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第9話 迫りくる恐怖 ベルナール視点(2)
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「まさか……。壊れる、のか……?」
アンデッド共が押し寄せて来た……。その勢いに、耐えられない、のか……?
「案ずるなベルナールよ、この城門は特に力を入れて造らせた。破壊など不可能だ」
「それは、そうですが……。嫌な音が――また、嫌な音がしました。この音は、不味いのではないですか……?」
ボゴンは、まだいい。だが、バキッ! は駄目じゃないのか……?
「心配は要らん。そんなお前に面白い話をしてやろう」
「……え?」
「同じ素材できた、同じ長さ、同じ太さの棒が2つあったとしよう」
???
父上は、なにを言っているんだ……?
「片方をA、もう片方をBとしようか。だがその2つには、唯一違う点があった。Aは非常に硬く、Bはよく撓(しな)るのだ」
「は、はい。それが、どうしたのです……?」
「では問題だ。そんな2つの両端を抑えて、思い切り折り曲げようとした場合――割ろうとした場合だ。先に折れるのはどちらだと思う?」
「え……? それは、Bでしょう」
父上の意図は分からないが、とりあえず答えておく。
Aは硬い。だったらAの方が丈夫に決まっている。
「ふふふ、やはりそう答えたな。残念だが外れだ。正解はBなのだよ」
「そ、そうなのですか……? なぜ、そうなるのです……?」
「Aは確かに、非常硬くて丈夫だ。だがな、その硬さが仇となるのだよ」
Bはかかった力を『撓(しな)る』ことで分散させられるが、硬いAはかかった力を分散させることができない。そのため一点に威力が集中してしまい、先に折れてしまう。
らしい。
「この城門もそういった点を利用していて、硬さを保ちつつも撓(しな)りがあるようにしているのだよ。あの音は門にかかった力を分散しているだけ。音は不穏ではあるが、突破などされんよ」
「さすがお父様! だったら安心ですねっ!」
「ええマルゴ。問題ないでしょう」
「もうベルナール。不安にさせないで頂戴」
「申し訳ございません、母上。そうですよね。大砲を打ち込まれてもビクともしないのですから、いくらアンデッドが大量に押し寄せたとしても――」
バキ! バキ!! バキ!! バキ!! バキ!! ベキ!! ベギン!!
バゴン!!
「――…………。大丈夫、じゃなかった……」
安全だと、言っていたのに……。
門が……。
門が……。
崩壊、した……。
アンデッド共が押し寄せて来た……。その勢いに、耐えられない、のか……?
「案ずるなベルナールよ、この城門は特に力を入れて造らせた。破壊など不可能だ」
「それは、そうですが……。嫌な音が――また、嫌な音がしました。この音は、不味いのではないですか……?」
ボゴンは、まだいい。だが、バキッ! は駄目じゃないのか……?
「心配は要らん。そんなお前に面白い話をしてやろう」
「……え?」
「同じ素材できた、同じ長さ、同じ太さの棒が2つあったとしよう」
???
父上は、なにを言っているんだ……?
「片方をA、もう片方をBとしようか。だがその2つには、唯一違う点があった。Aは非常に硬く、Bはよく撓(しな)るのだ」
「は、はい。それが、どうしたのです……?」
「では問題だ。そんな2つの両端を抑えて、思い切り折り曲げようとした場合――割ろうとした場合だ。先に折れるのはどちらだと思う?」
「え……? それは、Bでしょう」
父上の意図は分からないが、とりあえず答えておく。
Aは硬い。だったらAの方が丈夫に決まっている。
「ふふふ、やはりそう答えたな。残念だが外れだ。正解はBなのだよ」
「そ、そうなのですか……? なぜ、そうなるのです……?」
「Aは確かに、非常硬くて丈夫だ。だがな、その硬さが仇となるのだよ」
Bはかかった力を『撓(しな)る』ことで分散させられるが、硬いAはかかった力を分散させることができない。そのため一点に威力が集中してしまい、先に折れてしまう。
らしい。
「この城門もそういった点を利用していて、硬さを保ちつつも撓(しな)りがあるようにしているのだよ。あの音は門にかかった力を分散しているだけ。音は不穏ではあるが、突破などされんよ」
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「申し訳ございません、母上。そうですよね。大砲を打ち込まれてもビクともしないのですから、いくらアンデッドが大量に押し寄せたとしても――」
バキ! バキ!! バキ!! バキ!! バキ!! ベキ!! ベギン!!
バゴン!!
「――…………。大丈夫、じゃなかった……」
安全だと、言っていたのに……。
門が……。
門が……。
崩壊、した……。
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