私との婚約は、選択ミスだったらしい

柚木ゆず

文字の大きさ
24 / 42

第10話 愛する人への切実なお願いと ケヴィン視点(3)

「妻への暴力、これは犯罪行為。しかるべき場所に通報すれば、家の庇護がなくなった貴方は、即罪に問われるわ」

 ぽかんとしていたら、ヤツは俺の右手と自分の頬を順に指さした。

「廃嫡の八つ当たりで、妻をぶつ。最低よねぇ、世間の心象もとっても悪くなるわねぇ」
「なっ、何を言っているんだ!? これは廃嫡の八つ当たりじゃないっ! お前があれこれ――」
「言った証拠なんて、どこにもないわよ。胸倉を掴まれた証拠と、平手打ちをされた証拠はあるけどね」
「ばっ、バカ言え! それこそ、俺が殴ったという証拠はない――」
侍女サレナに隠し撮りをさせていて、その瞬間をばっちり写真に収めているの。だからソレを持って治安機関に駆け込めば、アンタは手錠をかけられるのよ。だってわたしがああ言った証拠はないけれど、少なくとも、アンタが殴った証拠だけはバッチリあるんだもの」

 ぐ、ぐう……っ。
 認めたくは、ない、が……っ。その、通り、だ……っ。

「この状況を作るには、アンタがキレないといけなかった。だから『引っかかった』で、『ありがとう』なのよ」
「あの暴露は…………俺を前科者にするための……っ。くそっ……! またまんまと嵌められたのか……!」
「ぷっ、違うわよ。前科者にするのは憂さ晴らしなどにはなるけど、そこまで大きなプラスとはならないもの。違う理由があるのよ」

 違う……? コイツは、何を考えていやがる……!?

「この件を垂れ込まれたくなければ、大人しく離婚しろ。そして『妻の未来のために、無理やり離婚させた』と、廃嫡される前に世間に広めなさい。わたしはこう命令したくて、ああしたのよ」
「……そうか……っ。だから、俺だけに本性を明かして……っ。お前は自分だけ……っ。幸せに、なろうとしているんだな……!!」

 そうしておけば、印象を落とさず真っ白になれる。上手く動けば、貴族とだって再婚できる。
 コイツは、俺を踏み台にする気なんだ……!!

「貴様ぁ……っ! どこまで腐っているんだ……!!」
「……あらケヴィン、生意気な口をきいてもいいの? わたしがこのまま駆け込んだら、アンタは逮捕されるのよ?」
「ぐ…………」
「それは、嫌よね? 嫌なら、どうすればいいか分かってる、わよね?」
「…………………………………………」
「ん? お返事がないわね? もしかして、前科持ちになりたいの? 再起すらまともにできなくなりたいのかしら?」
「…………………………………………分かった――わ、分かり、ました……。約束、します……」

 こんなこと、納得できるわけない。
 だけど……っ。
 廃嫡と前科が合わされば、ヤツの言うようにまともな人生は送れなくなってしまう。なので……。頷いて……。

「……指示をされたとおりに、動きます……」
「ケヴィン。動かせていただきます、でしょ?」
「………………う、動かせて、いただきます……」

 リナスは悪くないと様々な場所で口にして、その後……。キリルから、僅かばかりの手切れ金を渡され……。
 俺は父さんと共に、ランドル家を追い出されてしまったのだった……。


 





















 ※ご報告になります。

 明日はとある視点のお話が入り、リナスのざまぁ(一つ目のざまぁ)が始まります。


感想 216

あなたにおすすめの小説

『姉に全部奪われた私、今度は自分の幸せを選びます ~姉の栄光を支える嘘を、私は一枚ずつ剥がす~』

六角
恋愛
復讐はしない。——ただ「嘘」を回収する。 礼儀と帳簿で宮廷の偽りを詰ませる“監査官令嬢”の華麗なる逆転劇。 王家献上宝飾の紛失事件で濡れ衣を着せられ、家族にも婚約者にも捨てられて追放された子爵家次女リリア。  数年後、彼女は王妃直属の「臨時監査官」として、再び宮廷の土を踏む。  そこで待っていたのは、「慈愛の聖女」として崇められる姉セシリアと、彼女に心酔する愚かな貴族たち。しかし、姉の栄光の裏には、横領、洗脳、そして国を揺るがす「偽造魔石」の陰謀が隠されていた。  「復讐? いいえ、これは正当な監査です」  リリアは感情に流されず、帳簿と証拠、そして真実を映す「プリズム」を武器に、姉が築き上げた嘘の城を一枚ずつ剥がしていく。  孤立無援の彼女を支えるのは、氷のように冷徹な宰相補佐レオンハルトと、豪快な近衛騎士団長カミュ。  やがてリリアは、国中を巻き込んだ姉の洗脳計画を打ち砕き、自分自身の幸せと、不器用な宰相補佐からの溺愛を手に入れる——。

成功条件は、まさかの婚約破棄!?

たぬきち25番
恋愛
「アリエッタ、あなたとの婚約を破棄する……」 王太子のアルベルト殿下は、そう告げた。 王妃教育に懸命に取り組んでいたアリエッタだったが、 それを聞いた彼女は……? ※他サイト様にも公開始めました!

姉の陰謀で追放されました

たくわん
恋愛
魔力なしと断じられ、姉の陰謀で侯爵家を追放されたリディア。辿り着いた辺境の村で絶望の淵に立った時、彼女の中に眠っていた「聖癒の魔法」が目覚める。 傷ついた村人を救ったリディアは、冷酷無慈悲と恐れられる辺境伯ルカの目に留まり、専属治癒師として城に迎えられる。凍てついた心を持つ辺境伯との出会いが、リディアの運命を大きく変えていく――。

【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない

かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、 それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。 しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、 結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。 3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか? 聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか? そもそも、なぜ死に戻ることになったのか? そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか… 色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、 そんなエレナの逆転勝利物語。

【完結】幽霊令嬢は追放先で聖地を創り、隣国の皇太子に愛される〜私を捨てた祖国はもう手遅れです〜

遠野エン
恋愛
セレスティア伯爵家の長女フィーナは、生まれつき強大すぎる魔力を制御できず、常に体から生命力ごと魔力が漏れ出すという原因不明の症状に苦しんでいた。そのせいで慢性的な体調不良に陥り『幽霊令嬢』『出来損ない』と蔑まれ、父、母、そして聖女と謳われる妹イリス、さらには専属侍女からも虐げられる日々を送っていた。 晩餐会で婚約者であるエリオット王国・王太子アッシュから「欠陥品」と罵られ、公衆の面前で婚約を破棄される。アッシュは新たな婚約者に妹イリスを選び、フィーナを魔力の枯渇した不毛の大地『グランフェルド』へ追放することを宣言する。しかし、死地へ送られるフィーナは絶望しなかった。むしろ長年の苦しみから解放されたように晴れやかな気持ちで追放を受け入れる。 グランフェルドへ向かう道中、あれほど彼女を苦しめていた体調不良が嘘のように快復していくことに気づく。追放先で出会った青年ロイエルと共に土地を蘇らせようと奮闘する一方で、王国では異変が次々と起き始め………。

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

婚約破棄に全力感謝

あーもんど
恋愛
主人公の公爵家長女のルーナ・マルティネスはあるパーティーで婚約者の王太子殿下に婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。でも、ルーナ自身は全く気にしてない様子....いや、むしろ大喜び! 婚約破棄?国外追放?喜んでお受けします。だって、もうこれで国のために“力”を使わなくて済むもの。 実はルーナは世界最強の魔導師で!? ルーナが居なくなったことにより、国は滅びの一途を辿る! 「滅び行く国を遠目から眺めるのは大変面白いですね」 ※色々な人達の目線から話は進んでいきます。 ※HOT&恋愛&人気ランキング一位ありがとうございます(2019 9/18)

役立たずと追放された令嬢ですが、極寒の森で【伝説の聖獣】になつかれました〜モフモフの獣人姿になった聖獣に、毎日甘く愛されています〜

腐ったバナナ
恋愛
「魔力なしの役立たず」と家族と婚約者に見捨てられ、極寒の魔獣の森に追放された公爵令嬢アリア。 絶望の淵で彼女が出会ったのは、致命傷を負った伝説の聖獣だった。アリアは、微弱な生命力操作の能力と薬学知識で彼を救い、その巨大な銀色のモフモフに癒やしを見いだす。 しかし、銀狼は夜になると冷酷無比な辺境領主シルヴァンへと変身! 「俺の命を救ったのだから、君は俺の永遠の所有物だ」 シルヴァンとの契約結婚を受け入れたアリアは、彼の強大な力を後ろ盾に、冷徹な知性で王都の裏切り者たちを周到に追い詰めていく。