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第7話 マティルドが知らないところでは 俯瞰視点(2)
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「エレノオールの私室にもマティルドの私室にも、その他エレノオールが隠せる可能性がある場所にも、該当するものはありませんでした」
「……そうでしたか。やはり、そうなってしまいましたか」
私室などのその気になれば第三者が触れる場所には、置いていないと考えていました。とはいえソコにあれば円滑に話を進められるため、ルッゾは――ベンジャマンは、捜索を依頼していたのです。
「やはり……? 卿は予測されて……?」
「9割9分ないと考えておりました。故に本命は別にありまして、あまりに礼を失していると承知で口に致します」
「……そ、そこまでのことですか……。し、して、いったい……?」
「本日は夜、ベンジャマンを加えてディナーをされる予定となっておりましたね?」
「え? ええ。そ、そうですね」
前回会った際にベンジャマンが『一緒に食事をしたい』と言っていたらしく、エレノオールことマティルドの提案で設けられていました。
「それが、なにか?」
「…………その際に、エレノオール嬢の食事に睡眠薬を混ぜていただきたいのです」
どこにもないのであれば、肌身離さず持っているはず。そう踏んでの提案でした。
「意識のある状態で拘束しようとした場合、自由を奪う前に件の宝石を壊されてしまうかもしれない。二度と、元に戻れなくなるかもしれない。故に睡眠薬で眠らせ、その間に身体を調べるのです」
「……すいみん……。できかねます! あまりに不透明だ!」
睡眠薬は10年前にこの国に渡って来た新しい薬で、安全だとされているものの、不安視する者は大勢いました。ディオスもそのひとりで、娘にリスクを負わせるなんて言語道断でした。
「娘が最初の被害者になるかもしれないのですぞ!? できるはずがない!」
「わたしにも息子と娘がおり、子を案じるお気持ちは分かります。故に、こちらを御用意いたしました」
「……これは、睡眠薬の……成分の、分析表……? なぜこのようなものが……!?」
「ご内密にお願い致します。我が家(いえ)では睡眠薬を用いた殺害未遂が発生したことがありましてね、その関係で副作用などが本当にないのか調べたのですよ」
ルッゾ達が暴走に気付いた時には睡眠薬を盛っており、急いで吐かせたもののそれなりの量は吸収されてしまっていました。そこで睡眠薬が誕生した国に赴き、情報を集めたのです。
「製造方法は秘匿されておりますが、原材料はどれも野草――心身への害はまったくないもので作られており、加工後もそちらは変わらないとのこと。大量の服用で死に至るのは銀杏に近い成分が含まれているからでして、通常の服用では害はまったくありません」
「……………………」
「実際わたしの義妹に当たる者が通常量を多く超える量を摂取してしまったものの、およそ4年経っても一切害は出ておりません。故に安全と太鼓判を捺せますが――それでもご不安でしょう。そこで、こういったものをご用意しました。
「? そちらは………………っ!? 誓約書!?」
――万が一少しでも異変が残るようならば、お詫びとして要求を何でも受け入れる――。
――万が一何も発見できなければ、お詫びとして要求を何でも受け入れる――。
両者の間にあるテーブルに置かれた書類には、そういった内容が記されていました。
「……な、なぜ、貴方はここまで……?」
「当主としては、平然と人を傷付け欺ける者を迎えたくない。個人としては、そっくりな者を見過ごせない。それらが、しつこく介入しなければならない理由です」
「……………………」
「入れ替わりについても睡眠薬の安全性についても、絶対的な自信があるからこその行動です。荒唐無稽の中、受け入れてはいただけませんか?」
「……………………承知しました、受け入れましょう。ただし、この文章は要りませんよ」
――万が一少しでも異変が残るようならば、お詫びとして要求を何でも受け入れる――。
――万が一何も発見できなければ、お詫びとして要求を何でも受け入れる――。
そういった内容が、削除されました。
「発端はこちら。睡眠薬の件があるとはいえ、それはあまりに不公平です」
「……卿。やはり貴男は、思っていた通りの御人だ」
「その言葉、そのままお返ししますよ。では準備に移りましょう」
そうしてディオスは、自ら大急ぎで手配を行って――
「……そうでしたか。やはり、そうなってしまいましたか」
私室などのその気になれば第三者が触れる場所には、置いていないと考えていました。とはいえソコにあれば円滑に話を進められるため、ルッゾは――ベンジャマンは、捜索を依頼していたのです。
「やはり……? 卿は予測されて……?」
「9割9分ないと考えておりました。故に本命は別にありまして、あまりに礼を失していると承知で口に致します」
「……そ、そこまでのことですか……。し、して、いったい……?」
「本日は夜、ベンジャマンを加えてディナーをされる予定となっておりましたね?」
「え? ええ。そ、そうですね」
前回会った際にベンジャマンが『一緒に食事をしたい』と言っていたらしく、エレノオールことマティルドの提案で設けられていました。
「それが、なにか?」
「…………その際に、エレノオール嬢の食事に睡眠薬を混ぜていただきたいのです」
どこにもないのであれば、肌身離さず持っているはず。そう踏んでの提案でした。
「意識のある状態で拘束しようとした場合、自由を奪う前に件の宝石を壊されてしまうかもしれない。二度と、元に戻れなくなるかもしれない。故に睡眠薬で眠らせ、その間に身体を調べるのです」
「……すいみん……。できかねます! あまりに不透明だ!」
睡眠薬は10年前にこの国に渡って来た新しい薬で、安全だとされているものの、不安視する者は大勢いました。ディオスもそのひとりで、娘にリスクを負わせるなんて言語道断でした。
「娘が最初の被害者になるかもしれないのですぞ!? できるはずがない!」
「わたしにも息子と娘がおり、子を案じるお気持ちは分かります。故に、こちらを御用意いたしました」
「……これは、睡眠薬の……成分の、分析表……? なぜこのようなものが……!?」
「ご内密にお願い致します。我が家(いえ)では睡眠薬を用いた殺害未遂が発生したことがありましてね、その関係で副作用などが本当にないのか調べたのですよ」
ルッゾ達が暴走に気付いた時には睡眠薬を盛っており、急いで吐かせたもののそれなりの量は吸収されてしまっていました。そこで睡眠薬が誕生した国に赴き、情報を集めたのです。
「製造方法は秘匿されておりますが、原材料はどれも野草――心身への害はまったくないもので作られており、加工後もそちらは変わらないとのこと。大量の服用で死に至るのは銀杏に近い成分が含まれているからでして、通常の服用では害はまったくありません」
「……………………」
「実際わたしの義妹に当たる者が通常量を多く超える量を摂取してしまったものの、およそ4年経っても一切害は出ておりません。故に安全と太鼓判を捺せますが――それでもご不安でしょう。そこで、こういったものをご用意しました。
「? そちらは………………っ!? 誓約書!?」
――万が一少しでも異変が残るようならば、お詫びとして要求を何でも受け入れる――。
――万が一何も発見できなければ、お詫びとして要求を何でも受け入れる――。
両者の間にあるテーブルに置かれた書類には、そういった内容が記されていました。
「……な、なぜ、貴方はここまで……?」
「当主としては、平然と人を傷付け欺ける者を迎えたくない。個人としては、そっくりな者を見過ごせない。それらが、しつこく介入しなければならない理由です」
「……………………」
「入れ替わりについても睡眠薬の安全性についても、絶対的な自信があるからこその行動です。荒唐無稽の中、受け入れてはいただけませんか?」
「……………………承知しました、受け入れましょう。ただし、この文章は要りませんよ」
――万が一少しでも異変が残るようならば、お詫びとして要求を何でも受け入れる――。
――万が一何も発見できなければ、お詫びとして要求を何でも受け入れる――。
そういった内容が、削除されました。
「発端はこちら。睡眠薬の件があるとはいえ、それはあまりに不公平です」
「……卿。やはり貴男は、思っていた通りの御人だ」
「その言葉、そのままお返ししますよ。では準備に移りましょう」
そうしてディオスは、自ら大急ぎで手配を行って――
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