大切な人のためにできること

第４話 異変 俯瞰視点

「……？　なんだ、アイツら……？」
「おい、止まれ。ここは見ての通り、お前達のような者が近づいていい場所じゃない。すぐに消えろ――ぐあ！？」

　それは、マリオンがベルを鳴らす少し前のこと。オブロズエ子爵邸の正門へと近づいていた男３人が、突然門番の３人に襲い掛かったのでした。

「しっ、侵入者だ！！　門を突破される！！　早くえんぐん――が…………」
（全員の無力化、完了。アレを）
（了解）

　２人が正門をこじ開けている間に１人が指笛を鳴らし、その十数秒後に仮面をかぶった男８人が合流しました。

（増援を呼ばせた・・・・。そろそろ頃合いだ）
（奇襲お疲れさん。予定通り、そっちの相手は任せておいてくれ）
（頼んだぞ。くれぐれも……）
（分かっている。アレは厳守するさ）

　そんなやり取りをしながら敷地内を縦断し、屋敷の入り口に１０メートルほどの地点に到達した頃でした。玄関部の扉が荒々しく開き、剣を携えた屈強な男が８人出てきました。
　彼らは、この屋敷の『荒事担当』。オブロズエ子爵家はそれなりの大きさの商会を持つ裕福な家なため、有事の発生に備えて当主が８人の腕利きを――実績のある元傭兵を雇っているのです。

「あの門を無断で越えた時点で、正当防衛は成立済みだ。まとめて肉塊にしてやる」
（（ああそうかい。やれるもんならやってみな））

　１対１が８つ。８か所で戦闘が幕を開け、

「………………ばか、な……」
（（実力は互角だったが、データの差が出たな。ま、こっちは不殺でやってるんで差し引きゼロってことでよろしく））

　１分ほどで決着がつき、元傭兵８人は揃って地面に崩れ落ちました。

（これで戦力の８割は削れて、他に邪魔なのは１階にいる６人。リーダーさん方よ、全員ちゃんと位置が頭に入ってるよな？）
（とうぜん）
（おおよ）
（オーケー。突入といこう）

　２人と１人が頷きあったあと軽やかに扉を潜り、

「止まりなさい！　とまらないと――きゃあ！？」
「く、そ…………」
「だ、だんな、さま…………」
「こ、こんな、にも…………」
「つ、つよ、い…………」

　武道の心得がある『出来る』使用人全員を撃破し、一階部を静かにした５人は迷わず２階へと走り――

「「「「「ひいいいい！？」」」」」
「お前達に用はない。命をとるつもりもないから、そこで大人しくしてな」

　その場に座り込んでいる使用人達の前を通り過ぎ、一切迷うことなく夫婦の寝室の前に辿り着いたのでした。

（あちらも片がついている頃だろう。いくか）
（だな）

　懐中時計を出し、改めて時刻を確認したあと。強烈な蹴りで、目の前にある扉をこじ開けて――