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第10話 愛する人への切実なお願いと ケヴィン視点(3)

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「妻への暴力、これは犯罪行為。しかるべき場所に通報すれば、家の庇護がなくなった貴方は、即罪に問われるわ」

 ぽかんとしていたら、ヤツは俺の右手と自分の頬を順に指さした。

「廃嫡の八つ当たりで、妻をぶつ。最低よねぇ、世間の心象もとっても悪くなるわねぇ」
「なっ、何を言っているんだ!? これは廃嫡の八つ当たりじゃないっ! お前があれこれ――」
「言った証拠なんて、どこにもないわよ。胸倉を掴まれた証拠と、平手打ちをされた証拠はあるけどね」
「ばっ、バカ言え! それこそ、俺が殴ったという証拠はない――」
侍女サレナに隠し撮りをさせていて、その瞬間をばっちり写真に収めているの。だからソレを持って治安機関に駆け込めば、アンタは手錠をかけられるのよ。だってわたしがああ言った証拠はないけれど、少なくとも、アンタが殴った証拠だけはバッチリあるんだもの」

 ぐ、ぐう……っ。
 認めたくは、ない、が……っ。その、通り、だ……っ。

「この状況を作るには、アンタがキレないといけなかった。だから『引っかかった』で、『ありがとう』なのよ」
「あの暴露は…………俺を前科者にするための……っ。くそっ……! またまんまと嵌められたのか……!」
「ぷっ、違うわよ。前科者にするのは憂さ晴らしなどにはなるけど、そこまで大きなプラスとはならないもの。違う理由があるのよ」

 違う……? コイツは、何を考えていやがる……!?

「この件を垂れ込まれたくなければ、大人しく離婚しろ。そして『妻の未来のために、無理やり離婚させた』と、廃嫡される前に世間に広めなさい。わたしはこう命令したくて、ああしたのよ」
「……そうか……っ。だから、俺だけに本性を明かして……っ。お前は自分だけ……っ。幸せに、なろうとしているんだな……!!」

 そうしておけば、印象を落とさず真っ白になれる。上手く動けば、貴族とだって再婚できる。
 コイツは、俺を踏み台にする気なんだ……!!

「貴様ぁ……っ! どこまで腐っているんだ……!!」
「……あらケヴィン、生意気な口をきいてもいいの? わたしがこのまま駆け込んだら、アンタは逮捕されるのよ?」
「ぐ…………」
「それは、嫌よね? 嫌なら、どうすればいいか分かってる、わよね?」
「…………………………………………」
「ん? お返事がないわね? もしかして、前科持ちになりたいの? 再起すらまともにできなくなりたいのかしら?」
「…………………………………………分かった――わ、分かり、ました……。約束、します……」

 こんなこと、納得できるわけない。
 だけど……っ。
 廃嫡と前科が合わされば、ヤツの言うようにまともな人生は送れなくなってしまう。なので……。頷いて……。

「……指示をされたとおりに、動きます……」
「ケヴィン。動かせていただきます、でしょ?」
「………………う、動かせて、いただきます……」

 リナスは悪くないと様々な場所で口にして、その後……。キリルから、僅かばかりの手切れ金を渡され……。
 俺は父さんと共に、ランドル家を追い出されてしまったのだった……。


 





















 ※ご報告になります。

 明日はとある視点のお話が入り、リナスのざまぁ(一つ目のざまぁ)が始まります。


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