あこがれチェンジ!

柚木ゆず

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1 あたしがもう一人!? (2)

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「実はこっちのあたしには、貴方を変身、変化させられる特別な力があるの。そうすれば現実でもずっと――ううん。残念ながら夢の中だけなんだけど、理想のあたしになれるからさ。ちょっとなってみない?」
「ぁ~、そっかそっかぁ。12時になると魔法がとけちゃう、白雪姫みたいになれるんだね?」
「……あたし、それはシンデレラよ……。とにかく、『はい』と『いいえ』、どっち?」

 両手を握る力が少しだけ強くなって、目の前のあたしは首を傾けた。

「怖いことは何もないから、安心して。どうせ夢なんだし、気軽に決めようよ」
「………夢……。そっか、夢なんだもんね……」
「そうそうっ、夢なんだもん。お試しみたいなものだから、『はい』だよねっ?」
「うにゅぅ。お返事は、『いいえ』でお願いしますだよー」

 あたしは顔の前で両腕を交差させて、もう1回×印を作った。

「夢の中でしかなれないなら、みんなにあたしを見せられないもん。お友達のはんのー反応を見られないのは、面白くないよね」
「ち、ちがっ、そうじゃないのあたし! あれは嘘! ほんとは現実でも、ずっとずっとそういうあたしになれるんだよっ!」
「ふぇ? 夢の中の出来事は夢の中で終わり、なんだよ?」
「それはよくわかってるから! あたしはあたしが全然信じないからしかたなく話を合わせてたのっ! その方が頷きやすいと思って一旦ああ言っただけなのっ!」
だいじょーぶ大丈夫、間違いは誰にでもあるよ。あたしもこないだのテストで、お名前を書き忘れちゃったし――ふにゃ? 体が、きらきら光りはじめた?」

 これって…………そっか。夢が終わろうとしてるんだ。

「ふぇー、夢ってこーゆー風に終わるんだね。もし覚えてたら、学校でユーカとユーナに教えてあげよっと」
「あたしっ、今なら返事をやり直せるからっ! すぐに『はい』って言って!」
「えっとね。もう1人のあたしさん、最初はビックリしたけど楽しかったよー。また会えると嬉しいなぁ」
「待って! だからあたしのお話を聞いてっ! ねえっ! まだ間に合うからっ! おねが」

 ぷつり。
 途中で目の前が真っ暗になって、気が付くとあたしはベッドで仰向けになっていた。

 ここは、あたしのお部屋。やっぱりさっきのは終わりの合図で、んやっ! 今日は夢をちゃんと覚えてる!

「ハナー、朝よーっ。一日がはじまるわよ――ってあら? 今日はもう起きてるのね」

 みんなに面白いお話をできる。やったぁって思ってたら、ママが起こしにきてくれた。
 あたしは朝なかなか起きられないから、毎日起こしてもらってるの。前の日に早く寝ても、どーしても起きられないんだよねぇ。

「にゅ、おはよーママ。とっても不思議で面白い夢を見たから、早く起きられたみたい」
「ふーん、そりゃよかったわね。もうすぐご飯ができるから、おりてらっしゃい」
「はーいっ。わかりましただよーっ」

 お返事をしたあたしはベッドから飛び降りて、パパパーッとお洋服にお着替え。そのあとランドセルと体操服袋を持って、お部屋を飛び出したのでしたーっ。

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