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第百四十八話 ルール違反

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「協会はどないなっとんや。昨日の対応はありえんわ。あの支部長はそないな人やなかったやろ」
「申し訳ありません。公万は必要なんだとしか言わないので、よく分かってないんですが、昨日は何があったんでしょうか?」
「そんなんも分かってないんか?あんた、何しに来とんや」

 昨日の部屋での出来事を美紅さんが説明していく。美紅さんの言葉が進むごとに、協会の方々は青くなっていく。協会の方々の表情を見ていると………

「麟瞳どないしたんや?オモロイ顔になっとるで」

 あぶないあぶない。いつもの悪い癖が出てたようだ。僕のために世那さんと美紅さんが怒ってくれているんだ。昨日の場面を思い出して僕も怒りモードに………なかなかなれない。Aランクダンジョンの支部長になるほどの人だ。問題になることぐらい普通分かるだろう。その上でのあの対応である。訳が分からない。

「そういえば、あの支部長は僕が持っているより、役立てることができる人に譲れと言ってましたよね。誰が役立てることが出来るんですかね?」
「そやったな。ウチらの前で言うたんやから………まさか、自衛隊か?まさか、自衛隊にマジックアイテムの情報は流してへんやろな!」

 協会の方々もこれにはビックリ、慌ただしく動き出した。探索者が探索で得たものをすべて一旦提出するのは、当然探索者協会がマジックアイテムの情報を管理するためだ。誰が何を持っているのかを知っていれば犯罪で使われた場合にその犯罪の手口により犯人が絞られる。マジックアイテムを得たことを秘匿しておいて、犯罪で使ったことがばれた場合には重い罪になる。探索者省にも情報はいくが、ごくごく限られた人だけにしか知らされないと聞いている。探索者の持っているマジックアイテムが他の人にバレたら何をされるか分かったもんじゃない。そこはマジックアイテムを持つ側と管理する側の信頼関係、それが破られると誰も提出しなくなるだろう。犯罪なんかに使う奴は探索者のトップにはいないと思う。情報を知らせることで危険になるのなら誰にも知られないほうが良いと思うのは当然だろう。

 まさかそれはないでしょう。僕は知られたくない情報がいっぱいある。繋ぐ札が一番ヤバいと思うが、腕輪も知られたくない情報だ。マジックアイテムではないがスキルもバレるのが怖い。【豪運】スキルなんてバレたら、誰に拉致されるか………恐すぎる。

 僕達が出来ることは何もない。探索者協会の調査待ちである。

「大阪住之江ダンジョンは撤退しないんでしょ」
「いや、探索者協会の対応次第ではどうするか分からないな。Aランクダンジョンは他にもあるからな。折角七十五階層まで攻略したが、探索者協会への抗議をしておかないとまた同じことが起こるかもしれない。うちのクランが撤退したら、ここのダンジョンの攻略は進まなくなるだろう。攻略されなくなったダンジョンがどうなるかは協会もよく分かっているだろう」

 美紅さんが怖いことを言っている。新層攻略されなくなったダンジョンは魔物が溢れてくる。高ランクダンジョンがそうなると国が無くなってしまうのは、いくつかの国が既に無くなっていることからも明らかだろう。自衛隊がSランクダンジョンを探索しているのもそのためだ。《Black-Red ワルキューレ》の代わりになるようなクランは見つからないだろう。もしも《Black-Red ワルキューレ》が撤退した場合、別の大手のクランが来ない限り厳しくなるように思う。

「申し訳ありません。あのマジックアイテムの情報を自衛隊に流したようです。自衛隊はどうしてもそのマジックアイテムを手に入れたいということで、公万を頼ったようです」
「どういうことや、それはルール違反やろ。誰もあんたらを信用出来へんようになるで。もうウチらも信じられへんわ」
「マジックアイテムは絶対に譲りませんが、僕達に危害が加えられることはあるんでしょうか?」
「いや、それはないと思いますが………自衛隊からの接触はあるかもしれません」
「それは困るんですけど………探索者協会さんが何とかしてくれるんですよね」
「もしも接触された場合は、私達が自衛隊と話はしますが、どうなるかは分かりません」
「なんやそれは。人事やな。あんたらのルールでは情報を漏らしたらあかんのやろ、どないしてくれるんや」

 支部長に対する処罰は決まっているようだが、僕達に対しては探索者協会の方もどうしていいのか分かっていない。持ち帰って対応を検討させてくれということだ。

 僕達は待つしか出来ない。岡山のクランハウスにいるメンバーに注意をしておくように言って、正輝にはもしものために京都の拠点に向かってもらった。僕はまたビジネスホテルに泊まることになる。面倒なことにならなければいいのだが、僕達には何も分からない。











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