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第21話 あれから7日後 2つのお礼と、大切なお話(1)
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「ようこそ、マリユさん。『ハトの知人』さん。こちらへどうぞ」
裁判の日から7日後、お父様に弟子入りをしてから6日後の夕方。約束していた時間に来てくださり、お父様と共に、改めてお礼を告げる。そしてそのあとは2人で2階へと上がって、私の部屋に用意したテーブルへとご案内しました。
「ありがとう、ソフィーさん。……恐らく、手紙で内装を教わっていたからだね。実際にこの目で見るのは初めてだけれど、慣れ親しんだ場所のように感じるよ」
「私もですよ、マリユさん。マリユさんがいらっしゃるのは初めだけど、初めてとは感じません。8年間ずっと、手紙として来てくださっていたからなのだと思います」
よく遊びに来ている人が、また来てくれた。そんな感覚。存在していることが当たり前で、私達は自然に部屋を移動して、椅子へと座っていただいた。
…………それでは。お礼その1を、始めます。
「マリユさん。ちょっとだけお待ちください」
私はペコリとお辞儀をした後1階に降り、キッチンから料理にかぶせる金属製の蓋で覆ったお皿を2つ持ってきた。
これは2皿で1人前ではなく、マリユさんと私の分。この方は『自分だけ』ということはなさらない人なので、お気を遣わせないように自分の分も用意しているのです。
「お待たせ致しました。どうぞ、お開けください」
「ありがとうございます。何が隠れているのか、ドキドキするね」
マリユさんはニコリと微笑み、目の前にあるクロッシュを持ち上げる。28センチある金属製の蓋を取ると、そこにあったのは――
「これは……。サンドウィッチだね」
――三角にカットした、卵サンド。ブラックペッパー入りのちょっぴり多めのマヨネーズと半潰しと完全に潰した卵が特徴の、卵サンドが8カットありました。
「……マリユさん。こちらのメニューは、私にとって特別なものなんです。なぜだか、分かりますか?」
「もちろんだよ。サンドウィッチは――卵サンドは、君が初めて作った料理。『ハトの知人さんに、いつか食べてもらいたい』と最初に手紙に書いてくれたものだよね?」
「はいっ。大正解ですっ」
ハトの知人さんはお料理が得意と知って、共通の趣味を持ちたくなって。いつも励ましてくれるお礼に、ご馳走したくなって。そうして、初めて作ったものがコレ。
ちなみに――。ちょっぴり多めのマヨネーズと、ブラックペッパーと、半潰しと完全に潰した卵の組み合わせは、私のアレンジ。あの頃はレシピにちょっとした工夫を加えることも特別な行為で、『私のオリジナルお料理人ができた~!』って喜んじゃってました。
「これまでのお礼と、あの日のお礼に。心を込めて、作りました。よろしければお召し上がりください」
「喜んで、いただくよ。……『ハトの知人』として接触する事はできないから、応える事も出来なくて残念だった。でもそれが、ようやく叶う。…………いただきます」
マリユさんは幸せそうに目尻を下げ、上品に一つを掴んでお口へと運ぶ。
ど、どうかな……? 気に入って、くれるかな……?
裁判の日から7日後、お父様に弟子入りをしてから6日後の夕方。約束していた時間に来てくださり、お父様と共に、改めてお礼を告げる。そしてそのあとは2人で2階へと上がって、私の部屋に用意したテーブルへとご案内しました。
「ありがとう、ソフィーさん。……恐らく、手紙で内装を教わっていたからだね。実際にこの目で見るのは初めてだけれど、慣れ親しんだ場所のように感じるよ」
「私もですよ、マリユさん。マリユさんがいらっしゃるのは初めだけど、初めてとは感じません。8年間ずっと、手紙として来てくださっていたからなのだと思います」
よく遊びに来ている人が、また来てくれた。そんな感覚。存在していることが当たり前で、私達は自然に部屋を移動して、椅子へと座っていただいた。
…………それでは。お礼その1を、始めます。
「マリユさん。ちょっとだけお待ちください」
私はペコリとお辞儀をした後1階に降り、キッチンから料理にかぶせる金属製の蓋で覆ったお皿を2つ持ってきた。
これは2皿で1人前ではなく、マリユさんと私の分。この方は『自分だけ』ということはなさらない人なので、お気を遣わせないように自分の分も用意しているのです。
「お待たせ致しました。どうぞ、お開けください」
「ありがとうございます。何が隠れているのか、ドキドキするね」
マリユさんはニコリと微笑み、目の前にあるクロッシュを持ち上げる。28センチある金属製の蓋を取ると、そこにあったのは――
「これは……。サンドウィッチだね」
――三角にカットした、卵サンド。ブラックペッパー入りのちょっぴり多めのマヨネーズと半潰しと完全に潰した卵が特徴の、卵サンドが8カットありました。
「……マリユさん。こちらのメニューは、私にとって特別なものなんです。なぜだか、分かりますか?」
「もちろんだよ。サンドウィッチは――卵サンドは、君が初めて作った料理。『ハトの知人さんに、いつか食べてもらいたい』と最初に手紙に書いてくれたものだよね?」
「はいっ。大正解ですっ」
ハトの知人さんはお料理が得意と知って、共通の趣味を持ちたくなって。いつも励ましてくれるお礼に、ご馳走したくなって。そうして、初めて作ったものがコレ。
ちなみに――。ちょっぴり多めのマヨネーズと、ブラックペッパーと、半潰しと完全に潰した卵の組み合わせは、私のアレンジ。あの頃はレシピにちょっとした工夫を加えることも特別な行為で、『私のオリジナルお料理人ができた~!』って喜んじゃってました。
「これまでのお礼と、あの日のお礼に。心を込めて、作りました。よろしければお召し上がりください」
「喜んで、いただくよ。……『ハトの知人』として接触する事はできないから、応える事も出来なくて残念だった。でもそれが、ようやく叶う。…………いただきます」
マリユさんは幸せそうに目尻を下げ、上品に一つを掴んでお口へと運ぶ。
ど、どうかな……? 気に入って、くれるかな……?
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