断罪寸前の悪役令嬢になってしまいました

柚木ゆず

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第6話 包囲網 ロズリーヌ視点(1)

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「お時間失礼いたします。この絵にそっくりな女性を御存じありませんか?」
「……いえ、見ていませんね」

「失礼致します。この絵にそっくりな女性を、見掛けませんでしたか?」
「……。知らない、ですね」

 わたしとオディロン様も自作の自画像片手に聞き込みを始め、5時間近く行っても――街に人が殆どいなくなる時間帯まで動き回っても、有力な情報は得られませんでした。

「やはり、簡単にはいきませんね」
「そうですね。今日はここまでにして、続きは明日に致しましょう」

 一日目の成果はなし。
 でもそれは『タチアナさんの目撃情報』に関してのお話で、それ以外には成果が2つありました。
 一つ目はもちろん、アンナさん。アンナさんが気付いてくださったおかげで、一気に100名以上の増員が叶いました。

「まさか、ここまで戦力が増えるだなんて。アンナ殿には感謝してもしきれません」
「はい、してもしきれません。そしてそれは、オディロン様にもお伝えしたいことでございます」

 それ以外の成果2つ目、それは、仲間の更なる追加。

『突然すみません。こちらの絵にそっくりな女性を御存じありませんか?』
『…………見て、いないですね』
『そうですか。もしお見掛けした場合は接触など干渉は一切せず、この紙にある住所に内密にご連絡をいたただけますでしょうか?』
『…………はぁ。分かりました』
『有益な情報をいただけた際は、相応の謝礼をお渡しいたします。よろしくお願い致します』
『謝礼!? 分かりました!』

 必死になってくれそうにない『完全なる他人』に必死になってもらうには、金銭がもっとも確実。それはオディロン様が、長年侯爵令息としての生きて来た中で得た経験と知識。
 そちらに従って聞き込みをするたびに報酬に言及していて、空振りの回数だけ『捜索の目』が増えていっていたのです。

「いくら変装をしても、変装を想定した絵を見せたら気付きやすくなります。加えてこの数ですしね。明日には進展があるでしょう」
「わたしも、そう信じております。きっと、よい報告があります」

 家族だけではなくオディロン様やアンナさん達も、多くの方が懸命に探してくださっているんです。
 未来を予測する力はありませんがそんな確信があり――翌日の午前8時過ぎに、そちらは現実のものとなるのでした。


「ロズリーヌっ! オディロン様っ! 有力な目撃情報が届きました!!」

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