3 / 15
第2話 ルイーズ視点(1)
しおりを挟む
「ははは、はははははっ。何を言い出すかと思えば、婚約破棄をする? 何を言っているんだっ?」
私があのように言葉を紡いだ、その直後でした。イザック様はお顔に右手を当てて、大笑いを始めました。
「元凶である貴様が、追及しているこの俺を『切る』だと? 一体どうしたというんだ? 大勢の前で罪および本性を晒され、気でも狂ってしまったのか?」
「いえ、そうではございません。私は正常ですよ」
「そうか、そうなのか。では何故、この状況下でそんな言葉を発するんだ? 狂気でないと言い張るのならば、その理由はなんなんだ?」
「事実無根。捏造。以上の2点によって、あのように口にしたのですよ」
私が淡々と行った、否定。それによって、カフェテリアの空気は再度一変します。
もしも後ろめたい事実があるのならば、取り乱すなど何かしらの動揺が生まれるものです。けれどそんな私が落ち着き払っているため、この体に突き刺さっていた冷たい視線は急激に消え去りました。
「イザック様、皆様。私はそういった悪事は、一切働いておりません。タユレス様とヴィレア様とはほぼご縁がなく、個人的にお話をしたことさえもありませんよ」
廊下での挨拶やご学友を交えたお話しなど、所謂浅い接触しかありません。そのため当然、突き落としや呼び出しをしたという事実もありません。
「そして、お二人に嫉妬していた事実もございませんよ。私にとって他者は等しく、学ばせていただく存在ですので」
皆様は何かしら、自分自身にはないものをお持ちです。そういったものを吸収させていただいて、成長してゆきたい。刺激を受けて自分を磨いてゆき、立派な淑女になりたい。
私は常日頃より、そう思っておりますので。生まれてこの方、嫉妬という感情が芽生えたことはありません。
『ええ、ええ……っ。そういえば、そうでしたわ……っ』
『いつもそう仰られていて、実際にそうでした。ルイーズ様は、そういった方です!』
『僕も、それは知っている。エンティア様が嫉妬した、そいつはおかしいぞ……!』
「待てっ、待つんだ皆(みな)! それは、ルイーズに騙されているだけだっ!」
カフェテリア内が騒がしくなりはじめ、イザック様はすかさず声を挙げました。
…………そうですか。騙されている、ですか。
私があのように言葉を紡いだ、その直後でした。イザック様はお顔に右手を当てて、大笑いを始めました。
「元凶である貴様が、追及しているこの俺を『切る』だと? 一体どうしたというんだ? 大勢の前で罪および本性を晒され、気でも狂ってしまったのか?」
「いえ、そうではございません。私は正常ですよ」
「そうか、そうなのか。では何故、この状況下でそんな言葉を発するんだ? 狂気でないと言い張るのならば、その理由はなんなんだ?」
「事実無根。捏造。以上の2点によって、あのように口にしたのですよ」
私が淡々と行った、否定。それによって、カフェテリアの空気は再度一変します。
もしも後ろめたい事実があるのならば、取り乱すなど何かしらの動揺が生まれるものです。けれどそんな私が落ち着き払っているため、この体に突き刺さっていた冷たい視線は急激に消え去りました。
「イザック様、皆様。私はそういった悪事は、一切働いておりません。タユレス様とヴィレア様とはほぼご縁がなく、個人的にお話をしたことさえもありませんよ」
廊下での挨拶やご学友を交えたお話しなど、所謂浅い接触しかありません。そのため当然、突き落としや呼び出しをしたという事実もありません。
「そして、お二人に嫉妬していた事実もございませんよ。私にとって他者は等しく、学ばせていただく存在ですので」
皆様は何かしら、自分自身にはないものをお持ちです。そういったものを吸収させていただいて、成長してゆきたい。刺激を受けて自分を磨いてゆき、立派な淑女になりたい。
私は常日頃より、そう思っておりますので。生まれてこの方、嫉妬という感情が芽生えたことはありません。
『ええ、ええ……っ。そういえば、そうでしたわ……っ』
『いつもそう仰られていて、実際にそうでした。ルイーズ様は、そういった方です!』
『僕も、それは知っている。エンティア様が嫉妬した、そいつはおかしいぞ……!』
「待てっ、待つんだ皆(みな)! それは、ルイーズに騙されているだけだっ!」
カフェテリア内が騒がしくなりはじめ、イザック様はすかさず声を挙げました。
…………そうですか。騙されている、ですか。
35
あなたにおすすめの小説
婚約者を奪っていった彼女は私が羨ましいそうです。こちらはあなたのことなど記憶の片隅にもございませんが。
松ノ木るな
恋愛
ハルネス侯爵家令嬢シルヴィアは、将来を嘱望された魔道の研究員。
不運なことに、親に決められた婚約者は無類の女好きであった。
研究で忙しい彼女は、女遊びもほどほどであれば目をつむるつもりであったが……
挙式一月前というのに、婚約者が口の軽い彼女を作ってしまった。
「これは三人で、あくまで平和的に、話し合いですね。修羅場は私が制してみせます」
※7千字の短いお話です。
婚約破棄させたいですか? いやいや、私は愛されていますので、無理ですね。
百谷シカ
恋愛
私はリュシアン伯爵令嬢ヴィクトリヤ・ブリノヴァ。
半年前にエクトル伯爵令息ウスターシュ・マラチエと婚約した。
のだけど、ちょっと問題が……
「まあまあ、ヴィクトリヤ! 黄色のドレスなんて着るの!?」
「おかしいわよね、お母様!」
「黄色なんて駄目よ。ドレスはやっぱり菫色!」
「本当にこんな変わった方が婚約者なんて、ウスターシュもがっかりね!」
という具合に、めんどくさい家族が。
「本当にすまない、ヴィクトリヤ。君に迷惑はかけないように言うよ」
「よく、言い聞かせてね」
私たちは気が合うし、仲もいいんだけど……
「ウスターシュを洗脳したわね! 絶対に結婚はさせないわよ!!」
この婚約、どうなっちゃうの?
婚約破棄は先手を取ってあげますわ
浜柔
恋愛
パーティ会場に愛人を連れて来るなんて、婚約者のわたくしは婚約破棄するしかありませんわ。
※6話で完結として、その後はエクストラストーリーとなります。
更新は飛び飛びになります。
婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。
本当の貴方
松石 愛弓
恋愛
伯爵令嬢アリシアは、10年来の婚約者エリオットに突然、婚約破棄を言い渡される。
貴方に愛されていると信じていたのに――。
エリオットの豹変ぶりにアリシアは…。
シリアス寄りです。
三日後に婚約破棄します
夜桜
恋愛
公爵令嬢・ミランダは幼馴染の帝国諸侯・ウェイドを助けたかった。彼はサルビアという女性から執拗以上に好意を持たれ困り果てていた。
ウェイドは、サルビアを諦めさせる為、ミランダに一時的な婚約を頼み込む。ミランダは事情を汲み、三日後に婚約破棄するという条件付きで快諾。
しかし、それは惨劇の始まりだった――。
婚約破棄を言い渡された私は、元婚約者の弟に溺愛されています
天宮有
恋愛
「魔法が使えない無能より貴様の妹ミレナと婚約する」と伯爵令息ラドンに言われ、私ルーナは婚約破棄を言い渡されてしまう。
家族には勘当を言い渡されて国外追放となった私の元に、家を捨てたラドンの弟ニコラスが現れる。
ニコラスは魔法の力が低く、蔑まれている者同士仲がよかった。
一緒に隣国で生活することを決めて、ニコラスは今まで力を隠していたこと、そして私の本来の力について話してくれる。
私の本来の力は凄いけど、それを知ればラドンが酷使するから今まで黙っていてくれた。
ニコラスは私を守る為の準備をしていたようで、婚約破棄は予想外だったから家を捨てたと教えてくれる。
その後――私は本来の力を扱えるようになり、隣国でニコラスと幸せな日々を送る。
無意識に使っていた私の力によって繁栄していたラドン達は、真実を知り破滅することとなっていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる