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第15話 再会、と マエリス視点(2)
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「そうなの。これがさっき言っていた、いつも身に着けているお守り。ランヴァードさん――お父様の旧友の、ランヴァード・ロックスさんという方がくださったの」
「へぇ~、そうなんだ。ロックスさん」
「何かある――辛いことがある時はいつも励ましの力があるものをくださって、これは一番最初の贈り物なの。……わたし達の夢は叶わないと知ったあとから今まで、いつもそうだった。心が揺さぶられる出来事があった時は、いつも触れていた。触れるとなぜか温かく感じてね、安心できて心が落ち着くの」
「そっか、それはよかった。何もできない俺の代わりに、支えてくださる方がいてホッとしてるよ」
「オスカーも、ずっと幸せを願ってくれていたんでしょ? その想いは、絶対にわたしを助けてくれているわ――」((え……?))
それは、三日月型のネックレスの話になった時のことでした。微苦笑を浮かべているオスカーが、左手で右の眉毛に触れているのに気づいたのです。
((左の手で、右眉毛に触れる。これって…………隠し事をしている時に出るクセ))
幼馴染しか知らない、オスカーの秘密の一つ。彼が気を抜いている時かつ本音を話していない時に、無意識にそうなるんです。
((ずっと幸せを願ってくれていた…………そこに関して、本音以外があるはずがない。ということは…………隠し事をしているのは、あの部分))
何もできない俺の代わりに、支えてくださる方がいてホッとしてるよ。
これが、該当部です。
((三日月のネックレスに、隠し事……。それって、もしかしなくても…………。それは、有り得ませんね))
真っ先に頭を過ぎった可能性。さすがにそれは違います。
((ランヴァードさんは物心つく前のわたしを抱いてくださったこともある、お父様の旧友なんです。それがそんな――…………。でも……))
『……お父様。ランヴァードさんは、貴族ではありませんよね?』
『うむ。貴族ではないよ』
『?? どうかしたのか……?』
『はい。こちらは、貴族でないとオーダーできないのですよ』
貴族ではないランヴァードさんは、あの速さであの贈り物はできません。
『ふしぎ、ですね……?』
『あ、あれじゃないかなっ? 私のように感銘を受けた貴族がいてだな、最近繋がりが出来てその人物にオーダーを頼んだんじゃないかな? そうに違いない! というか、それしかないだろう!』
『…………そう、ですね。それしか、ありえませんよね』
あり得ないものの、親友であるお父様にそんな出来事を伏せているとは思えない。
それに。
それに、です。
なにより、おかしな点があって――
((わたしは、ランヴァードさんにお会いしたことがありません))
――お父様がそう仰るので、わたしはランヴァードさんは当然存在していると思っていました。
ですので『多忙で会えない』で納得していましたが、よくよく考えるとおかしいんです。あまりにも不自然なんです。
((わたしに辛い出来事が会った時は、その直後に必ずお父様と会っている))
世界中を飛び回っている人が、そこまでタイミングよく帰国されているとは思えません。それにそんなにもわたしを想ってくださっている方なら、一度くらいそのまま会いに来てくださるはずなんです。
((……隠し事……。貴族……。存在……。そして……))
『そっ、そんなことよりマエリス! 不思議と言えばだ、あれはなんなんだろうなっ?』。
あの時の、お父様の慌てっぷり。
それらを合わせると――この答えへと、繋がります。
((…………ランヴァードさんは、オスカー))
「へぇ~、そうなんだ。ロックスさん」
「何かある――辛いことがある時はいつも励ましの力があるものをくださって、これは一番最初の贈り物なの。……わたし達の夢は叶わないと知ったあとから今まで、いつもそうだった。心が揺さぶられる出来事があった時は、いつも触れていた。触れるとなぜか温かく感じてね、安心できて心が落ち着くの」
「そっか、それはよかった。何もできない俺の代わりに、支えてくださる方がいてホッとしてるよ」
「オスカーも、ずっと幸せを願ってくれていたんでしょ? その想いは、絶対にわたしを助けてくれているわ――」((え……?))
それは、三日月型のネックレスの話になった時のことでした。微苦笑を浮かべているオスカーが、左手で右の眉毛に触れているのに気づいたのです。
((左の手で、右眉毛に触れる。これって…………隠し事をしている時に出るクセ))
幼馴染しか知らない、オスカーの秘密の一つ。彼が気を抜いている時かつ本音を話していない時に、無意識にそうなるんです。
((ずっと幸せを願ってくれていた…………そこに関して、本音以外があるはずがない。ということは…………隠し事をしているのは、あの部分))
何もできない俺の代わりに、支えてくださる方がいてホッとしてるよ。
これが、該当部です。
((三日月のネックレスに、隠し事……。それって、もしかしなくても…………。それは、有り得ませんね))
真っ先に頭を過ぎった可能性。さすがにそれは違います。
((ランヴァードさんは物心つく前のわたしを抱いてくださったこともある、お父様の旧友なんです。それがそんな――…………。でも……))
『……お父様。ランヴァードさんは、貴族ではありませんよね?』
『うむ。貴族ではないよ』
『?? どうかしたのか……?』
『はい。こちらは、貴族でないとオーダーできないのですよ』
貴族ではないランヴァードさんは、あの速さであの贈り物はできません。
『ふしぎ、ですね……?』
『あ、あれじゃないかなっ? 私のように感銘を受けた貴族がいてだな、最近繋がりが出来てその人物にオーダーを頼んだんじゃないかな? そうに違いない! というか、それしかないだろう!』
『…………そう、ですね。それしか、ありえませんよね』
あり得ないものの、親友であるお父様にそんな出来事を伏せているとは思えない。
それに。
それに、です。
なにより、おかしな点があって――
((わたしは、ランヴァードさんにお会いしたことがありません))
――お父様がそう仰るので、わたしはランヴァードさんは当然存在していると思っていました。
ですので『多忙で会えない』で納得していましたが、よくよく考えるとおかしいんです。あまりにも不自然なんです。
((わたしに辛い出来事が会った時は、その直後に必ずお父様と会っている))
世界中を飛び回っている人が、そこまでタイミングよく帰国されているとは思えません。それにそんなにもわたしを想ってくださっている方なら、一度くらいそのまま会いに来てくださるはずなんです。
((……隠し事……。貴族……。存在……。そして……))
『そっ、そんなことよりマエリス! 不思議と言えばだ、あれはなんなんだろうなっ?』。
あの時の、お父様の慌てっぷり。
それらを合わせると――この答えへと、繋がります。
((…………ランヴァードさんは、オスカー))
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