あこがれチェンジ!

柚木ゆず

文字の大きさ
6 / 68

2 あたしをスカウト!? (4)

しおりを挟む
「あー違う違う、陽上ちゃんに害があるんじゃないから。そんなに焦らなくても大丈夫だよ」
「そ、そーなんですか。じゃーじゃー、どーしてなんですか?」
「うん、それはね。2つ、理由があるんだ」

 ナツキちゃんさんは右手の、人差し指と中指を立てた。

「まず、1つめ。それは――自分の意思でアコヘンを拒絶した人にも、月下家とおんなじ力が宿るから。何かの拍子にうっかり力を使っちゃうと大変だから、そうならないように教えるようにしてるんだよ」
「えええっ、あたしにもあるんですか!? ヒーローの力があるのっ!?」
「アコヘンの誘惑に勝つと『素質あり』って判断されて、同じ力を渡されるみたいなんだ。誘惑に負けないのはしっかりとした自分を持っているという証で、人をアコヘンから救うには、そういう気持ちが必要なんだよ」
「………………………………。ぁぅぅ」

 い、言えない。夢と思い込んでて断わったなんて、言えない……。

「? 急にモジモジして、どったの?」
「なっ、なんでもないですっ。2つ目はなんなですかっ?」
「?? なんなですか?」
「まっ、間違えました、だよ。何なんですかっ?」
「なんか気になるけど、まーいっか。2つ目はね、アタシ達の仕事を――アコヘンの仕事を、陽上ちゃんにちょっとだけ手伝ってもらいたいなって思ったからなんだよ」

 首をかしげていたナツキちゃんさんは、あたしを見つめた。

「実を言うとアコヘンの仕事をできる人はとっても少なくて、この地域はアタシ達親子4人が担当してるの。だから常に人手不足で、仲間が欲しかったんだよ」
「ふぁ。そーなんですかぁ」
「それに紅葉は先月までアタシのサポートをしていてね、1人で数回解決してはいるものの、単独で任せるのはまだ心配だった。しかも4月は環境の変化で新しい友達や人と出会うから、1年間で1番憧れを抱く人に出会いやすい時期――1年間で1番、アコヘンが起きる時期なの。つまりアタシ達家族が手伝っている余裕が全然なかったから、普段以上にそういう人を求めてたんだよ」

 あたしも、4月にアコヘンしちゃったもんね。
 月下家さんは今、とっても忙しいんだ。

「というワケで陽上ちゃんには、忙しくなくなるまでの約1か月間、5月になるまでこの子のパートナーになってもらいたいんだよ。人助けってのはものすごくプレッシャーがかかることなんだけど、もしよければ少しだけ協力してくれないかな?」
「やりますっ! あたしやりますっっ!」

 右手をたかーく上げて、ハキハキと。首をブンブンって縦に動かして、すぐにオッケーをしました。

「……さすがのアタシも、即答されるとは思ってなかったなぁ。陽上ちゃんはどうして、すぐに引き受けてくれたのかな?」
「誰かがアコヘンのままになったら大変だってわかったし、ナツキちゃんさんたちが大変そうだし……。それに……」
「? なあに?」
「えっと、なんでもなくって、りゆーはいじょー以上です。あたしには力があるしじじょー事情も知っちゃったから、喜んでやります」

 言いかけてたお話は、恥ずかしいから内緒。あたしはもう1回おっきく頷いて、ナツキちゃんさんとモミジちゃんに笑ったのでしたっ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

見える私と聞こえる転校生

柚木ゆず
児童書・童話
「この中に、幽霊が見える人はいませんか?」  幽霊が見える中学1年生の少女・市川真鈴のクラスに転校生としてやって来た、水前寺良平。彼のそんな一言が切っ掛けとなり、真鈴は良平と共に人助けならぬ幽霊助けをすることになるのでした――。

【完結】またたく星空の下

mazecco
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 君とのきずな児童書賞 受賞作】 ※こちらはweb版(改稿前)です※ ※書籍版は『初恋×星空シンバル』と改題し、web版を大幅に改稿したものです※ ◇◇◇冴えない中学一年生の女の子の、部活×恋愛の青春物語◇◇◇ 主人公、海茅は、フルート志望で吹奏楽部に入部したのに、オーディションに落ちてパーカッションになってしまった。しかもコンクールでは地味なシンバルを担当することに。 クラスには馴染めないし、中学生活が全然楽しくない。 そんな中、海茅は一人の女性と一人の男の子と出会う。 シンバルと、絵が好きな男の子に恋に落ちる、小さなキュンとキュッが詰まった物語。

黒地蔵

紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

未来スコープ  ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―

米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」 平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。 それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。 恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題── 彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。 未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。 誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。 夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。 この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。 感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。 読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。

処理中です...