あこがれチェンジ!

柚木ゆず

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10 あたし達の感謝の気持ちと、事件発生! (2)

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「そこのキミ達っ。ちょっといいかなっ?」

 パンケーキのお店を出て、次はどこに行こうかなって相談をしていた時でした。
 眼鏡をかけた40歳くらいの男の人が、慌てた様子でお声をかけてきた。

「んにゅ? なんですかー?」
「この子っ。この写真の真ん中に映っている子を、どこかで見なかったかいっ?」

 男の人のスマートホンにうつっていたのは、家族写真。
 この人さんと――ぁ。さっきユーナにぶつかった女の人がいて、その間にいるのは髪の毛が少し短くてニキビがある男の子。年齢はたぶん、あたしたちと同じくくらいだ。

「ぅやぁ。あたしは、ありません、です。みんなはどーかなぁ?」
「ん~。わたしも、おみかけしてませんね~」
「……ボクも。服屋でもCDショップでも本屋でも、見てない」
「私も、一度も目にしてはいません。もしかして彼は少し前に店内放送で呼ばれていた、小学5年生の笹本虎彦(ささもととらひこ)さんでしょうか?」
「うん、そうなんだよ……。家族で買い物をしていたら、息子が急にいなくなってしまったんだ……」

 トラヒコくんのお父さんは、つらそうなお顔で頷いた。
 そういえばパンケーキのお店に向かってる時、お店の放送が流れてた。だからあの時、ママさんはキョロキョロしてて急いでたんだね。

「家族3人で雑貨屋を見ていたら、いつの間にかいなくなっててね……。妻とあちこち探しても見つからなくて、放送で呼びかけてもサービスカウンターに来ないんだよ……」
「にゅにゅぅ、そーなんですかぁ……。トラヒコくんには、放送が聞こえてないのかなぁ……?」
「……店内放送は音が大きいし、どこにいても聞こえるようになってる。多分、聞こえてはいるはず」
「だったら、不安にさせてしまいますが~。誘拐、なのかもしれませんね~……」

 この建物は7階もあるけど案内ボードがいろんなところにあって、放送を聞いたらあたしたちでもサービスカウンターに行ける。
 同い年のトラヒコくんが来ないのは、ちょっとおかしいよねぇ……。

「……この店の出入口と駐車場には、防犯用のカメラがあるはず。確認、しましたか?」
「ここのスタッフさんに説明をして、さっき調べてもらったよ。出入口にも駐車場にも、不審な人も虎彦もいなかったんだ」

 そっかぁ。だったら一安心で、誘拐は違うね。
 じゃあ……。トラヒコくんは、どうしたのかな……?


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