貴方は人を愛せなくなっていたはずですよね?

柚木ゆず

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第17話 ありがとう マエリス視点

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「?? マエリス? どうかした?」
「…………ううん、なんでもない。オスカー本当にありがとう」

 制約をすり抜けて、見守ってくれていたのかもしれない。わたしのために、意図的にその方法を取ってくれたのかもしれない。
 正解は分かりませんが、彼が動いてくれていたこと、だけはハッキリと分かります。

((オスカー、ありがとう))

 できることなら、『も』は外したかった。ですが今も伏せているということは、そういうことなのでしょう。
 抜くのは心の中だけにして、感謝を伝えました。

「大したことはできていませんが、僕も一緒に貰っておきます。どういたしまして」
「受け止めてくれて、ありがとう。…………うん、やっぱり、そうですね」
「? やっぱり、そう? どうしたの?」
「…………オスカー、あのね。わたし、貴方と一緒に居たい。ずっと」

 明日も明後日も、その先も。この命が尽きるまで、隣で居たい。

「貴方とお喋りしていたらね、そんな気持ちが溢れてきちゃった。言葉にしたくなっちゃった」
「……そっか、そうなんだ。ちょっと先を越されちゃったな」

 ブルーの瞳が柔らかく細まり、わざとらしいため息が漏れました。

「僕もおんなじ。話しをしている間に、目の前にいる人がいない日常が考えられなくなった。楽しくて、嬉しくて、幸せで幸せで……。この時間をまた失いたくない、と強く思っているよ」
「お別れなんて、二度としたくない。オスカーがいい。オスカーじゃないと、駄目」
「そうだね。二度とあんな思いはしたくない。マエリスがいい。マエリスじゃないと、駄目なんだ」
「……だから」
「……だから」

 わたし達は示し合わせたように、イスから立ち上がり――

「僕、マエリスが好きだ。世界で一番大好きだ。……結婚しよう」
「わたしも。オスカーが好き。大好き。……結婚しましょう」

 ――あの日告げた言葉にプラスして、想いを伝え合いました。

「……あの頃2人で、色んなことを描いてたよね」
「……そうだったわね」

 一緒に〇〇をしたい。一緒に〇〇に行きたい。
 たくさんの未来図を描いていました。

「今度こそ、実現させよう。全部」
「ええ。あれもこれも、全部。実現させましょう」

 わたしは――オスカーも、あの日のやり取りは全部覚えています。
 あの頃は子どもだったこともあって、願望は次々と湧いて来て。山のようにありますし、実現が難しいものだってあります。
 でも。
 今のわたし達なら全部できてしまえる、そう思えるんですよね。

「僕達は一度、立ち止まってしまったけれど」
「また、走り出す時が来たね」
「今握ったその手は、もう離させないよ」
「わたしだって。絶対に離さないんだから」

 両手の指と指を絡め合いながら誓い、今のわたし達はそう・・しても構いません。唇と唇を重ね合い、愛を贈り合ったのでした――。


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