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第8話 2つ目の聴取 クレア視点(3)

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「手を繋ぎ、キスを交わしたあと。君とクレアの間には、どんなことがあったんだい?」
「まずは当主ご夫妻にご挨拶を行い、いつものように・・・・・・・クレア様の私室へと向かいました」
「へぇ、私室にね。……ファビオ、クレアの部屋の内装を教えて欲しい。どんな色を基調としていて、どんな形の照明や物が置かれているのかな?」
「お部屋は、白を基調とされていました。照明はユリの花をモチーフとしたものでして、ドレッサーやベッド、ユリの花をさした花瓶などが置かれております。クレア様は、ユリがお好きですので」

 それはきっと、ダリアに教わった情報。彼はあたかも知っているようにスラスラと語り、説明を続けてゆく。

「そんなお部屋に入ったあとは、テーブルについて紅茶をいただきました。まずは淹れてくださったお茶を飲みながら、お喋りをする。こちらも同じく、いつもの行動ですので」

 これは私が毎回ダリアに行っていたことで、『親しい人には絶対にそうするはず』という入れ知恵なのでしょうね。ここも自信たっぷりに紡いだ。

「ただその日は、創立パーティーが控えていました。そのため昨日はここで終わりとなり、1時間ほど滞在したはずですので…………正午過ぎですね。シフォンケーキをお土産としていただき、こちらを後にしました」

 私はお菓子作りが趣味の一つで、親しい人が来てくれた際には必ず焼き菓子を渡している。そしてシフォンケーキはレパートリーにあり、ファビオ様がされた説明におかしな点はなかった。
 今のところは。

「なるほど、よく分かったよ。けれど実は、その中で2つ気になった点があってね。これからそれを質問させてもらおうかな」
「喜んで。何なりと仰ってくださいませ」
「1点目。君が出された紅茶は、なんだったのかな?」
「ベルガモットを、いただきました」
「……おや? それはおかしいね。クレアは決まって、来客時にはアールグレイを出すのだけどね?」
「ジュレイアル様。クレア様は訪問客の表情や今日の天気気温などを考慮し、毎回その時にピッタリなものを出してくださいます。固定ではありませんよ」

 お戯れを――。そんな風に微笑み、それを受けてマリアス様は微苦笑を浮かべれた。

「いやぁ、簡単にバレてしまったね。ではここは問題なしとして、最後の質問をしよう。そのベルガモットが入っていたのは、どんな模様のカップだったのかな?」
「ユリでございます。先ほど申し上げましたように、クレア様はユリを愛される御方ですので。こちらは紅茶と異なり固定となっており、毎回お気に入りのカップに淹れてくださっております。余談ではありますが、7年前――10歳の頃から、同じデザインのみを使用されていますね。この国北部にある『ターリッケル』という店の製品です」

 ふらふらになる程に努力をされただけあって、ここも完璧。時期と店名まで完璧なのだけれど――思った通りだった。
 ファビオ様は、大きな大きなミスを犯してしまった。

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