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第七十八話 パーティ名決定

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 金曜日の朝の鍛練をしているときに、綾芽に今までずっと気になっていたことを尋ねた。

「綾芽、皐月がパーティメンバーになるって早くから言ってたよな。どうしてそう思ったんだ?」
「そんなの簡単なことだよ。お兄ちゃんには花が集まるんだよ。皐月も花でしょ。だからパーティメンバーになると思ったんだよ。これからもお兄ちゃんには、沢山の花が集まって来るかもね?」
「花が集まるってどういうことだ?」
「まず、お兄ちゃんがリンドウで、私がアヤメ、遥はカエデで真琴はアオイ、モモとヤマブキは言うまでもないでしょ。それに真姫姉と美姫さんもタチバナだから皆が集まったんだよ」
「なるほど。偶然にしては面白い話だな」

 鍛練後に綾芽は急いで学校に向かった。僕はダンジョンに行く準備を終えて、最後までパーティ名を考えていた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 今日も十六階層から二十五階層の探索をしてボス部屋の前に到着した。

「今日はオレがホブゴブリンと戦わせてもらうぞ。真姫、オレがホブゴブリンを防ぐから、タイミングを見て攻撃をしてくれ、二人で倒そう」
「了解だよ、皐月。麟瞳さんに私達の力を見せるチャンスね。後でギャフンと言わせるけど、その前にもギャフンと言ってもらいましょう」

 真姫は何故かギャフンにこだわっているが、相変わらずよく分からない子だな。

「ホブゴブリンだけが相手じゃないからな。周りに気をつけていこう」

 美姫の準備も良いようだ。四人でボス部屋に入り、扉が閉まった。今回は正攻法で戦う。まずは美姫と僕で後衛のゴブリンに攻撃を与えて戦闘の開始だ。

『ホブゴブリンが二匹います。一匹は皐月と真姫で、もう一匹はリーダーに任せます』

 戦闘の指示は全体を見渡せる美姫に任せている。指示に従ってホブゴブリン討伐に向かう。靴の風魔法で素早く近づき、顔にファイヤーボールを一撃入れた。これでほぼ決着はついた。最後に刀を一閃し首を落とした。残りのゴブリンに向かい靴の風魔法を発動する。

 真姫と皐月も無事にホブゴブリンと決着をつけたようだ。僕が最後のゴブリンを袈裟斬りで討伐してボス部屋を攻略完了。ドロップアイテムを拾って宝箱を開け中身を回収した。

「麟瞳さん、見てた私達の戦い。上手く戦えたと思うんだけど」
「こちらも戦闘中だから詳しくは見られなかったよ。ギャフンと言えなくて本当に残念だよ」

 二十六階層のセーフティーゾーンで水分補給をしながら、先ほどの戦闘について話をする。

「実際にどうだったんだ?美姫は二人の戦いを見ていたのか?」
「ええ、見ていました。皐月の盾は安定しています。真姫が止めを刺すまで一度も崩れませんでした。他のゴブリンが来ても一度も後ろに行かせませんでしたよ。よく頑張ったと思います」
「私の攻撃はどうだった?」
「出来ることを確実に実行しているように見えるわ。今持っている力を存分に発揮していると思う。火力がもう少し欲しいけど、それは今後の課題ね」

 流石に姉妹だと言葉遣いも砕けるんだな。それにもう少しこの階層で練習をしたら、次に進めそうだな。

「じゃあそろそろパーティ名を決めていこうか。誰から考えてきた名前を発表する?」
「オレから言うぞ。昨日の寝る前まで考えた名前だ。《Four character idiomatic compounds》良い名前だろ」
「英語なのか?意味がよくわからないけど、真姫と美姫は分かるのか?」
「多分だけど、四字熟語という意味だと思うわ」

 流石大学生だな、真姫は意味が分かるようだ。勿論全員一致で不採用決定。

「次は私ですね。聞いたら一発で気に入ってしまうと思います。《黄昏の騎士団》です。聞いた感じが良いと思いませんか?」
「黄昏って夕方ぐらいのことだったっけ。日が暮れるようにパーティも落ちていったら大変なことになるよね」
「実際に、黄昏の意味にも盛りの時期が過ぎて衰えの見え出すとかって意味があったと思うわ」

 真姫は物知りだな。適当に言ったことが大体当たっていたようだ。勿論全員一致で不採用決定。

「次は私ね。今度黒い皮でジャケットを作るでしょ、そこから考えたわ。《漆黒の騎士団》よ」
「美姫も真姫も騎士団が好きなんだな。《東京騎士団》の影響を受けすぎじゃないか?」

 《東京騎士団》と《Black-Red ワルキューレ》は探索者の誰もが知っているクランの名前である。この二つのクランマスターが四字熟語のギフトを持っていて、その活躍によって四字熟語ユニークギフトと呼ばれるようになったと言っても過言ではないだろう。そんな圧倒的なカリスマが率いる東西のトップクランである。

「そりゃあ影響を受けているわよ。憧れの存在だわ」
「僕としては、騎士団は付けたくないんだが、皆はどう思うんだ」
「漆黒と言うのが引っ掛かります。中二病的なものを感じるのは私だけなのでしょうか?」
「オレは悪くないと思うぞ」

 取りあえず保留ということで、次に僕の考えた名前を発表することになった。

「僕が考えた名前は《千紫万紅》だ。意味は色とりどりの花が咲き乱れること。タチバナとサツキとリンドウだ、悪くない名前と思わないか?まあ、自分で考えたというより、妹の言うことから考えたんだけどね。僕と関わる探索者は花の名前がついているんだって。皐月のパーティ加入も早くから予言していたんだ」
「皐月はまだ仮パーティメンバーですよ。でも、《千紫万紅》ですか?意味を聞いたら悪くないと思います」
「《千紫万紅》よりもっと有名な四字熟語があるじゃない。《百花繚乱》の方が同じような意味で誰でも知っている言葉だと思うわ」
「そんなことを言ってると、京都から関西弁の怖いお兄さんが文句を言ってくるぞ!………ちょっと訳が分からないことを言っちゃったかな。《百花繚乱》はパーティ名としては受け付けてくれないよ。もう実在しているパーティ名だからね。僕が岡山に帰って来る前に在籍していたのが《百花繚乱》なんだ」 
「前に言っていた、リーダーが一度の攻略失敗で追放されたパーティですね。百を超えて千と万ですか?リーダーも面白いことを考えますね。私は賛成します」
「オレもそれで良いぞ。綾芽達は元気にしているのか?また会う機会を作ってほしいぜ」
「私の《漆黒の騎士団》より支持を受けるなんて………私も《千紫万紅》に賛成するわ。ギャフン!」

 美姫の変な深読みと真姫の変なこだわりをスルーしてダンジョンの外へ転移しよう。

 部屋の中で買取りをしてもらった後に、常盤さんにパーティ名を告げる。

「パーティ名は《千紫万紅》にしました。登録をお願いします」
「素敵な名前です。全国に名前が広がっても恥ずかしくない良い名前だと思います。今後の活躍に期待していますね」

 全国に名前が広がるって、常盤さんは大きいことを言い過ぎだよ。

 因みに、今日の二つの宝箱の中には、いつもの五本ずつのポーションセットの他に、爆裂の矢が五本ずつ入っていた。三回続けて出てきたということは僕には必要だと考えた方がいい。美姫にはしっかりと練習をしてもらおう。




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