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第1話(2)
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((……………………そうだったんだ。そんなことも知らずに、ずーっとドキドキしたり、ニコニコしたり……。私って、バカだなぁ…………))
盛り上がっている2人の会話から、全てを理解した直後。真実を知ってしまった私は、青天を見上げて微苦笑を浮かべた。
ずっと騙されてたせい、なのだと思う。そこまでやられちゃったら、悲しみは全然湧いてこない。自分の見る目のなさに呆れて、なんだか笑ってしまう。
((……デートの日は、前日から緊張して……。エドゥアルさんが夢に出てきたら、目が覚めたあとはベッドの上で何度も何度も転げ回ったり……。何やってたんだろ……))
途中から相手に好意なんてなかったのに。デート中もカーラが気になっていて、照れて喜ぶ私を見て嗤っていたのに。毎日毎日エドゥアルさんのことを考えてて、一喜一憂して、ほんとバカみたい。
((…………でも運よく、ここで気付けた。完全に騙される前に縁を切れるのは、不幸中の幸いだよね))
ソフィー・ハツルエっ! プラス思考でいきましょうっっ!
これは不幸な出来事なんかじゃなくって、幸福な出来事だったっっ! バッドエンドが確定している結婚をせずに済むんだから、笑顔で喜ぶようにしましょう――
「そういえば、他にも面白い事があったんだよ。カーラに話すネタを探すために、ソフィーがトイレに行ってる隙にデスクを開けてみたんだよ」
「へぇ。そうしたら、何があったの?」
「日記があって、なんと俺とカーラの健康と安全を毎日祈ってたんだよ。大切な人たちが幸せに居られますように、ってね」
「日記をつけているのは知っていたけど、内容は知らなかったわ。その『大切な人たち』に騙されているとも知らないで、滑稽ね」
「あと、もう一つ。一昨日アイツの部屋で一緒に食べた、チョコレート。あれには、なんと……」
「なんと……? なあに?」
「なんと、友人の犬の唾液入り。こないだデートの予定が重なって、カーラと会えなくなってしまった罰を仕込んでやったんだよ。アイツはそうとも知らないで、大事そうに『美味しい美味しい』って食べてたな」
「ぷっ。ふふふふふっ。やはり、成り上がり貴族は『違い』が分からないのね。犬の唾入りチョコレートが美味しいだなんて、所詮はたまたま大金を手にした平民だわ」
「おいおい、そんな言い方はないだろ。アレは、俺達に幸せをもたらしてくれる慰謝料製造機。魅力的なゴミ、そう言わないと失礼だぞ」
――………………………………。
ダメ……。やっぱり、気持ちを切り替えれない……。喜ぶなんてできない……。
((……くやしい……。悔しいよ……っ))
こんなにもクズだって正体が分かったことは嬉しくて、今も悲しみはない。だけど……。だけど……っ。ずっとずっと、踏みにじられてたんだもん……。
悔しい……。
悔しいよ……っ。
((エドゥアルさん――エドゥアルも、カーラも……。許せない……っ))
普通の婚約解消では、納得できない。2人がきっちりと代償を払う、罰がついたものじゃないと納得できない。
「カーラ。そろそろ、行こうか」
「ええ、そうね。エドゥ、今日は楽しみましょ」
散々悪口と紅茶とモンブランを楽しんで、手を繋いで去ってゆくエドゥアルとカーラ。あの2人に、今までの仕返しをしたい。
((……そうするには……。どうすれば……))
悔し涙を浮かべながら、膝の上で両手を握り締める。そうやって必死に方法を考えていた、そんな時でした。
「ソフィー・ハツルエ様ですよね? 本日の待ち合わせの件で、貴方にお伝えしたい事がございます」
背後からハープの音色のような声が聞こえてきて、振り向くと――。そこにはサラサラの銀髪と優しげな茶色の瞳が印象的な、落ち着いた雰囲気の美少年さんが立っていたのでした。
盛り上がっている2人の会話から、全てを理解した直後。真実を知ってしまった私は、青天を見上げて微苦笑を浮かべた。
ずっと騙されてたせい、なのだと思う。そこまでやられちゃったら、悲しみは全然湧いてこない。自分の見る目のなさに呆れて、なんだか笑ってしまう。
((……デートの日は、前日から緊張して……。エドゥアルさんが夢に出てきたら、目が覚めたあとはベッドの上で何度も何度も転げ回ったり……。何やってたんだろ……))
途中から相手に好意なんてなかったのに。デート中もカーラが気になっていて、照れて喜ぶ私を見て嗤っていたのに。毎日毎日エドゥアルさんのことを考えてて、一喜一憂して、ほんとバカみたい。
((…………でも運よく、ここで気付けた。完全に騙される前に縁を切れるのは、不幸中の幸いだよね))
ソフィー・ハツルエっ! プラス思考でいきましょうっっ!
これは不幸な出来事なんかじゃなくって、幸福な出来事だったっっ! バッドエンドが確定している結婚をせずに済むんだから、笑顔で喜ぶようにしましょう――
「そういえば、他にも面白い事があったんだよ。カーラに話すネタを探すために、ソフィーがトイレに行ってる隙にデスクを開けてみたんだよ」
「へぇ。そうしたら、何があったの?」
「日記があって、なんと俺とカーラの健康と安全を毎日祈ってたんだよ。大切な人たちが幸せに居られますように、ってね」
「日記をつけているのは知っていたけど、内容は知らなかったわ。その『大切な人たち』に騙されているとも知らないで、滑稽ね」
「あと、もう一つ。一昨日アイツの部屋で一緒に食べた、チョコレート。あれには、なんと……」
「なんと……? なあに?」
「なんと、友人の犬の唾液入り。こないだデートの予定が重なって、カーラと会えなくなってしまった罰を仕込んでやったんだよ。アイツはそうとも知らないで、大事そうに『美味しい美味しい』って食べてたな」
「ぷっ。ふふふふふっ。やはり、成り上がり貴族は『違い』が分からないのね。犬の唾入りチョコレートが美味しいだなんて、所詮はたまたま大金を手にした平民だわ」
「おいおい、そんな言い方はないだろ。アレは、俺達に幸せをもたらしてくれる慰謝料製造機。魅力的なゴミ、そう言わないと失礼だぞ」
――………………………………。
ダメ……。やっぱり、気持ちを切り替えれない……。喜ぶなんてできない……。
((……くやしい……。悔しいよ……っ))
こんなにもクズだって正体が分かったことは嬉しくて、今も悲しみはない。だけど……。だけど……っ。ずっとずっと、踏みにじられてたんだもん……。
悔しい……。
悔しいよ……っ。
((エドゥアルさん――エドゥアルも、カーラも……。許せない……っ))
普通の婚約解消では、納得できない。2人がきっちりと代償を払う、罰がついたものじゃないと納得できない。
「カーラ。そろそろ、行こうか」
「ええ、そうね。エドゥ、今日は楽しみましょ」
散々悪口と紅茶とモンブランを楽しんで、手を繋いで去ってゆくエドゥアルとカーラ。あの2人に、今までの仕返しをしたい。
((……そうするには……。どうすれば……))
悔し涙を浮かべながら、膝の上で両手を握り締める。そうやって必死に方法を考えていた、そんな時でした。
「ソフィー・ハツルエ様ですよね? 本日の待ち合わせの件で、貴方にお伝えしたい事がございます」
背後からハープの音色のような声が聞こえてきて、振り向くと――。そこにはサラサラの銀髪と優しげな茶色の瞳が印象的な、落ち着いた雰囲気の美少年さんが立っていたのでした。
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