婚約者様。現在社交界で広まっている噂について、大事なお話があります

柚木ゆず

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プロローグ 夜会にて マリー視点

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((……あら? なんだか変ね……?))

 リーベニア侯爵邸内にある、賑々しい空間に――招待された夜会の会場に足を踏み入れた私は、すぐに心の中で首を傾げることになった。
 すでにいらっしゃる方々の様子が、妙におかしい。皆さん面識のある方ばかりなのだけれど、視線や表情がいつもと少しだけ違っていた。

((……やけに、余所余所しいわね))

 挨拶を行う時は不自然に愛想笑いを浮かべているし、目が合うとあっという間に逸らされてしまう。
 最後に参加した時は――3日前は、普通だったのに。どうしてこんな風になってしまっているのかしら?

((私自身や『家』、親族にも何も起きていないし……。なぜなの……?))

 いくら考えても、思い当たる節はない。自力での特定は不可能。
 そこで私は、場内にいるお茶会のメンバーにお声をかけ――

「まあまあ、これはこれは。リエスワーズ伯爵家のマリー様ではありませんの。ごきげんよう」

 ――お声をかけようとしていたら、ブロンドを縦ロールにした女性が上機嫌でやって来た。
 こちらの方は、レークレル伯爵家のミラ様。今年の春まで2か月前まで在籍していた学院でのクラスメートであり、ことあるごとに私をライバル視してきていた人。

((ミラ様は今、私をフルネームで呼んだ。この方がそんな風に振る舞う時は、決まって彼女にとって都合の良いことが起きている時なのよね……))

 集計ミスによって生徒会選挙で落選の報が流れた時や、展覧会に出した絵が初めて入賞しなかった時など。私の評判や評価が落ちるような出来事が発生した際に、決まって出るもの。
 ということは、皆様の違和感もそれが原因。私が知らないところで何かが起きているみたい。

「ごきげんよう、ミラ様。大変ご機嫌がよろしいようですね?」
「ええ、今夜はとても気分がいいんですのよ。だって、あんなことが発覚してしまったんですもの」
「あんなこと、ですか? そちらはどういったものなのでしょう?」

 丁度いい機会なので、今度は実際に首を傾けてみる。そうすればミラ様は、更に大きな笑みを浮かべて――

「『才色兼備として有名なマリー・リエスワーズは、作られたものだった』。『お屋敷の中では――使用人の間では「何もできないポンコツお嬢様」として有名で、頻繁に点数や賞をお金で買っていた』。あんなこととは、こういうものですのよ」

 ――嬉々として、根も葉もないことを仰られたのだった。

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