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第5話 エルザ編3日目 一昨日の続き エルザ視点(4)
しおりを挟む「あーんをしてもらうだけは不公平だし、何より、僕の心もそうしたいと感じているんだ。少しくらいなら、接触が長引いても大丈夫。きっと、大丈夫だから。エルザ、お付き合いをお願いします」
「ユーゴさん……! はいっ。お付き合いをさせていただきます……!」
安静にするために離れないといけないのですが、ユーゴさんが仰ってくれたことは本当に嬉しいもの。ですので小さく頷いて、あーんの準備を行います。
「ありがとう、エルザ。どうぞ、召し上がれ」
「こちらこそ、ありがとうございます。ユーゴさん、いただきます」
お口の前にゆっくりとマドレーヌがやって来てくれて、私はそれをぱくり。口内に入ったものを大切に、大切に味わうと――っっ! ユーゴさんが仰られていたように、大違いでした。
『エルザ、今日は特別にこれをやろう。毎日長蛇の列が出来る、超が2つは付く有名店のものだ。ありがたく食うといい』
『はい、ありがとうございます。大事にいただきます』
『我々、侯爵家御用達の一品はどうだ? うまいだろう』
『はい。おいしゅうございます』
ウィリアム様のもとでもマドレーヌを食べたことがあって、そちらは最高級品。一流の職人様が、厳選された材料を使って作られたものでした。
それに対してこちらは所謂市販品で、材料なども比較的一般的なものとなっています。ですが甘くて、幸せ。あちらはなかった優しい甘さが――ほわっと広がってゆく柔らかなものが確かに存在していて、お口の中が天国になりました。
「…………当時はそこまで意識しておらず、気付きませんでした。こんなにも、違うものなのですね……!」
「うん、僕もビックリしたよ。本当に不思議で、けれど納得だよね」
大好きな人に、ああしてもらっているのですから。大きな付加価値が発生するのは、当然ですよね。
「とっても、美味しかったです。ユーゴさん、ご馳走様でした」
「こちらこそ、ご馳走様でした。それじゃあ、そろそろ帰るね。今日も楽しかったよ、ありがとう」
私は指を使って2人で微笑み合い、その後さようなら――をする前に、もう一つ。手早く#次の__明後日#の予定を決めて、私達は今日も一旦のお別れをしたのでした。
このバイバイは、ずっとを意味するバイバイではない。
それは本当に、嬉しい事です……!
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