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プロローグ (2)
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『我が臣下や王宮関係者への我が儘な振る舞いや暴力などなど、王太子妃の地位を悪用した数々の所業。地位を得たことによる態度の愚かしい変化。そいつを理由に、オレはお前を切り捨てるんだよ』
『その方が殿下と円滑に婚約できますし、なによりですわ。前任が愚かであればある程、国民の間でわたくしの評判が速やかに上がる。お互いにとってメリットばかりですから、わたくしがご提案しましたの』
そういうこと、ですか……。
殿下は……。自分達を護るために、擦り付けようとしていました……。
『嘘を広めるだなんて、滅茶苦茶です……。こんなこと、陛下達が認めるはずはありませ――』
『うふふ。陛下と王妃殿下の許可は、とっくに下りていますわよ?』
『そ、そんな……!?』
『エミには、3年間の留学歴がある。『隣国との関係もより深まる』と、エミを高く評価しているんだ。弟も含め、全員が彼女を絶賛――即座に賛成しているぞ』
…………。陛下達も、了承済みだなんて……。
殿下やエミの暴走を止められる人が、全員2人の味方……。
だったら、もう……。どうしようも、ありません……。
『…………………………』
『話は、以上だ。アリシアよ、早々に去るがいい』
『さようなら、元婚約者さん。うふふふふふふ。あのご両親に、怒られないといいですわねぇ』
そうして、わたしは……。
嘲りの薄笑いを向けられながら……。有無を言わさずお屋敷へと送り返されて、
『なんてことだ……! お前のせいで、王家との繋がりがなくなってしまったじゃないかっ!!』
『今のアナタはロッザ家に悪評不幸をもたらす疫病神だわ……! アナタなんてもう家族じゃない! 赤の他人よ!! いますぐここから出ていきなさいっ!!』
『アリシア!! この役立たずがっっ!! お前が体調管理を怠ったせいでっ、王太子妃の兄という肩書を使えなくなっただろうが……!! 消えろ! 俺達の前に二度と現れるな!! そのまま無様に死んでしまえ!!』
お屋敷に着くや両親と兄から理不尽な叱責と暴力を受け、わたしは身体と心に新たな傷をつけられた上で、お屋敷を追い出されてしまいました……。
季節は冬ですっかり陽は落ちていて、所持金も食料もなし。あるのは、この身体と服だけ。
しかも――。4か月前から体調も不安定で、今日は熱が出ていて呼び出される直前まで寝込んでいた。
状況は、最悪でした……。
「はぁ、はぁ、はぁ……。だ、だめ……。おともだちの、ところ……まで……。いけ、ない……」
ですから歩き出して僅か5分くらいで、限界になってしまう。道程の100分の1にも届かないところで勝手に力が抜けて、冷たい地面に倒れ込んでしまいました。
「…………ぁ。も、う……。ゆびも、うごか、ない、な……」
それに、目の前も真っ黒になっていっている。
背中には、どんどん雪が積もっていて……。冷たいのに、払うこともできない……。
わたし……。このまま、死んじゃうのかな……?
「い、や、だ……。だ、れか……。たす、け、て……。たすけて、くだ、さい…………」
最後の力を振り絞って声を出して、でも……。もう、これ以上は無理でした……。
閉じたくないのに……。両目を閉じてしまったら、そのあとどうなるか分かっているのに……。そうなってしまうのは、絶対に、嫌なのに……。
やがて目の前が、完全に真っ暗になってしまって――
「遅くなってごめん、僕が助けるよ。今度は僕が君を助ける番だ」
――何か聞こえたような気がするけど、もう……分かりません…………。
独りでに両方の瞼が下りてしまい、そのままわたしは意識を失ったのでした――。
『その方が殿下と円滑に婚約できますし、なによりですわ。前任が愚かであればある程、国民の間でわたくしの評判が速やかに上がる。お互いにとってメリットばかりですから、わたくしがご提案しましたの』
そういうこと、ですか……。
殿下は……。自分達を護るために、擦り付けようとしていました……。
『嘘を広めるだなんて、滅茶苦茶です……。こんなこと、陛下達が認めるはずはありませ――』
『うふふ。陛下と王妃殿下の許可は、とっくに下りていますわよ?』
『そ、そんな……!?』
『エミには、3年間の留学歴がある。『隣国との関係もより深まる』と、エミを高く評価しているんだ。弟も含め、全員が彼女を絶賛――即座に賛成しているぞ』
…………。陛下達も、了承済みだなんて……。
殿下やエミの暴走を止められる人が、全員2人の味方……。
だったら、もう……。どうしようも、ありません……。
『…………………………』
『話は、以上だ。アリシアよ、早々に去るがいい』
『さようなら、元婚約者さん。うふふふふふふ。あのご両親に、怒られないといいですわねぇ』
そうして、わたしは……。
嘲りの薄笑いを向けられながら……。有無を言わさずお屋敷へと送り返されて、
『なんてことだ……! お前のせいで、王家との繋がりがなくなってしまったじゃないかっ!!』
『今のアナタはロッザ家に悪評不幸をもたらす疫病神だわ……! アナタなんてもう家族じゃない! 赤の他人よ!! いますぐここから出ていきなさいっ!!』
『アリシア!! この役立たずがっっ!! お前が体調管理を怠ったせいでっ、王太子妃の兄という肩書を使えなくなっただろうが……!! 消えろ! 俺達の前に二度と現れるな!! そのまま無様に死んでしまえ!!』
お屋敷に着くや両親と兄から理不尽な叱責と暴力を受け、わたしは身体と心に新たな傷をつけられた上で、お屋敷を追い出されてしまいました……。
季節は冬ですっかり陽は落ちていて、所持金も食料もなし。あるのは、この身体と服だけ。
しかも――。4か月前から体調も不安定で、今日は熱が出ていて呼び出される直前まで寝込んでいた。
状況は、最悪でした……。
「はぁ、はぁ、はぁ……。だ、だめ……。おともだちの、ところ……まで……。いけ、ない……」
ですから歩き出して僅か5分くらいで、限界になってしまう。道程の100分の1にも届かないところで勝手に力が抜けて、冷たい地面に倒れ込んでしまいました。
「…………ぁ。も、う……。ゆびも、うごか、ない、な……」
それに、目の前も真っ黒になっていっている。
背中には、どんどん雪が積もっていて……。冷たいのに、払うこともできない……。
わたし……。このまま、死んじゃうのかな……?
「い、や、だ……。だ、れか……。たす、け、て……。たすけて、くだ、さい…………」
最後の力を振り絞って声を出して、でも……。もう、これ以上は無理でした……。
閉じたくないのに……。両目を閉じてしまったら、そのあとどうなるか分かっているのに……。そうなってしまうのは、絶対に、嫌なのに……。
やがて目の前が、完全に真っ暗になってしまって――
「遅くなってごめん、僕が助けるよ。今度は僕が君を助ける番だ」
――何か聞こえたような気がするけど、もう……分かりません…………。
独りでに両方の瞼が下りてしまい、そのままわたしは意識を失ったのでした――。
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