困った時だけ泣き付いてくるのは、やめていただけますか?

柚木ゆず

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第3話 久しぶりの再会 アン視点(1)

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「よくやったぞアン! さすがわたしの娘だ!」

 馬車で4時間半ほど揺られ、生家であるフェリルーザ家のお屋敷に着いてすぐのことだった。エントランスに入ると、金縁の眼鏡をかけた肥満体型の男性が――ケヴィックお父様が飛んで来て、上機嫌で拍手をし始めた。

「裏切られた時は目の前が真っ暗になったが、いやぁよかった! 無事に心変わりの心変わりをさせられてよかった! なあアン! そういえばイブライム殿にどんな手を使ったのだ!? 上手いこと身体を重ねられたのか? そうなのだろうっ? なにが決め手となったのだ!?」
「……ご想像にお任せします」
「む、ああそうか、そうだな! 形はどうであれ初夜の話はしにくかったな! 気になるところではあるが、まあいいだろう。とにかく、上手くいってよかった! その調子でどんどん肉体を使って攻め続け、できるだけ早く身ごもるのだぞ! 絶対切れぬ最大のを作るためにな!」

 お父様は以前からこういったことを平然と口にする人なので、今更あれやこれといった感情を抱きはしない。今回も淡々と喜ぶ姿を見つめ、そうしていると、ふくよかな身体を更に揺らし始めた。

「いやぁ、いやぁ……! 素晴らしい! 客観的に見ても上玉の顔や大きな乳や美しい形の尻! 最高の武器を産んだクラハには感謝しないといけないな! クラハもあの世で喜んでいることだろうっっ! 最高の貢献材料を遺せたのだからな!」
「……そう、かもしれませんね」

 モラルが破綻している人の発言を気にするのは、時間の無駄。同じくいつものように淡々と反応をして、みたび大笑いを始めて――

「お父様。お願いがございます」

 ――またまた出始めた喜び声を、わたしが遮った。
 こういった時この人は、1時間以上も平気でこんなことを続けてしまう。これ以上は付き合っていられないので、本題に入ることにした。

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