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第4話 理由 クレア視点(1)
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「マリアス様。どうして助けくださったのですか?」
場内での出来事に、感謝をお伝えした後。私は今一度姿勢を正し、対面にある茶色の瞳を見つめた。
交際していた――。そんなことを宣言してしまえば、今後に大きな影響がある。にもかかわらずあのように振る舞ってくださったのは、なぜ……?
「『どうして』、その理由はすでに説明しているよ。さっきの出来事を、思い出してみてもらえるかな?」
「さっき………………まさかっ。そちらは、あのお言葉のことなのですか……!?」
『俺は以前から彼女の聡明さや振る舞いに惹かれていた』
『1回生から所属が同じで2年間注目していて、抱いていた関心が好意に変わった』
こちらが、理由……!?
「正解。交際など色々ウソを吐いたけれど、そこはウソじゃないんだ。俺は君に興味を持ち、やがてそれが恋になった。半年前から、明確な好意を抱いていたんだよ」
「そ、そう、だったのですね……。まったく、気が付きませんでした」
「俺としては早く想いを告げて、少しでも早くアプローチをしたりしたかったんだ。ただ問題の解消に手間取っていて、言えずにいたんだよ」
もしも侯爵家次期当主のもとに子爵家の娘が嫁ぐことになれば、格差など様々な理由で苦言を呈され反対されてしまう。もしも良い返事をもらえてから対策を取っていれば、私が様々な形で傷ついてしまう。
そのために各方面に手を回し、問題が発生しないようにされていたそう。
「その作業は昨日終わって、実は今夜パーティー終了後に伝えるつもりだったんだよ。それがこんなことになるなんて、ここまでの予想外は初めてだよ」
「はい。私も初めて経験します」
今夜の出来事は、これまでで一番の予想外。マリアス様は微苦笑を浮かべられ、私も自然と同様の表情を作った。
「で、想いを告げる場所の下見をしていた――席を外している間に問題が起きて、戻ってみるとあんなことになっていた。……あの手の証言は、厄介だ。浮気を証明できなくても相手の自白と被害者の涙があれば、周りはダリアの味方をしてしまう。君の悪評が流れ、様々な部分に大きなダメージを受けてしまう」
「はい……。仰る通りです」
「そこで全てを回避できるよう、咄嗟に恋人のフリをしたんだよ。…………クレア様。突然のご無礼、お許しください」
それは、私のための行動。なのにマリアス様は、車内で左膝を付かれた――この国では深い謝罪の際にするものを、本心で行われた。
しかも、驚くのはそれだけに留まらず――。
この方は更に、呆然となってしまうことを――私を想ってくださる言葉を、口にされたのだった。
場内での出来事に、感謝をお伝えした後。私は今一度姿勢を正し、対面にある茶色の瞳を見つめた。
交際していた――。そんなことを宣言してしまえば、今後に大きな影響がある。にもかかわらずあのように振る舞ってくださったのは、なぜ……?
「『どうして』、その理由はすでに説明しているよ。さっきの出来事を、思い出してみてもらえるかな?」
「さっき………………まさかっ。そちらは、あのお言葉のことなのですか……!?」
『俺は以前から彼女の聡明さや振る舞いに惹かれていた』
『1回生から所属が同じで2年間注目していて、抱いていた関心が好意に変わった』
こちらが、理由……!?
「正解。交際など色々ウソを吐いたけれど、そこはウソじゃないんだ。俺は君に興味を持ち、やがてそれが恋になった。半年前から、明確な好意を抱いていたんだよ」
「そ、そう、だったのですね……。まったく、気が付きませんでした」
「俺としては早く想いを告げて、少しでも早くアプローチをしたりしたかったんだ。ただ問題の解消に手間取っていて、言えずにいたんだよ」
もしも侯爵家次期当主のもとに子爵家の娘が嫁ぐことになれば、格差など様々な理由で苦言を呈され反対されてしまう。もしも良い返事をもらえてから対策を取っていれば、私が様々な形で傷ついてしまう。
そのために各方面に手を回し、問題が発生しないようにされていたそう。
「その作業は昨日終わって、実は今夜パーティー終了後に伝えるつもりだったんだよ。それがこんなことになるなんて、ここまでの予想外は初めてだよ」
「はい。私も初めて経験します」
今夜の出来事は、これまでで一番の予想外。マリアス様は微苦笑を浮かべられ、私も自然と同様の表情を作った。
「で、想いを告げる場所の下見をしていた――席を外している間に問題が起きて、戻ってみるとあんなことになっていた。……あの手の証言は、厄介だ。浮気を証明できなくても相手の自白と被害者の涙があれば、周りはダリアの味方をしてしまう。君の悪評が流れ、様々な部分に大きなダメージを受けてしまう」
「はい……。仰る通りです」
「そこで全てを回避できるよう、咄嗟に恋人のフリをしたんだよ。…………クレア様。突然のご無礼、お許しください」
それは、私のための行動。なのにマリアス様は、車内で左膝を付かれた――この国では深い謝罪の際にするものを、本心で行われた。
しかも、驚くのはそれだけに留まらず――。
この方は更に、呆然となってしまうことを――私を想ってくださる言葉を、口にされたのだった。
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