その後2人を待っていたのは、正反対の人生でした

柚木ゆず

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第8話 エルザ編 5日目 一緒と吉報と依頼 エルザ視点(4)

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「………………ほ、本当だ。言われてみると、そうだ。今の僕は本来、その出来事は知らないはずだ……」

 私の大きな声を受けたユーゴさんは、暫くぽかんとしていました。ですがその状況を理解するや、思わず椅子から立ち上がりました。

「いつの間にか、浮かんできていた……。当然のように記憶が存在していたから、全く気が付かなかったよ……!」
「さらりと出ていましたから、私もすぐには気付けませんでしたっ。ユーゴさんっ。また一歩、今日はもっと大きく前進しましたねっ」
「うん、そうだね。思い出したのはその際の事のみだけれど、それでも失っていた部分が蘇った。思い出せた。大きな変化だよ」

 それに――。今夜は時間が経っても、激しい頭の痛みは発生しません。
 あの書類によると、負荷による痛みがなくなる――記憶の復活は一切負荷のかからない、極々自然な現象となった証だそうです。そしてその状態になった方は、ほぼ全員が完全に回復されているそうです……!

「やっぱり僕達はずっと繋がっていて、愛によって取り戻してゆけるみたいだね」(……だとしたら。アレが、一番大きなカギになる……?)
「? ユーゴさん?」

 今度は、私が首をかしげる番でした。急にうつむきがちになって、どうされたのでしょうか……?

「ユーゴさん? どうか、なさいましたか?」
(おそらくは、そう。だが残念だけれど、当分あそこには行けない。この話題は口外しないでおこう)「ううん、なんでもないよ。ごめんねエルザ」

 顔が上がると、いつもの穏やかな表情がありました。ですので、そうですね。ご本人もそう仰っていますし、気にしないようにしましょう。

「痛みがないのであれば、すぐに帰って休まなくてもいい。連絡がない限り、父さん達は午後8時半過ぎ2時間後まで戻ってこないから――。それまで、お喋りをしていようか」
「そうですねっ。紅茶を用意しますので、お待ちください」

 食後ですから、今日はレモンティーにしましょう。もちろん私自身がポットや茶葉を用意して、お湯を沸かして、レモンを輪切りにスライスすれば準備は完了です。
 いつものようにユーゴさんがトレーを持ってくださり、2人で2階へと向か――

「エルザ、ユーゴ君っ。邪魔をしてすまない!」
「「君たち(貴方たち)に、お客様だ(お客様よ)っ」」

 ――向かおうとしていたら馬車が停まる音がして、お父様、おじ様、おば様。そして最後に、偶然お会いしたという細面の男性がいらっしゃられました。
 こちらの方は確か、陛下直属の臣下であるヤトル・ヴァルア様。どうされたのでしょうか……?
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