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第21話 あれから7日後 2つのお礼と、大切なお話(3)
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「窓……? レースを含め、カーテンを全て開いたという事は……。外に、何かあるのかな――…………。うん、あったね。綺麗な夕陽があった」
窓から外を眺めていたマリユさんは、すぐ気づいてくれました。そして彼はそのままゴクリと唾を飲み込み、その景色に見入ってくれました。
「2つ山があって、その丁度真ん中で陽が沈んでゆく。洛陽によって山が茜色に染まっていて……。幻想的だ」
「この世界だけどこの世界じゃないみたいで、素敵ですよね。この景色は、母が亡くなるまで――6歳までいつも一緒に眺めていた大好きな景色でして、入院中はいつも見たいと願っていた景色だったんです。……もう二度と、見られないと思っていた景色だったんです」
病気になった頃はとても苦しかったし、原因が違うとはいえ、ミラリスお母様も病気で他界してしまっている。だから不安で、絶望してしまっていました。
ハトの知人さんと出会う、その時までは。
「あの手紙をもらってから前向きになれて、『無理なんだ』『二度と見られないんだ』って思いはなくなって。実際に、また見ることができて。その時は部屋で、何分も嬉し泣きをしちゃいました」
小さい子にとって、泣いちゃうのは恥ずかしいこと。なのでこれは、手紙には書いていない出来事。
――お母様、ただいま――。
――ハトの知人さん、ありがとう――。
私はそう繰り返して、幸せの涙をどっさり零しました。
「それからはこの景色が更に大好きになって、いつか『ハトの知人』さんにも見てもらいたかったんです。……この光景は、世界で一番美しいと思っていますので。2つめのお礼に、させてもらいました」
「………………うん、ここからの眺めは特別だよ。高さ、角度も、最高。僕も気に入って、見られて良かったと心から感じてます」
視線が吸い付けられているかのように見つめていたマリユさんは、感嘆の息を吐いてくれました。
この言葉も、さっきとおんなじ。嘘や誇張は、ありませんでした。
「サンドウィッチも景色も、一生の思い出になるものです。素敵なお礼をありがとうございます、ソフィーさん」
「こちらこそ、食べて、見てくださり、ありがとうございます」
丁寧なお辞儀に、丁寧なお辞儀をお返しする。
そうして私からのお礼は終わって、でも、今日の予定は終わりではありません。これからもう一つ、大事なことをお伝えします。
下にいる、お父様。天国にいる、お母様。
見守っていてください。
窓から外を眺めていたマリユさんは、すぐ気づいてくれました。そして彼はそのままゴクリと唾を飲み込み、その景色に見入ってくれました。
「2つ山があって、その丁度真ん中で陽が沈んでゆく。洛陽によって山が茜色に染まっていて……。幻想的だ」
「この世界だけどこの世界じゃないみたいで、素敵ですよね。この景色は、母が亡くなるまで――6歳までいつも一緒に眺めていた大好きな景色でして、入院中はいつも見たいと願っていた景色だったんです。……もう二度と、見られないと思っていた景色だったんです」
病気になった頃はとても苦しかったし、原因が違うとはいえ、ミラリスお母様も病気で他界してしまっている。だから不安で、絶望してしまっていました。
ハトの知人さんと出会う、その時までは。
「あの手紙をもらってから前向きになれて、『無理なんだ』『二度と見られないんだ』って思いはなくなって。実際に、また見ることができて。その時は部屋で、何分も嬉し泣きをしちゃいました」
小さい子にとって、泣いちゃうのは恥ずかしいこと。なのでこれは、手紙には書いていない出来事。
――お母様、ただいま――。
――ハトの知人さん、ありがとう――。
私はそう繰り返して、幸せの涙をどっさり零しました。
「それからはこの景色が更に大好きになって、いつか『ハトの知人』さんにも見てもらいたかったんです。……この光景は、世界で一番美しいと思っていますので。2つめのお礼に、させてもらいました」
「………………うん、ここからの眺めは特別だよ。高さ、角度も、最高。僕も気に入って、見られて良かったと心から感じてます」
視線が吸い付けられているかのように見つめていたマリユさんは、感嘆の息を吐いてくれました。
この言葉も、さっきとおんなじ。嘘や誇張は、ありませんでした。
「サンドウィッチも景色も、一生の思い出になるものです。素敵なお礼をありがとうございます、ソフィーさん」
「こちらこそ、食べて、見てくださり、ありがとうございます」
丁寧なお辞儀に、丁寧なお辞儀をお返しする。
そうして私からのお礼は終わって、でも、今日の予定は終わりではありません。これからもう一つ、大事なことをお伝えします。
下にいる、お父様。天国にいる、お母様。
見守っていてください。
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