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第七十七話 岡山ダンジョンの二十五階層まで攻略

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 金曜日の午前中は、岡山ダンジョンの十六階層から二十階層をパーティの連携と新しい装備品の性能を確かめるように探索して行った。無事にボス部屋の攻略を終えて二十一階層のセーフティーゾーンでお弁当を食べることにした。

「真姫、新しい槍の使い心地はどうなんだ?」
「良いわね。軽くなったことで槍の操縦性が上がり取り扱いが楽になったわ。麟瞳さんには感謝しているわ」
「皐月の腕輪と盾はどうなんだ?」
「まだ分からないことばかりだ。今度魔法を盾で受けさせてくれ。どれだけ衝撃がオレに届くか受けて見ないと分からないからな。リーダーが魔法をオレに撃ってくれるか?」
「いや、それは怖くて出来ないよ。ゴブリンメイジの魔法で一回チャレンジしてみるか?」
「分かっていますか?真姫と皐月の二人とも、マジックアイテムはパーティの財産ですからね。特に皐月はまだ仮パーティメンバーですよ。問題を起こしたら即腕輪と盾は返してもらってクビになるんですからね。軽率な行動はしないようにして下さい」

 美姫はパーティのお母さん役だね。結局今回の探索前に盾も皐月に貸し出すことにした。折角良い性能を持った武具を使わない手はない。パーティの戦力も上がっていくだろう。

 盾は以前僕がソロで探索したときに宝箱から得た物で、挑発と魔法防御の効果が付与されていて、買取り価格が五千万円の黒い大盾だ。

 弁当も皆が食べ終えたようだ。さあ、探索を再開しよう。

「ここからはまだ足を踏み入れていない階層になる。情報は皆取っていると思うが、慎重に進んで行こう。岡山ダンジョンに罠はない筈だから、皐月を先頭にいつものフォーメーションで良いと思う。相手は遠距離攻撃の出来るゴブリンメイジとゴブリンアーチャーが必ず入っているが、美姫と僕で先に対処するから問題なく進める筈だ。最初に皐月がさっき言っていた魔法を受け止める実験もやってみようか?魔法防御の効果を確認しておくことも必要だろう」 

 八匹のゴブリンパーティにエンカウントした。美姫が素早くゴブリンアーチャーの討伐に成功し、ゴブリンメイジからの魔法攻撃を待つ。

「大丈夫だ。棍棒で攻撃された時よりも衝撃は少ないくらいだ。これから魔法を何発撃たれてもオレが受け止めるぜ」
「過信はしないようにして下さい。攻撃は受けないことが一番良いんですから。でも、もしもの時は頼りにしますね」

 確かにそうだな。攻撃は最大の防御だもんね。やられる前にやってしまおう。挑発でゴブリンソードマンを皐月が引き付けて真姫と一緒に相手をしている間に、残りのゴブリン達は僕と美姫で攻撃してすべてが消えていった。いつものように沢山のゴブリンパーティとの戦闘を繰り返し二十五階層のボス部屋に到着した。

「このボス部屋からはホブゴブリンが新しく出てくる。普通のゴブリンとは違い身体能力が高く、スピードや力が大きく跳ね上がるから要注意だ。此処では最初に刀の風魔法で攻撃させてほしい。全力で攻撃したときにどれくらいのダメージをゴブリンパーティに与えることが出来るか知っておきたいんだ。いいか、絶対に僕の前に出るなよ。危ないからな。絶対だぞ」
「それだけ言うということは、逆に前に出て欲しいのか?」
「そんな訳ないだろ!本当に危ないんだよ!僕が先頭でボス部屋に入るからな」

 四人でボス部屋に入り扉が閉まった。ここのボス部屋も広い。二十匹程のゴブリンを相手に全力で刀を横一文字に振り抜き風の刃を飛ばした。

「………リーダー、残りのゴブリンは私達で倒します」

 一撃の後に残ったのは六匹のゴブリン、後衛の二匹のゴブリンまでは倒しきれなかったようだが、攻撃範囲の前衛のゴブリンはほとんど倒したようだ。他のゴブリンよりも一回り身体が大きいホブゴブリンも瀕死状態になっている。後衛のゴブリンは美姫がヘッドショットで仕留め、前衛で残っているゴブリンは皐月と真姫のコンビで倒した。ドロップアイテムを拾うのも数が多いと大変だ。銅色の宝箱が現れた。

「リーダーの全力の攻撃は想像以上の威力です。混戦の中では使えそうにないですし、一度見ておいてよかったと思います。使い所が難しそうですが、私達のパーティのいざという時の切り札になりますね」
「リーダーが一人で全部倒せるな。でも、今度はオレにホブゴブリンと戦わせてほしいぜ。瀕死状態ではない奴とだ」

 宝箱は美姫が開けた。宝箱の中にはいつものポーションの他に矢が五本入っていた。普通の矢ではないと思う。どんな効果があるんだろうね。

 今日の探索はここまでにした。二十六階層の転移の柱に登録して、そのままダンジョンの外に転移した。

 外に出て最初に行くのはいつもの武具店だ。

「これがレアモンスターを倒した刀か。不壊と風魔法の付与か?………いやー、凄いな。刀の自動修復が間に合わないほどの相手にダメージを与えられる筈だよ。良いものを見せてもらった」

 武器鑑定をしながらじっくりと刀を見て、納得の表情で感想を言ってくれた。

 今回は何も武具店でしてもらうことはなかった。真姫の槍も自動修復の効果がある。レアモンスターに会わない限りは大丈夫だろうと言ってもらった。

「マジックアイテムですが、ウエストポーチは三十立方メートルの容量があり時間経過があります。買取り価格が五百万円です。矢には五本とも爆裂の効果があります。着弾すると同時に効果が発揮されます。買取り価格が一本十万円です」

 いつものように部屋で買取りをしてもらった。二十階層の宝箱からはまたまた出てきた茶色のマジックポーチ、色違いであるが綾芽のと同じ物だ。真姫に装備してもらうことにした。槍を収納しておけば移動も楽になるだろう。もう一つ皐月の盾が収納できるような物が出れば良いが、普通の収納袋の入口で大盾の大きさまで広がるものは見たことがない。僕の収納なら大丈夫だけど、そうそうドロップするものではないだろう。

 皐月が前回まで使っていた大盾は僕が収納することになった。大盾を二つも持ち歩くことは出来ないよね。大事に保管させてもらおう。

「麟瞳さん、明日がパーティ名を決める日よ。私は凄く良いのを考えたから、ギャフンと言う準備をしてきてね」
「どう準備するんだよ!大体ギャフンなんて言う奴いないだろ」
「パーティ名を決めるのか?オレが考えても良いのか?」
「勿論良いよ。明日、皆が考えた名前の中から一番良いものに決めるからね。探索後に決めようか?楽しみは後に残しておく方が面白いよね」 
「リーダーは自信満々ですね。でも、私が考えた名前になると思います。楽しみにしておいて下さい」

 皆それぞれに自信があるようだ。僕はこの時点で何も決まってないんだよね。候補はいくつかあるんだけど、いまひとつピンと来ないんだ。もう少し考えることにしよう。








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