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第3話 ルイーズ視点(1)
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「リトラン伯爵家の財政は厳しく、借金の姿が見え始めていました。そのため以前からタユレス様を愛されていましたが、敢えて私に接触。大金を得た上でタユレス様と結婚をなさるために、こういった行動に及ばれたのですよね?」
現状のまま進めば多額の負債を抱えることになり、公私ともに大きな悪影響が出てしまいます。そこで本心を隠して私に近づき、この日に向けて動かれていたのですよね?
そういった事実を疑問符付きでお伝えすると、イザック様はたまらず目を見開かれました。
しかし、それは一瞬で元通りに。ご自身こそが狡猾さを隠していた彼は、そのお顔を怒りで染めました。
「言うに事欠いてソレか! ふざけるのも大概にしろ!! 俺への発言はともかくとして、被害者まで巻き込むとは……!! 言語道断だ!!」
違う……。わたくしは、違います……っ。
涙を流して震えていらっしゃるタユレス様を慰められ、それが終わると私を鋭く睨みつけました。
「被害者は穏便な解決を望んでいたが、それはこの俺が認めない。……ルイーズ・エンティア……! この件はマイリスの父と相談し、連名にて名誉棄損などで貴様を訴える。覚悟しておけよ……!!」
「イザック様、それは不可能ですよ。もしも訴えを起こした場合、責任を問われるのは貴方様がたとなるのですからね」
「貴様、まだ言うか……!! これ以上この場で暴言妄言を吐き続けるのであれば!! 俺が、力づくで貴様を黙らせるぞ……!!」
イザック様の瞳には殺気が多分に含まれていて、実際に腕力に物を言わせて追い出そうと――一旦、有耶無耶にしようとしていらっしゃるようです。
そんな痛い思いをするのは嫌ですし、このまま有耶無耶にされたくはありません。ですので私は、次の行動に移ることにしました。
「イザック様。これまでの発言は、暴言でも妄言でもありませんよ。なぜなら、そ」
「なぜなら、なんだっ!? なんなんだ!?」
「……イザック様。それをこれから、お見せしようとしているのですよ」
調子を乱されてしまいましたので、咳払いで場を整えます。そして今度こそ私は制服のポケット部分へと手を入れ、そこからハート形のチャームを――以前イザック様がタユレス様に渡したプレゼントを、取り出したのでした。
現状のまま進めば多額の負債を抱えることになり、公私ともに大きな悪影響が出てしまいます。そこで本心を隠して私に近づき、この日に向けて動かれていたのですよね?
そういった事実を疑問符付きでお伝えすると、イザック様はたまらず目を見開かれました。
しかし、それは一瞬で元通りに。ご自身こそが狡猾さを隠していた彼は、そのお顔を怒りで染めました。
「言うに事欠いてソレか! ふざけるのも大概にしろ!! 俺への発言はともかくとして、被害者まで巻き込むとは……!! 言語道断だ!!」
違う……。わたくしは、違います……っ。
涙を流して震えていらっしゃるタユレス様を慰められ、それが終わると私を鋭く睨みつけました。
「被害者は穏便な解決を望んでいたが、それはこの俺が認めない。……ルイーズ・エンティア……! この件はマイリスの父と相談し、連名にて名誉棄損などで貴様を訴える。覚悟しておけよ……!!」
「イザック様、それは不可能ですよ。もしも訴えを起こした場合、責任を問われるのは貴方様がたとなるのですからね」
「貴様、まだ言うか……!! これ以上この場で暴言妄言を吐き続けるのであれば!! 俺が、力づくで貴様を黙らせるぞ……!!」
イザック様の瞳には殺気が多分に含まれていて、実際に腕力に物を言わせて追い出そうと――一旦、有耶無耶にしようとしていらっしゃるようです。
そんな痛い思いをするのは嫌ですし、このまま有耶無耶にされたくはありません。ですので私は、次の行動に移ることにしました。
「イザック様。これまでの発言は、暴言でも妄言でもありませんよ。なぜなら、そ」
「なぜなら、なんだっ!? なんなんだ!?」
「……イザック様。それをこれから、お見せしようとしているのですよ」
調子を乱されてしまいましたので、咳払いで場を整えます。そして今度こそ私は制服のポケット部分へと手を入れ、そこからハート形のチャームを――以前イザック様がタユレス様に渡したプレゼントを、取り出したのでした。
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