わたしとの約束を守るために留学をしていた幼馴染が、知らない女性を連れて戻ってきました

柚木ゆず

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第36話 幼馴染2人のその後~リュクレースの場合・その9~ リュクレース視点(2)

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「あの夜、エジュトーンの森で。色々なことがありましたよね?」
「は、はい。ありました」

 フィリベール様が大好きな景色を、一緒に眺めたり。ラワトルス様が現れて、真実を知ってしまったり。
 滞在している間に、様々な出来事がありました。

「その際、ミシェルが去ったあとのことです。リュクレース様は、僕にあるお言葉をくださりましたよね?」
「そう、ですね。ありのままの気持ちを、お伝えさせていただきました」
「…………あの時僕は、貴方に、貴方の言葉と表情に救われた。後悔や自身へ疑問などあの件に関係した感情が、薄まり、やがては消えていったのですよ」
「フィリベール様……」
「ですので、僕もそう。こちらも、包み込まれていたのですよ。……実はお互い、同じ状態になっていて、『一致』していた。だからこそあのようになった。だからそれだけが発生の理由ではなくて、ふたり、が理由なのですよ」

 きっと、あの時の状況であり気持ちを思い出されているのでしょう。
 フィリベール様は静かに目を瞑り、ゆっくりと目を開け、穏やかに微笑まれました。

「どちらかが支える、ではなく、支え合う関係。そうなれたから、あの感覚と音が生まれたのだと確信していますよ」
「………………そう、ですね。はい。はいっ。わたしも、そう思います」

 わたしも同じように目を瞑り、エジュトーンの森のフィリベール様のご様子と、ステージ脇での自分自身の様子を思い出します。そうしたら……ストンと腹に落ちて、確信することができました。

「ふふふ。リュクレース嬢とフィリベールは、やはりパートナーだな」
「ええ。素敵なパートナーね」
「ですね、父上母上」
「まったくですな。素晴らしい」
「手を取り合う。素敵だわ」
「ありがとうございます。僕も、そう思っております」
「ありがとうございます。わたしも、そう思っております」

 改めて拍手をいただき、わたし達は自然と同じタイミングで見つめ合い、揃って皆さんに頷きを返します。すると更に大きな拍手をいただき、そうしているとやがて先生が用意をしてくださったお料理が運ばれてきました。
 ですので祝勝パーティーが本格的に幕を開け、もちろん、それはとっても楽しい時間となりました。

 ――たくさんの笑顔が咲いて、ず~っと咲きっぱなし――。

 2時間があっという間に過ぎて、でも、パーティーが終わったからといって楽しい時間は終わりとはなりません。
 なぜならわたし達は、パートーナー。
 公私で引き続きふたりで演奏をしたり、お喋りをしたりする。以降もこれまでと変わらない――これまで以上に幸せな時間を過ごし、約3週間の時が経過した頃のことでした。


 だから、なのでしょう。
 わたしは、とある決断をすることになるのでした。

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