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エピローグ アメリア視点
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「人生は、本当に不思議なものですね」
お父様達がお屋敷を去ったりブルーノ様たちが去ったりした日から、3年と2か月後。わたくしは天井を見上げながら、しみじみと言葉を噛み締めていました。
「まさか、こんなことが待っているだなんて。あの頃は夢にも思いませんでした」
様々な面でスムーズに移行できますので、当主はそのまま叔父様にお任せし、わたくしは陰で叔父様を支えるつもりでした。しかしながら叔父様はわたくしに任せたいと仰られ、わたくしはこれまで行っていた補佐の勉強を止め、当主の修行に励むようになりました。
あらゆる知識を蓄え、経験を積む。自分で言うのもなんですが――。血のにじむ努力を重ねた結果、もちろんまだまだ未熟な面はありますが、どうにかフザロード家の当主を名乗れるようになりました。
「わたくしは、縁の下にいるつもりだった。あの頃のわたくしに伝えたら、ビックリしてしまうでしょうね」
でも、きっと。今のわたくしを見たら、それ以上にビックリしてしまうでしょうね。
「アメリア様、ドレスがよくお似合いです。綺麗ですよ」
「ありがとうございます。褒めていただけて嬉しいです」
ノックのあと扉を開けて現れたこの男性は、ザドアール子爵家の長男ライナック様。わたくしの婚約者であり、最愛の人です。
『初めまして、ライナックと申します』
あの件で婚約者がいなくなったため新たに探すことになり、ザドアール家との間にパイプを設けることになりました。ですので今から1年前にライナック様と出会い――やがて、恋をしました。
『アメリア様は、長い間懸命に駆け抜けてこられた。僕は様々な面で、貴方の遥か後方にいます』
『今のままでは、まるで釣り合いません。でも必ずやその距離を縮め、隣を歩けるように致します』
ライナック様は頑張り屋さんで、どんなに困難な問題が立ちはだかっても、努力を繰り返して乗り越えていくんです。
そんな姿に惹かれるようになって。
『失礼。もしやお体の具合が?』
『侍女、そうなの? 遠慮なく教えて』
『は、はい。実は腰を捻りまして……』
『そうだったのね、気付けなくてごめんなさい。今日はもう休んで頂戴』
『申し訳ございません。失礼致します』
『いいのよ。……ありがとうございますライナック様。気付けずにおりました』
『皆様はアメリア様が大切に想われている存在。お役に立てて何よりです』
『よかった……! お誕生日プレゼントを喜んでいただけるか、ずっとドキドキしていたんですよっ』
誰に対しても優しく、人の喜びを自分の喜びに感じられる。
そんな心に惹かれるようになって。
大好きで大切な人に、なったんです。
「タキシード。ライナック様も、とてもお似合いですよ」
「お褒めに預かり光栄です。もっと見させていただきたいのですが、残念。訪ねたばかりなのに時間が来てしまいました」
「わたくしも眺めさせていただきたかったので、残念です。ですが」
「はい、少しすればお傍で沢山見られます。それまでの我慢ですね」
わたくし達は微苦笑を浮かべて一旦のお別れを行い、様々な確認などを行い、やがて『その時』が訪れました。
「お嬢様」
「ええ、行きましょう。バージンロードへ」
今日は、わたくし達の結婚式なんです。
あの頃は想像もしなかった。
大好きな人が待っている場所へ。
かつて感情の機微が少なかったはずのわたくしは、自然と笑みを浮かべながら控え室を出たのでした。
お父様達がお屋敷を去ったりブルーノ様たちが去ったりした日から、3年と2か月後。わたくしは天井を見上げながら、しみじみと言葉を噛み締めていました。
「まさか、こんなことが待っているだなんて。あの頃は夢にも思いませんでした」
様々な面でスムーズに移行できますので、当主はそのまま叔父様にお任せし、わたくしは陰で叔父様を支えるつもりでした。しかしながら叔父様はわたくしに任せたいと仰られ、わたくしはこれまで行っていた補佐の勉強を止め、当主の修行に励むようになりました。
あらゆる知識を蓄え、経験を積む。自分で言うのもなんですが――。血のにじむ努力を重ねた結果、もちろんまだまだ未熟な面はありますが、どうにかフザロード家の当主を名乗れるようになりました。
「わたくしは、縁の下にいるつもりだった。あの頃のわたくしに伝えたら、ビックリしてしまうでしょうね」
でも、きっと。今のわたくしを見たら、それ以上にビックリしてしまうでしょうね。
「アメリア様、ドレスがよくお似合いです。綺麗ですよ」
「ありがとうございます。褒めていただけて嬉しいです」
ノックのあと扉を開けて現れたこの男性は、ザドアール子爵家の長男ライナック様。わたくしの婚約者であり、最愛の人です。
『初めまして、ライナックと申します』
あの件で婚約者がいなくなったため新たに探すことになり、ザドアール家との間にパイプを設けることになりました。ですので今から1年前にライナック様と出会い――やがて、恋をしました。
『アメリア様は、長い間懸命に駆け抜けてこられた。僕は様々な面で、貴方の遥か後方にいます』
『今のままでは、まるで釣り合いません。でも必ずやその距離を縮め、隣を歩けるように致します』
ライナック様は頑張り屋さんで、どんなに困難な問題が立ちはだかっても、努力を繰り返して乗り越えていくんです。
そんな姿に惹かれるようになって。
『失礼。もしやお体の具合が?』
『侍女、そうなの? 遠慮なく教えて』
『は、はい。実は腰を捻りまして……』
『そうだったのね、気付けなくてごめんなさい。今日はもう休んで頂戴』
『申し訳ございません。失礼致します』
『いいのよ。……ありがとうございますライナック様。気付けずにおりました』
『皆様はアメリア様が大切に想われている存在。お役に立てて何よりです』
『よかった……! お誕生日プレゼントを喜んでいただけるか、ずっとドキドキしていたんですよっ』
誰に対しても優しく、人の喜びを自分の喜びに感じられる。
そんな心に惹かれるようになって。
大好きで大切な人に、なったんです。
「タキシード。ライナック様も、とてもお似合いですよ」
「お褒めに預かり光栄です。もっと見させていただきたいのですが、残念。訪ねたばかりなのに時間が来てしまいました」
「わたくしも眺めさせていただきたかったので、残念です。ですが」
「はい、少しすればお傍で沢山見られます。それまでの我慢ですね」
わたくし達は微苦笑を浮かべて一旦のお別れを行い、様々な確認などを行い、やがて『その時』が訪れました。
「お嬢様」
「ええ、行きましょう。バージンロードへ」
今日は、わたくし達の結婚式なんです。
あの頃は想像もしなかった。
大好きな人が待っている場所へ。
かつて感情の機微が少なかったはずのわたくしは、自然と笑みを浮かべながら控え室を出たのでした。
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