悪役令嬢のお姉様が、今日追放されます。ざまぁ――え? 追放されるのは、あたし?

柚木ゆず

文字の大きさ
4 / 25

2話(1)

しおりを挟む
「…………ぅ……。あれ……?」

 目を覚ますとふかふかのベッドにいて、見慣れない天井があった。
 ここ、ウチじゃないよね? どうして、こんなところに――っっ!

「そうだっ、思い出したっ。姉さんや王太子に、はめられたんだ」

 マリナ姉さんが犯した数々の罪を背負わされ、あたしが連行されそうになった。だから逃げようとしていたんだけど、食事に睡眠薬が入っていて倒れてしまった。
 そんなところを、仮面の人に助けてもらって……。ここでこの人が、介抱してくれていたみたい。

「……あたしはあの人のおかげで、助かったんだ……。素敵な人、だったなぁ」

 ホッとしていると、そんな言葉が独りでに出てきた。
 抱えてくれる手とかけてくれる言葉は、とっても優しかった。無条件で安心できちゃうものだった。
 だからその時を思い出すと胸がトクンとして、もしかしなくても、アレ。恋をしちゃったみたい。

「だっ、だってピンチを助けてもらって、しかもあんな風にしてくれたんだもん……っ。そうならない方がおかしいってば!」

 あたしは決して、惚れやすいタイプじゃない。擬態キング(決してクイーンではない)姉さんのおかげで、むしろ最初は警戒してしまう女。
 でも、あの人は違うの。あの人からはなぜかとっても思い遣りを感じられたから、こうなってるだけなの。

「要するにこれは特別で、こうなるのは当然。なので問題なし、なんだけど……。なんで、あんな風に接してくれるんだろ?」

 繰り返すと擬態キング姉さんのせいで用心深くなっていて、ちょっとでもそういう間柄になっている異性はいない。全然思い当たる節はないんだけど、あるからなってるんだよね。

「危険を顧みず助けてくれた、仮面の方。一体誰なんだろ……?」

 ベッドの上で暫く唸り、可能性を考えていた時だった。部屋の扉がコンコンとノックされて、「入るよ」のあとガチャリと開いた。

(ぁっ。この声は、仮面の人の声っ!)

 少し高めで柔らかさのある、品に満ちた声。ソレは間違いなくおぼろげな意識の中で耳にしたもので、あたしは脊髄反射で斜め右方向――声がした方向に顔を向けた。

(あの時よりも声が通ってるから、仮面はもう外してる。どんな方なんだろ……?)

 生まれて初めて、恋をしちゃった人。あたしはドキドキしながら視線を動かし――


「ゲっ……」


 ――淑女らしからぬ声を出してしまう。

 肩くらいまで伸ばした、艶のあるサラサラの金髪。芸術品のような美しい顔の中にある、ブルーの瞳。誰かが作ったんじゃないかと思ってしまうくらい、一切の無駄がない肢体。

 そんな数多の長所を持つ男性は、公爵家の嫡男ユリオス・ガーソル先輩。今年の春から通い始めた高等学舎で2学年上のクラスにいる、学校で一番苦手な人だったのだ。
しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

私、今から婚約破棄されるらしいですよ!舞踏会で噂の的です

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
デビュタント以来久しぶりに舞踏会に参加しています。久しぶりだからか私の顔を知っている方は少ないようです。何故なら、今から私が婚約破棄されるとの噂で持ちきりなんです。 私は婚約破棄大歓迎です、でも不利になるのはいただけませんわ。婚約破棄の流れは皆様が教えてくれたし、さて、どうしましょうね?

離婚したいけれど、政略結婚だから子供を残して実家に戻らないといけない。子供を手放さないようにするなら、どんな手段があるのでしょうか?

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 カーゾン侯爵令嬢のアルフィンは、多くのライバル王女公女を押し退けて、大陸一の貴公子コーンウォリス公爵キャスバルの正室となった。だがそれはキャスバルが身分の低い賢女と愛し合うための偽装結婚だった。アルフィンは離婚を決意するが、子供を残して出ていく気にはならなかった。キャスバルと賢女への嫌がらせに、子供を連れって逃げるつもりだった。だが偽装結婚には隠された理由があったのだ。

「小賢しい」と離婚された私。国王に娶られ国を救う。

百谷シカ
恋愛
「貴様のような小賢しい女は出て行け!!」 バッケル伯爵リシャルト・ファン・デル・ヘーストは私を叩き出した。 妻である私を。 「あっそう! でも空気税なんて取るべきじゃないわ!!」 そんな事をしたら、領民が死んでしまう。 夫の悪政をなんとかしようと口を出すのが小賢しいなら、小賢しくて結構。 実家のフェルフーフェン伯爵家で英気を養った私は、すぐ宮廷に向かった。 国王陛下に謁見を申し込み、元夫の悪政を訴えるために。 すると…… 「ああ、エーディット! 一目見た時からずっとあなたを愛していた!」 「は、はい?」 「ついに独身に戻ったのだね。ぜひ、僕の妻になってください!!」 そう。 童顔のコルネリウス1世陛下に、求婚されたのだ。 国王陛下は私に夢中。 私は元夫への復讐と、バッケル伯領に暮らす人たちの救済を始めた。 そしてちょっとした一言が、いずれ国を救う事になる…… ======================================== (他「エブリスタ」様に投稿)

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

治癒魔法で恋人の傷を治したら、「化け物」と呼ばれ故郷から追放されてしまいました

山科ひさき
恋愛
ある日治癒魔法が使えるようになったジョアンは、化け物呼ばわりされて石を投げられ、町から追い出されてしまう。彼女はただ、いまにも息絶えそうな恋人を助けたかっただけなのに。 生きる希望を失った彼女は、恋人との思い出の場所で人生の終わりを迎えようと決める。

婚約破棄されたショックで前世の記憶を取り戻して料理人になったら、王太子殿下に溺愛されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 シンクレア伯爵家の令嬢ナウシカは両親を失い、伯爵家の相続人となっていた。伯爵家は莫大な資産となる聖銀鉱山を所有していたが、それを狙ってグレイ男爵父娘が罠を仕掛けた。ナウシカの婚約者ソルトーン侯爵家令息エーミールを籠絡して婚約破棄させ、そのショックで死んだように見せかけて領地と鉱山を奪おうとしたのだ。死にかけたナウシカだが奇跡的に助かったうえに、転生前の記憶まで取り戻したのだった。

実家を追い出され、薬草売りをして糊口をしのいでいた私は、薬草摘みが趣味の公爵様に見初められ、毎日二人でハーブティーを楽しんでいます

さら
恋愛
実家を追い出され、わずかな薬草を売って糊口をしのいでいた私。 生きるだけで精一杯だったはずが――ある日、薬草摘みが趣味という変わり者の公爵様に出会ってしまいました。 「君の草は、人を救う力を持っている」 そう言って見初められた私は、公爵様の屋敷で毎日一緒に薬草を摘み、ハーブティーを淹れる日々を送ることに。 不思議と気持ちが通じ合い、いつしか心も温められていく……。 華やかな社交界も、危険な戦いもないけれど、 薬草の香りに包まれて、ゆるやかに育まれるふたりの時間。 町の人々や子どもたちとの出会いを重ね、気づけば「薬草師リオナ」の名は、遠い土地へと広がっていき――。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

処理中です...