私が幼馴染の婚約者と浮気をしていた? そんな事実はないのですが?

柚木ゆず

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第8話 2つ目の聴取 クレア視点(2)

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「『我慢できなくて』、そう言ったそうじゃないか。それほどまでに求めていたのなら、ここでじっと待っているはずがない。この距離を君が歩いてくるのを、待っていられないと思うんだよ」

 現在私達が立っている、玄関前。向かって左手側にある、来客用の馬車が停まるエリア。そちらを順に見渡し、マリアス様の瞳は再びファビオ様へと向く。

「どうしてわざわざ、ここで君を迎えたのか? ……そういえば、ファビオ。この場所は、門の外からよく見えるね」
「え!? は、はいっ! そうでっ、ございますね!」
「…………もしも馬車を降りたところに駆け寄っていたら、遮蔽物の関係で2人の姿を門外からは目視できない。もしやこれは、『浮気していた』という証拠を作るための嘘なのではないかな? その台詞も手繋ぎもキスも、捏造されたものじゃないのかな?」
「ちっ、違います!! そんなつもりは微塵もなくっ! 真実でございます!!」
「だがついさっきダリアはおかしな内容を証言し、現在は君もおかしなことを口にしてしまっている。俺は――治安局員の方々も。相当訝しんでいるんだよ」

 ますます渋面を作られるようになった、5名。そんな皆様を一瞥された後、みたびマリアス様の視線はファビオ様へと戻った。

「これでは、さすがに信用はできない。僕の中の天秤は、クレアへとかなり傾いているよ」
「そ、それは……。浮気をしていないと、思うようになってきた……。と、いう意味でしょうか……?」
「そうなるね。昨夜および先ほど行った彼女への聴取に不審な点はなく、逆に君達には早くも見つかったのだからね。そうする理由は見当がついていないけれど――。言動が、そうさせているんだよ」

 ダリアとファビオ様は、私達は繋がっていると気付いていない。なのでこの言葉は大きな動揺を誘い、ファビオ様は更にそわそわされるようになった。

「結論ありきで行う追及は好ましくないけれど、そうならざるを得ないんだ。……もしも嘘を吐いているなら、早く認めた方がいいよ? 進めば進むほど、罪が重くなっていってしまうからね」
「いっ、いえ!! わたくしの言葉に嘘はございません!! その証拠にっ! そのあとクレア様と過ごした時間についてもつぶさに語れます!! これよりっ、そちらを説明させていただきますっ!!」
「ふぅん、できるんだ。分かったよ。じゃあ細かに説明してもらおうか。屋敷に入ったあと、どんなことがあったのをね」

 そう言い終えたあと一瞬だけ、口元が緩んだのが見えた。
 はい、そうですねマリアス様。こちらにとっては願ってもないことに、なりました。

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