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第6話 戦いを終えて(2)
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「最初に、最終的に行ってもらいたいことに言及しますね。この僕と、『主従契約』を結んでくれませんか?」
理由はちゃんとあるって、そちらが困るような提案ではない。そんな前置きをした上で、冬馬は補説を始めました。
「貴方は付喪神という存在なのですが、全ての記憶を失われていますよね?」
「あ、ああ、そうだな。なにもかも忘れてしまっている」
「貴方がたにとっては特に、記憶――『名』がないという状況は死活問題。その状態が続ければ――あと30分もすれば、再度さっきのような状態に戻ってしまうのですよ」
理性を失い、破壊衝動に従いその力を振るう。また不審火などが発生することとなります。
「そんな事態を防ぐためには『名』を思い出す必要があるのですが、それはそう簡単にできることではありません。そこで僕が代わりに名前をつけることで、理性を失わずに済むのですよ」
「……君に……。そんなことができる、のか……?」
「ええ、本当です。それどころか、いずれ記憶だって取り戻せるんですよ」
「本当なのか!? 予想ではなくてっ、実際にそうできるのか!?」
「はい、できますよ。こちらにいる彼、月夜見鏡が証左です」
それは、偶然の出来事でした。
〇〇〇
「よろしい、のですか……?」
「もちろん。僕は、神宮寺冬馬っていいます。よろしくお願いします、ええと……」
「今の私には、名前がありません。冬馬、よろしければ名付けてくださりませんか?」
「んーと~。じゃあ………………鏡さん。月夜見鏡さん」
「つくよみ、きょう……」
「鏡に関しているから鏡(きょう)。空には綺麗な月が出ているから、月の神の月夜見。それを合わせて月夜見鏡。どうかな?」
「素敵、だと感じています。では今日から、月夜見鏡を名乗らせていただきますね」
「うん。よろしくね、鏡さん」
12年前に2人が初めて出会い、冬馬が鏡に名前をつけたあとのことでした。
「…………あれ?」
「??? どうしましたか?」
「…………今……。鏡さんが右足を動かしたでしょ? そうしたら、足元でほこりが舞ったんだ」
「えっ!?」
驚くのも無理はありません。
付喪神は――この状態の鏡は冬馬など霊感が強い存在にしか干渉できず、本来はいくら動いても埃に作用することはないのですから。
「なにかの間違いでは、ないのですか……?」
「ううん、確かに舞ったよ。それに……」
「それに……?」
「よく見ると、鏡さんの姿が『濃く』なってる。幽霊とかじゃ、ないくらいに」
話しているうちに他にも違和感を覚え、冬馬は急いで蔵から出て――一番近くにいた母親を連れて戻ってきました。
「もう、どうしたのよ冬馬――おじいちゃん……!? 生きていたの!?」
「……やっぱりだ……。霊感がない母さんにも、見えてる……」
その結果付喪神がいつの間にか『実態』を持っていることに気付き、それだけではありませんでした。更にその後――
理由はちゃんとあるって、そちらが困るような提案ではない。そんな前置きをした上で、冬馬は補説を始めました。
「貴方は付喪神という存在なのですが、全ての記憶を失われていますよね?」
「あ、ああ、そうだな。なにもかも忘れてしまっている」
「貴方がたにとっては特に、記憶――『名』がないという状況は死活問題。その状態が続ければ――あと30分もすれば、再度さっきのような状態に戻ってしまうのですよ」
理性を失い、破壊衝動に従いその力を振るう。また不審火などが発生することとなります。
「そんな事態を防ぐためには『名』を思い出す必要があるのですが、それはそう簡単にできることではありません。そこで僕が代わりに名前をつけることで、理性を失わずに済むのですよ」
「……君に……。そんなことができる、のか……?」
「ええ、本当です。それどころか、いずれ記憶だって取り戻せるんですよ」
「本当なのか!? 予想ではなくてっ、実際にそうできるのか!?」
「はい、できますよ。こちらにいる彼、月夜見鏡が証左です」
それは、偶然の出来事でした。
〇〇〇
「よろしい、のですか……?」
「もちろん。僕は、神宮寺冬馬っていいます。よろしくお願いします、ええと……」
「今の私には、名前がありません。冬馬、よろしければ名付けてくださりませんか?」
「んーと~。じゃあ………………鏡さん。月夜見鏡さん」
「つくよみ、きょう……」
「鏡に関しているから鏡(きょう)。空には綺麗な月が出ているから、月の神の月夜見。それを合わせて月夜見鏡。どうかな?」
「素敵、だと感じています。では今日から、月夜見鏡を名乗らせていただきますね」
「うん。よろしくね、鏡さん」
12年前に2人が初めて出会い、冬馬が鏡に名前をつけたあとのことでした。
「…………あれ?」
「??? どうしましたか?」
「…………今……。鏡さんが右足を動かしたでしょ? そうしたら、足元でほこりが舞ったんだ」
「えっ!?」
驚くのも無理はありません。
付喪神は――この状態の鏡は冬馬など霊感が強い存在にしか干渉できず、本来はいくら動いても埃に作用することはないのですから。
「なにかの間違いでは、ないのですか……?」
「ううん、確かに舞ったよ。それに……」
「それに……?」
「よく見ると、鏡さんの姿が『濃く』なってる。幽霊とかじゃ、ないくらいに」
話しているうちに他にも違和感を覚え、冬馬は急いで蔵から出て――一番近くにいた母親を連れて戻ってきました。
「もう、どうしたのよ冬馬――おじいちゃん……!? 生きていたの!?」
「……やっぱりだ……。霊感がない母さんにも、見えてる……」
その結果付喪神がいつの間にか『実態』を持っていることに気付き、それだけではありませんでした。更にその後――
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