつだろうか、それは痛覚をすっ飛ばして直接、脳髄に衝撃を与えるものなのだろう。例えば、指の骨が折れたとして、それでも指がいつものようにただ真っ直ぐでいてくれたなら、それはさほどショックもなく、下手をすると嘔吐や寒気といったものが伴わない限りそれと気づかないかも知れない。しかし、折れた指があらぬ方向に直角に曲がってしまっているのを見たとしたら、そのショックは絶大だろう。
彼の意識が薄れていったのもまた、その絶大なるショックがもたらしたものに他ならなかった。
その薄れてゆく意識の中で幻を見た。
だって幻としか思えないだろう。
あの小春井巻の顔が、嬉しそうに、それは本当に嬉しそうに、まるで子供がはしゃぐみたいに笑っていたのだから。
そして彼女は「おそろいね」と言って、ワンピースを胸のあたりまで捲って見せた。そこには……その彼女の臍には……。
――なんだ……臍ピアスじゃないか…………………………………………暗転。
「結局、思い出せない…というよりも、もともと凸凹坂くんの記憶には無いのよね……。でも、それは悲しむことではないわ。なぜなら、これから本当の意味で、わたしたちの関係は始まるのだから」
小春井巻はこの言葉を、自分自身、慰めるために語っている……!?
なぜかこの時、それがわかった気がした。
すると――
ふっ……と股間の痛みが和らいだ。
小春井巻がその手の力を緩めたのに他ならない。
「さあ、ご覧なさい。もう、大丈夫。怖がることはないわ」
その声に導かれるようにして、LEDライトを股間に照射する。
それは相変わらず『象さんの鼻』だったけれど、だけど、ピアッサーの狭窄板が緩められてるのを見て、ほ…っと吐息を溢さずにはいられない。
ピアッサーを挟みつけている小春井巻の親指と人差し指との間隔が見る見る広がってゆく……ということは。
――これで開放されるんだ…。
安堵が、暖められた蜂蜜のように体内に甘く満ちてゆく。
「それでは契約を結びましょう」
「え!?」
何?
「あなたはこれより、女王陛下の家畜になるのよ」
ピアッサーを掴んでいる小春井巻の右手がググッと硬直する。
「ええッ!?」
そう!
小春井巻が右手を緩めたわけは、ピアッサーを押しこむための、その前段階としての準備に他ならなかったのだ!
「や、止めてくれッ!」
本気で懇願した。
「頼むからッ、お願いだからッ、悪いところがあったら直すからッ!」
って、これじゃあ浮気男の言い訳じゃないか……。
それでもアソコが傷物にされるよりかはずっと増しだ!
ありとあらゆる、思いつく限りの言葉で小春井巻に懇願した。
でも――
「喚かないでっ。手元が狂っても知らないわよっ。それとも、亀頭に直接、突き立てて欲しい?」
キッと睨みつけた小春井巻の瞳は、暗闇でもわかるほど冷然とした光を発している。
「あッ……あッ……」
と情けない声音を断続的にあげてしまうのは、小春井巻がその右手に、キュっ…キュっ…と断続的な力をこめているからだ。あたかも、それはピアスを打ち込むべく狙いをさだめているかのように。
「じゃ、1、2、の3…でいくわよ」
もはや、ゴクリっ…と固唾を呑み込んで見守るより他に手立てはなかった。
目を閉じたい衝動に駆られたけれど、しかし、何もわからぬ間に打たれるのもかえって恐いし……。
などと考えてる内に。
「1……」
あっ。
「2……」
そして『3』の合図に備えて息を深く吸おうとした矢先だった。
ガチンッ!!
と、その音は脳天を貫いたようで、と同時に、脳内に焦臭い匂いが弾けたような気がした。
畜生っ!
この女、フライングしやがった!
後日考えてみれば、それは気絶するほどの痛みじゃなかったのかも知れない。
しかし、視覚や概念と言ったものがもたらす痛み、つまりショックというやつだろうか、それは痛覚をすっ飛ばして直接、脳髄に衝撃を与えるものなのだろう。例えば、指の骨が折れたとして、それでも指がいつものようにただ真っ直ぐでいてくれたなら、それはさほどショックもなく、下手をすると嘔吐や寒気といったものが伴わない限りそれと気づかないかも知れない。しかし、折れた指があらぬ方向に直角に曲がってしまっているのを見たとしたら、そのショックは絶大だろう。
彼の意識が薄れていったのもまた、その絶大なるショックがもたらしたものに他ならなかった。
その薄れてゆく意識の中で幻を見た。
だって幻としか思えないだろう。
あの小春井巻の顔が、嬉しそうに、それは本当に嬉しそうに、まるで子供がはしゃぐみたいに笑っていたのだから。
そして彼女は「おそろいね」と言って、ワンピースを胸のあたりまで捲って見せた。そこには……その彼女の臍には……。
――なんだ……臍ピアスじゃないか…………………………………………暗転。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる