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2 あたしをスカウト!? (3)
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「お待たせお待たせ。ちょびっとお時間、ちょうだいね」
あれからあたしは近くにある公園に連れてこられて、そのまま5分くらい待った頃かな。自転車に乗った、制服姿の女の子がやって来た。
この人は、今年卒業した月下夏姫(つきしたなつき)ちゃんさん。勉強も運動も学校1でみんなの憧れの的だった、モミジちゃんのお姉さんなの。
「キミは、陽上花美ちゃん、だったっけ。授業があるのにゴメンね」
「それは、いーんですけど……。何のごよーなんですか?」
夢のお話をしていたら、急にお電話をしてお姉さんに紹介する。謎が多すぎて、ちょっと頭が痛くなってきたよぉ……。
「あーうん、全部これから説明するよ。陽上ちゃん、落ち着いて聞いてね」
明るいお姉さんなナツキちゃんさんの目が、真剣になった。
にゅぅ。きっとこれから、大事なコトが出てるんだ。
「まずは、1番大事な部分から。陽上ちゃん、今朝の夢なんだけどね」
「は、はぃ……」
「あれは、夢じゃないんだよ。あれは現実に起きた、『アコヘン』っていうものなんだ」
ふぇ?
夢じゃ、ない?
「ちょびっと難しい言葉を使うとね。小学4年生~6年生は人生で最も影響を受けやすい時期であり、ソレが最も心に作用してしまう時期でもあるの。そんな時に例えば、『芸能人の○○みたいになりたい!』とか『カッコいい○○ちゃんのようになりたい!』とか、だね。そういう憧れの気持ちが大きくなるともう1人の自分が現れて、『そういう自分になりたいんだよね? 変えてあげるよ』と言ってくるの」
「………………」
「そこで『はい』と答えると、なんとまぁ実際にそうなっちゃう。これが、憧れの自分に変化してしまう――アコヘン、って呼ばれてる現象なんだよ」
「………………。ぇぇー……。ええええー……」
そんなぁ。じょーだん、だよね。
ちょっと遅い、エープリルフール、なんだよね?
「信じられないと思うけど、事実なんだよ。じゃないと紅葉が、まだ聞いてもない夢の話をできないよね?」
「ぁっ。そだ!」
モミジちゃんとナツキちゃんさんが嘘をついてるなら、続きをズバリ正解できない。
それにわざわざ、騙すためだけに学校を抜け出さないよね。
「ふ~、わかってもらえてなによりだ。んじゃ続けるね?」
「は、はひ。お願いします」
「この世の中には、アコヘンってものがあります。そしてアコヘンというものは、とっても危険です。それはなぜだと思いますか?」
「………………ぅーん。さっぱりですー」
憧れてる自分にずっとなれるのは、素敵なコト。危険なトコなんて、どこにも見つからないなぁ。
「ナツキちゃんさん。どーして、なんですか?」
「答えは、簡単。憧れてる自分に、『ずっとなってしまう』からだよ」
ナツキちゃんさんはウィンクをして、「多分、陽上ちゃんがプラスと思ってるところが問題なんだよ」って小さく笑った。
「1度『はい』をするともう1人の自分が性格を綺麗さっぱり変えちゃって、自分の力では絶対に戻せなくなる。つまり本来の自分が完全になくなっちゃうワケで、さすがにコレはマズイよね?」
「そ、そっか。そ、ですね」
違う自分になったら、今の自分は少しも残らない。ず~っと別人になっちゃうのは、大変なコトだ。
「だから『アコヘンを元に戻せる力を持つ一族』が、裏でそういう小学生を探して元に戻してるの。んで、その一族がアタシ達なんだよ」
「……ナツキちゃんさんたちは、ヒーローなんだ……。はぇー……!」
「アタシ達のご先祖様が、誰か――言い伝えでは『神様から授けられた』って言われてるんだけどね。それ以降月下家に生まれた人間には不思議な力が宿るようになって、日夜活動中。家族や親戚は全国各地に広がって、密かに活躍してるんだよ」
ふぇー。色んなところで、こっそりと人を助けてるんだぁ。
家族さんと親戚さん、カッコいいなぁ。
「はぇぇー。こんなお話が出てくると思ってなかったから、あたしビックリして――あれれ? どーして、こんなお話をあたしにしたんですかー?」
モミジちゃんは確か、『緊急事態』って言ってた。
も、もしかして……。今朝のあたし、何か大変なコトをしちゃったのかな……?
あれからあたしは近くにある公園に連れてこられて、そのまま5分くらい待った頃かな。自転車に乗った、制服姿の女の子がやって来た。
この人は、今年卒業した月下夏姫(つきしたなつき)ちゃんさん。勉強も運動も学校1でみんなの憧れの的だった、モミジちゃんのお姉さんなの。
「キミは、陽上花美ちゃん、だったっけ。授業があるのにゴメンね」
「それは、いーんですけど……。何のごよーなんですか?」
夢のお話をしていたら、急にお電話をしてお姉さんに紹介する。謎が多すぎて、ちょっと頭が痛くなってきたよぉ……。
「あーうん、全部これから説明するよ。陽上ちゃん、落ち着いて聞いてね」
明るいお姉さんなナツキちゃんさんの目が、真剣になった。
にゅぅ。きっとこれから、大事なコトが出てるんだ。
「まずは、1番大事な部分から。陽上ちゃん、今朝の夢なんだけどね」
「は、はぃ……」
「あれは、夢じゃないんだよ。あれは現実に起きた、『アコヘン』っていうものなんだ」
ふぇ?
夢じゃ、ない?
「ちょびっと難しい言葉を使うとね。小学4年生~6年生は人生で最も影響を受けやすい時期であり、ソレが最も心に作用してしまう時期でもあるの。そんな時に例えば、『芸能人の○○みたいになりたい!』とか『カッコいい○○ちゃんのようになりたい!』とか、だね。そういう憧れの気持ちが大きくなるともう1人の自分が現れて、『そういう自分になりたいんだよね? 変えてあげるよ』と言ってくるの」
「………………」
「そこで『はい』と答えると、なんとまぁ実際にそうなっちゃう。これが、憧れの自分に変化してしまう――アコヘン、って呼ばれてる現象なんだよ」
「………………。ぇぇー……。ええええー……」
そんなぁ。じょーだん、だよね。
ちょっと遅い、エープリルフール、なんだよね?
「信じられないと思うけど、事実なんだよ。じゃないと紅葉が、まだ聞いてもない夢の話をできないよね?」
「ぁっ。そだ!」
モミジちゃんとナツキちゃんさんが嘘をついてるなら、続きをズバリ正解できない。
それにわざわざ、騙すためだけに学校を抜け出さないよね。
「ふ~、わかってもらえてなによりだ。んじゃ続けるね?」
「は、はひ。お願いします」
「この世の中には、アコヘンってものがあります。そしてアコヘンというものは、とっても危険です。それはなぜだと思いますか?」
「………………ぅーん。さっぱりですー」
憧れてる自分にずっとなれるのは、素敵なコト。危険なトコなんて、どこにも見つからないなぁ。
「ナツキちゃんさん。どーして、なんですか?」
「答えは、簡単。憧れてる自分に、『ずっとなってしまう』からだよ」
ナツキちゃんさんはウィンクをして、「多分、陽上ちゃんがプラスと思ってるところが問題なんだよ」って小さく笑った。
「1度『はい』をするともう1人の自分が性格を綺麗さっぱり変えちゃって、自分の力では絶対に戻せなくなる。つまり本来の自分が完全になくなっちゃうワケで、さすがにコレはマズイよね?」
「そ、そっか。そ、ですね」
違う自分になったら、今の自分は少しも残らない。ず~っと別人になっちゃうのは、大変なコトだ。
「だから『アコヘンを元に戻せる力を持つ一族』が、裏でそういう小学生を探して元に戻してるの。んで、その一族がアタシ達なんだよ」
「……ナツキちゃんさんたちは、ヒーローなんだ……。はぇー……!」
「アタシ達のご先祖様が、誰か――言い伝えでは『神様から授けられた』って言われてるんだけどね。それ以降月下家に生まれた人間には不思議な力が宿るようになって、日夜活動中。家族や親戚は全国各地に広がって、密かに活躍してるんだよ」
ふぇー。色んなところで、こっそりと人を助けてるんだぁ。
家族さんと親戚さん、カッコいいなぁ。
「はぇぇー。こんなお話が出てくると思ってなかったから、あたしビックリして――あれれ? どーして、こんなお話をあたしにしたんですかー?」
モミジちゃんは確か、『緊急事態』って言ってた。
も、もしかして……。今朝のあたし、何か大変なコトをしちゃったのかな……?
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