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第16話 ランヴァード・ロックス 俯瞰視点
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((……こんなにも悪いことばかり続かなくても、いいじゃないか……))
あの日の僕は、自分の部屋で天を仰いでいた。
いくら努力をしても、マエリスと結婚できないと思い知らされて。その傷がまだ癒えていないのに、婚約の話が浮上してしまった。
それだけでも精神的にキツイのに、トドメに『マエリスと関わるな』がやって来た。
比喩じゃなくって、目の前が真っ暗になった。
((……婚約の時点で酷く落ち込んでいたのに、接触もダメなんて知ったら絶望するに決まっている……。だからせめて、コッソリ手紙のやり取りでもできればいいんだけど……。でき、ないよな……))
あちらはマエリスをかなり警戒しているものの、四六時中傍で見張っているわけではないからそのくらいはできる。
ただ……。
手紙、文字だけでしかやり取りができない。そんな関係を続けていると、『会いたい』という気持ちがマエリスの中で強くなって、悲しみと苦しみが湧いてくるようになってしまうのだ。
((……そうなるくらいなら、文通をしない方がマシだ……))
長年一緒にいた幼馴染だから分かる。どちらも心にダメージがあるものの、まだその選択の方が少ないのだと。
((……こちらの我が儘を通すわけには、いかないからな。諦めよう))
文字にだって心を込められて、存在を感じられる。そいつは僕の考えだ。
大切な人を苦しめてまで我を通すなんてあり得なくて、『婚約によって接触を禁じられ、手紙すら送れなくなってしまった』というメッセージを父上に届けてもらったのだった。
((……これで、いい。マエリス、よい人生を送れますように。これからはここから、君の幸せを願っているよ))
傍観者となると決め、離れることにした――のだけど……。不安心が、そうさせたのだろうか? その日の夜に、マエリスが散々な人生を送る夢を――辛い出来事があって心が折れ、絶望してしまう夢を見てしまったのだった。
((…………もしそうなってしまったら…………そんなのは、嫌だ……。僕に……なにかできることは、ないのか……?))
接触できないし手紙も渡せない、そんな自分にできることはないのか?
すぐにその可能性について考え始め、考えて、考えて、考えて……。頭が割れそうになるほど考えて、その末にひとつの手段を思い付く。
((別人になって贈り物をしよう))
文字とおんなじで、物にも気持ちを込められる。僕は、そう思っていた。
そこで『会いたい』とならないように別人を名乗って――存在しない『おじさんの旧友ランヴァード』を名乗って、心身を護ってくれる言い伝えがある装身具に願いを込めて贈り――。以後は何かあった際はおじさんからこっそり連絡を貰い、その問題に合わせた念を込めたものをプレゼントしていったのだった。
〇〇〇
「……オスカー、連絡が届いた。マエリス君の夫が――ジョルロアが、結婚前からずっと浮気をしていたそうだ……」
「なんですって!? 大変だ……。急いで贈らないと」
有難いことに、マエリスはランヴァードからの贈り物を励みにしてくれている。だから僕はすぐさま動き出し――いつものところは混んでいてオーダーできなかったため、父の古い友人に無理を言って注文をしたのだった。
あの日の僕は、自分の部屋で天を仰いでいた。
いくら努力をしても、マエリスと結婚できないと思い知らされて。その傷がまだ癒えていないのに、婚約の話が浮上してしまった。
それだけでも精神的にキツイのに、トドメに『マエリスと関わるな』がやって来た。
比喩じゃなくって、目の前が真っ暗になった。
((……婚約の時点で酷く落ち込んでいたのに、接触もダメなんて知ったら絶望するに決まっている……。だからせめて、コッソリ手紙のやり取りでもできればいいんだけど……。でき、ないよな……))
あちらはマエリスをかなり警戒しているものの、四六時中傍で見張っているわけではないからそのくらいはできる。
ただ……。
手紙、文字だけでしかやり取りができない。そんな関係を続けていると、『会いたい』という気持ちがマエリスの中で強くなって、悲しみと苦しみが湧いてくるようになってしまうのだ。
((……そうなるくらいなら、文通をしない方がマシだ……))
長年一緒にいた幼馴染だから分かる。どちらも心にダメージがあるものの、まだその選択の方が少ないのだと。
((……こちらの我が儘を通すわけには、いかないからな。諦めよう))
文字にだって心を込められて、存在を感じられる。そいつは僕の考えだ。
大切な人を苦しめてまで我を通すなんてあり得なくて、『婚約によって接触を禁じられ、手紙すら送れなくなってしまった』というメッセージを父上に届けてもらったのだった。
((……これで、いい。マエリス、よい人生を送れますように。これからはここから、君の幸せを願っているよ))
傍観者となると決め、離れることにした――のだけど……。不安心が、そうさせたのだろうか? その日の夜に、マエリスが散々な人生を送る夢を――辛い出来事があって心が折れ、絶望してしまう夢を見てしまったのだった。
((…………もしそうなってしまったら…………そんなのは、嫌だ……。僕に……なにかできることは、ないのか……?))
接触できないし手紙も渡せない、そんな自分にできることはないのか?
すぐにその可能性について考え始め、考えて、考えて、考えて……。頭が割れそうになるほど考えて、その末にひとつの手段を思い付く。
((別人になって贈り物をしよう))
文字とおんなじで、物にも気持ちを込められる。僕は、そう思っていた。
そこで『会いたい』とならないように別人を名乗って――存在しない『おじさんの旧友ランヴァード』を名乗って、心身を護ってくれる言い伝えがある装身具に願いを込めて贈り――。以後は何かあった際はおじさんからこっそり連絡を貰い、その問題に合わせた念を込めたものをプレゼントしていったのだった。
〇〇〇
「……オスカー、連絡が届いた。マエリス君の夫が――ジョルロアが、結婚前からずっと浮気をしていたそうだ……」
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