わたしとの約束を守るために留学をしていた幼馴染が、知らない女性を連れて戻ってきました

柚木ゆず

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第25話 幼馴染2人のその後~リュクレースの場合・その7~ リュクレース視点(4)

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「ええ、リュクレース様。手紙の送り主はソフィー・ヤリュータレアス様だと分かっても、現状では罪に問えませんね」
「……はい。そうなのです」

 犯人特定の根底にある、呪いなんて存在しない。そちらは証左となる日記が存在するにはしますが、こういったものは裁判の場では明確な証拠にはならないのです。いくら実例があったとしても。
 ですので『犯人』もしくは『犯人の協力者』という二択すら認めてもらえず、否定をされたらあちらの主張が認められてしまうのです。

「一応、筆跡検定を依頼しておりますが……。どの手紙も代筆でしょうし、そちらも頼りにはならないでしょう」
「そこまで愚かではないでしょうね。となると、絶対的な証拠か現行犯で押さえるしかありませんね」

 そのいずれかがあれば、呪いなしを証明できなくても罪に問えます。これから狙ってゆくのは、そのふたつですね。

「格上の侯爵家相手の達成は至難でしょうが、攻撃する際には大きな隙が生まれるもの。引き続き僕も力をお貸ししますしね、チャンスはありますよ」
「はい、そうですね」
「それに、犯人を特定できているのは大きい。状況は、圧倒的にこちらが有利ですよ」

 注意すべき相手が分かっていたら、攻めも守りも楽になります。伯爵家と侯爵家では大きな差はありますが、この事実はソレを埋めるだけの力がありますよね。

「ここでも、フィリベール様の存在は本当に大きいです。いつもありがとうございます」
「どういたしまして。お役に立てて光栄です」

 姿勢を正して頭を下げると、いつものように柔らかく微笑んでくださって――

「あの日お約束した、貴方の心も身体も僕が守る。それは、相手が侯爵家であっても変わりませんよ。引き続き、どうぞ安心してお過ごしください」

 ――はっきりと、そのように言葉を紡いでくださりました。

 穏やかでありながらも力強さのある瞳と声調。

 信頼している方にそんな目線やお声をいただいているのですから、不安なんてあるはずがありません。

 ――相手が分かっているのに、相手の出方を待つしかない――。

 ですのでそんな状況下であっても、わたしはこれまで通りの毎日を過ごせました。
 招待いただいた場で演奏をしたり、アルカンシェルに向けて練習をしたり。
 ソレらはお仕事や修練なのですが、同時に趣味の時間でもあるという、なんとも不思議な時間が流れていって――
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