貴方様の浮気や裏切りを怒ってはいませんよ?

柚木ゆず

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第1話 ごきげんよう アメリア視点(1)

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「お嬢様。馬車が出ました」

 午前9時少し前。ザヌエルエ邸の近くで待機していると、ついにターゲットが動き出しました。
 ロザート叔父様曰く、お二人は8日後の昼過ぎに会う。タイミング的にも、乗っているのはブルーノ様です。

「では、適切な距離を追って追いかけましょう。念のためC班は、引き続きこの場でとどまっていてください」

 数字で表すと1パーセント以下ではありますが、ブルーノ様が乗っていない可能性もあります。万が一に備えて保険をかけて上で、A班ことわたくしを乗せた馬車は追跡を始めました。

「今回お二人は、どこで会うのでしょうね?」

 前回は『ランベルード湖』――訪れた恋人たちは永遠の幸せを手に入れる、という逸話がある場所を訪れていました。
 今回もまた『恋人』が関係する場所なのか、それとも無関係な場所なのか。密室でとなると少々面倒なので、前者がよいのですがどうでしょうか?

「………………こちらにとって都合の良い約束だったようですね」

 3時間半少々の移動の末に辿り着いたのは、この景色を共に見上げた恋人たちはいつまでも幸せにいられる――そんな言い伝えがある風車が建つ場所でした。
 ブルーノ様とメリナ様が会うのは、外。これならスムーズに進められますね。

「お二人がロマンチックな方でよかったです。行きましょう」

 深々と帽子をかぶり眼鏡をかけた男性――変装したブルーノ様およびブルーノ様の護衛の方々から充分な距離を取り、ここからは徒歩で移動します。

((ブルーノ様、楽しそうですね))

 離れていても心境が容易く分かるほどに、足取りが軽い。
 羽の生えた靴を履いていそうなくらい軽やかに進み、5~6分前後歩いた頃でしょうか。大きな木の傍で、その足が止まりました。

((ここが、待ち合わせ場所ですね。メリナ様と思しき人は、まだいません。どのくらい遅れていらっしゃるのでしょうね?))

 その答えは、5分後。12時37分に、護衛4名を連れた帽子とサングラス姿の女性が現れました。

「やあミント。会えて嬉しいよ」
「ごきげんよう、ファーズ。お会いできて嬉しいですわ」

 ミント、ファーズと呼び合っておりますが、この方々は間違いなくブルーノ様とメリナ様。わたくしが求めていた状況が出来上がりましたので、距離を詰めてお声をかけることにします。

「ごきげんよう、わたくしアメリアと申します。ブルーノ様、メリナ様、奇遇でございますね」
「!? ど、どなた、ですか……? 僕は、ファーズ、ですよ……?」
「わ、わたしは……。ミント、です……」
「いいえ、ブルーノ様とメリナ様ですよ。実を言いますとわたくし、ずっと――ブルーノ様がお屋敷を発たれた時からずっと、あとをつけておりました。ザヌエルエ家に、ファーズという名前の方はいらっしゃりません」

 お二人は懸命に否定しようとしましたが、そちらは通用しません。尾行の件をお伝えすると観念したようで、否定の言葉は出なくなりました。

「今日はお二人にお伝えしたいことがありまして、この場に現れました。人気(ひとけ)がないところに移動いたしましょう」
「……わ、分かった」「……わかり、ましたわ」

 さっきとは正反対。重い重い足取りとなったブルーノ様達と共に再度移動を行い、周囲に全く人が居ない場所へと移りました。
 では、始めましょう。


「緊張されておりますので、先に要求をお伝えしましょう。こうして姿を晒した理由は、脅迫ではなくお願いがあるから。貴方がたに、わたくしを陥れていただきたいのですよ」

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