私が幼馴染の婚約者と浮気をしていた? そんな事実はないのですが?

柚木ゆず

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第12話 翌日 クレア視点

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「マリアス様、シッキムとマドレーヌでございます。お召し上がりください」

 敷地内で聴取が行われ、ダリア達が連行された日の翌。いらっしゃった治安局員の方から顛末などの報告があり、今後のスケジュールについて――法廷への出廷などについて話し合ったあとのこと。
 私達は我が家(いえ)のお庭にいて、私はガーテンテーブルにてお茶とお菓子をお出ししていた。


『礼なんて不要だよ。これは、俺が勝手に言い出したもの。それに君なら、自力で解決できていた問題だからね』
『ですが……。マリアス様が前に出てくださらなければ、遥かに苦労しておりました。何かしらのお礼をさせていただきたく思います』
『……分かったよ。じゃあ…………お茶とお菓子をいただこうかな。あの夜は俺用に合った紅茶を選んでもらえる余裕はなかったし、自慢の焼き菓子だって未体験だからね』


 お優しいマリアス様は昨日(さくじつ)要望を呑んでくださり、次の日の午後3時にお会いする約束をしてくださった。そのためこういった状況になっているのです。

「どうもありがとう。いただきます」

 私が着席したタイミングに合わせてカップを手に取られ、2口含んだあとマドレーヌを3分の1ほど口にされた。そうして両方を味わわれたマリアス様は、

「うん、どちらも美味しい」

 口元を品よく緩め、パチリと片目を瞑ってくださった。

「愛する人が俺に合わせた淹れてくれた紅茶を飲んで、特製の焼き菓子を食べられる。こんなにも嬉しく、贅沢なことはないよ」
「痛み入ります。……私も、とても嬉しく感じています」

 今までも、相手が良い反応をしてくれると嬉しかった。でも今日のソレは、少し違う。
 一昨日から感じるようになった、胸の奥の『トクン』。マリアス様の表情とお言葉によって胸が高鳴り、自然と頬が緩んでしまう。

「……マリアス様。私はあの夜よりも、あの気持ちが強くなっています」

 馬車の中で口にした、『この件が落ち着いたら、貴方様のことをもっと教えていただけませんか?』。抱いている感情が、希望から切望へと変化した。

「裁判などは残っていますが、マリアス様のご助力によって脅威は去りましたので。教えてください。私が知らない貴方様を、貴方様の全てを、お教えください」
「喜んで。そんなにも熱を込めてもらえて、光栄だよ」

 そのお言葉はまた、私の頬を無条件で緩めてしまうもの。私の心は更にトクンと高鳴り、そうして私達の関係は――『本物』の関係が、始まって――

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