気付いてくれたのは、わたしを嫌っていたはずの婚約者でした

柚木ゆず

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第7話 マティルドが知らないところでは 俯瞰視点(1)

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「卿……。一体、どうされたのですか……!?」

 エレノオールとベンジャマンの外出を見送っていたら、アポなしで当主が来訪。しかも二人きりで大事な話をしたいと言い出した。
 そのためエレノオールの父ディオスは終始混乱しており、応接室で対面するや目を瞬かせました。

「数々のご無礼、お許し願いたい。……実はですな、マティルド嬢に関してお伝えしたいことがあるのですよ」
「あの件でしたら、ご安心を。アンナも内密にすると言ってくれておりまして、外部に露見する心配はございませんよ」
「いえ、言及したいのはその点ではないのですよ。わたしがお伝えしたいのは、軟禁状態にあるマティルド嬢の『中身』についてです」
「なか、み……? まさか卿も、あの戯言を信じていらっしゃると……!?」

 ベンジャマンはマティルドを案じていて、一度だけ会って話をしています。
 ただその際マティルドはエレノオールだと繰り返し、ベンジャマンは呆れて去ったと報告がありました。
 信じているとは夢にも思っておらず、たまらず身を乗り出しました。

「偶然にも息子はエレノオール嬢とマティルド嬢を区別できましてね、その言葉には説得力がありわたしも同意しているのですよ。妻も含め、我がロルードル家の人間は入れ替わりを信じております」
「…………。………………」
「マティルド嬢の肉体を持つ者が訴えた、赤色の宝石らしき物体。そちらが見つかれば信憑性も生まれるでしょう」
「…………そ、そうですな。い、いやぁ。ですが……。そんな……」
「おかしなことを言い出す人間が増えて、混乱されているでしょう? ご安心を、わたしもそうでした」

 入れ替わりなんてあるはずがない――。ベンジャマンの父ルッゾも、信じると言われて最初は耳を疑いました。

「しかしながら言い分を聞いて息子を信じるようになり、同時に、『罪なき者を助けたい』『罪を犯しき者に罰を与えたい』と強く思うようになりました」

 ルッゾは妻の暴走をベンジャマンと共に止め、動機を知って激しく怒った常識人。目に見えている罪は放置できない、そう考えていました。

「赤色の宝石を探して欲しい。仮にその依頼に他意があったとしても、レティアズ家には害が発生しませんよね?」
「え、ええ。しませんな」
「故に、お願い致します。赤い宝石の捜索を」
「…………承知しました。エレノオールの自室――マティルドの部屋も含め、調べさせましょう」

 そうして捜索が幕を開け、2時間ほどが経過したでしょうか。ふたりのもとに、こういった報告が入ったのでした。


「そうか、分かった。……卿。そういったものは、発見できなかったそうです」

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