その後2人を待っていたのは、正反対の人生でした

柚木ゆず

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第9話 ウィリアム編6日目 6分の6。ウィリアムを襲う、最後の異変 俯瞰視点(2)

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「…………ん? なんだ、今の声は?」

 必死に怨念を飛ばし続けた日の夜、午前2時過ぎのことでした。恨み続けて疲れ、牢内で眠っていたウィリアムは、ゆっくりと上体を起こしました。

「近くには、誰もいないよな……? なんだったんだ、あの声は……?」

 ここは重罪人用の特別な独房なため周囲に囚人はおらず、看守は外――鉄の扉の向こう側にいます。そして更には絶対に脱獄できないよう、窓は存在しません
 しかしながら確かに発生し、まさに今も、男の低い声が聞こえてきているのです。

「「「「「…………も…………………………。ゆ………………。お………………」」」」」
「も、ゆ、お? 何を言っているんだ?」
「「「「「「…………も………………や…………。ゆ…………ぞ……。お…………く……」」」」」
「そのくらい増えたところで結果は同じだっ。おいっ! もっとはっきり喋れっ!」

 全てを失ってしまったウィリアムの心はいつも以上に荒んでおり、イライラしています。そのため不可思議な現象が起きていても怯えることはなく、鬱憤を晴らすように声を荒らげました。

「俺の声に反応して増えたのならば、その気になればハッキリと伝えられるはずだっ! こっちは明日もエルザへと恨みを発さなければならない忙しいんだぞ! さっさとしろっ!!」
「「「「「よ……も…………うら…………や…………。ゆ……さ……いぞ……。お……え…………て……く……」」」」」」
「だからその程度増えたところで変わらないと言っているだろ!! 睡眠の邪魔だ! 何かしら伝える気があるならさっさと伝えてさっさと黙れ!!」
「「「「「よ……も…………うら…………りや……たな……。ゆ……さないぞ……。お……えも…………いく……!」」」」」

 怒りが届いたのでしょうか? 声量が大きくなり、随分と聞き取れるようになりました。
 ですがそれでもまだは理解できず、ウィリアムは舌打ちをします。

「勿体ぶるな!! さっさと伝えろと言っただろ!! 早くしろ!!」
「「「「「よ……も…………らをうら…………りや……たな……。ゆ……さないぞ……。お……えも…………ていく……!」」」」」
「……何度も言っても、従わないのだな。ならば貴様とのやり取りはもう終わりだ!! 今後は何を言っても反応はしない!! 俺は寝るぞ!! 喋りたければ勝手に喋り続けていろっっ!!」

 我慢の限界に達したウィリアムは目を剥いて怒声を発し、床に横になる――今の彼の睡眠スペースで横になりました。

((まったく、無駄な時間だった……! どいつもこいつも、邪魔をしやがって……!! 馬鹿にしやがって……!!))

 心の中でもう一度悪態をつき、両目を閉じたウィリアム。
 ですが彼は、希望通りそのまま眠ることはできませんでした。何を言っても反応をしない、を守れなくなってしまいました。
 なぜならば――

「「「「「よくも、俺らを裏切りやがったな……! ゆるさないぞ……。お前も連れていく……!」」」」」

 ――耳元ではっきりと、そんな声が発生したからです。
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