その後2人を待っていたのは、正反対の人生でした

柚木ゆず

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第0話 愛する人との出会いと別れ。その先にある、誓いと代償の秘密(3)

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『おや? 奇遇だなエルザ。どうして病院にいるんだ?』

 私のせいだ――。私のせいでユーゴさんが――。このまま目覚めなかったらどうしよう――。
 あの時は事件発生直後で、命に別状はないと言われたものの、駆けつけた時は昏睡状態でした。そのため病室で涙が涸れるまで泣いて、過呼吸で倒れてしまったあとのこと。お医者様の指示で一時的にお屋敷に戻るべく馬車へと向かっていたら、廊下でウィリアム様と出会いました。

 ココと彼の邸宅は距離があり、病院に用事はなにもなかったのに。なぜか従者を連れたウィリアム様がいて、即追い打ちをかけてきます。

『なるほど、ユーゴ・フェルスタがね。実に酷い出来事だな』
『……………………』
『ああ、そうだ。ところで、エルザ。このままごねて・・・いると、更に不幸な事が起きそうな予感がする。周りの人間の為にも、早めに受け入れた方がいいと思うぞ』

 彼は『予想だ』と付け加えましたが、これは『宣告』。……どんなに憎い相手でも、服従するしかありませんでした。

『ウィリアム様、承知いたしました。私はこの場でユーゴさんとの縁を切り、貴方様のものになります。婚約、結婚をさせていただきます』
『そうか、賢明な判断だ。お前は引き返して物分かりの悪い者共に説明をし、荷物をまとめてオレの屋敷に来い。いいな?』
『畏まりました。……ですがその前に、約束してください。もう二度と、私の大切な人達に手を出さない。一切の悪意を向けない・・・・・・・・・・と、誓ってください』

 唇を強く噛み、密かに右手の甲に血液を付着させ――。「この手を握りながら約束してください」と告げ、彼は上機嫌で握ってきました。

『オレは一度も向けた覚えはないが、まあいい。今宵は気分がすこぶる良いからな。特別に約束してやろう』
『……ウィリアム様。もう二度と、私の大切な人達に手を出さない。一切の悪意を向けないと、誓ってくださるのですね?』
『そう言っているだろう。思い当たる節はないが、誓ってやる』
『…………ありがとうございます。これで私も安心して、貴方様のもとへとゆけます』

 我が家(いえ)の名、セルメント。それはフランス語でこの国の言葉で、『誓い』『誓約』を表すもの。
 元々は『ラーザルレンス』だったウチの名が『セルメント』へと変わる切っ掛けとなった人、3代目当主夫人。隣国産まれのその方は、かつてその国に存在した『聖女』を遠縁に持ち――その影響なのかご自身も一つ不思議な力を、『誓い』に関する力をお持ちだったそうです。
 だから、なのでしょう。セルメント家の女性はその力を受け継ぎ、そうであるが故にやがて家の名が変わって。現在は血がかなり薄まってしまっているため生涯1度限りですが、その力を行使することができるのです。


 ――誓いという名の楔を魂に打ち込む――。


 要するに、『約束を破ったら破滅が訪れる』。
 同じく血が薄まっている影響で、相手の同意が必要という条件――高いハードルはあるのですが。それさえ越えられたのならば、強力な代償がある約束を交わすことができるのです。

((よかった。万が一何かあっても、これがあれば未然に防ぐことができます))


 そして、今日。
 ウィリアム様は誓いを違えてしまい、楔が起動しました。


((私にも何が起きるか分かりませんが、これから貴方を様々な不幸が襲い、貴方は破滅へと向かうということは分かります。……ウィリアム様。残された日々を、楽しんでくださいね))

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