大切な人のためにできること

柚木ゆず

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第7話 1年半の出来事 リシャール視点

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 ――味方は3人の使用人と、長年無念を晴らしたがっていたというアリスの実母のご両親2名――。
 ――敵は当主夫妻と両方の祖父母と親族全員、おまけに3人以外の使用人全員――。

 人数的にも金銭的にも地位的にも、絶望的な戦力差だった。
 あらゆる弱音を吐きたくなるくらいの差があった。
 でも諦めてしまうと、アリスが理不尽に地獄を見てしまう。
 それだけは、避けたかった。
 だから、考えた。
 敵を倒せる『戦力』を得る方法を、考えた。
 考えて考えて、頭が痛くなり何度も数日間ベッドから出られなくなる程に、考えて。
 3か月後だった。その末に、ひとつの策が浮かび上がる。

((……そうだ。利害の一致だ))

 俺なんかに――協力しても何のメリットもない人間に、手を貸してくれる人なんていない。ならば、強引にメリットを作ってしまえばいい。
 そう考えた俺は、母と父の立場と性格に目を付けた。

((ウチはそこそこ大きい、かつ景気の良い商会を所有している。快く思っていない人間はある程度いるはずだ))

 腹立たしいことに性根は腐っている2人だが経営者としては有能で、邪魔だと思っている存在は当然存在する。

((母も父も立場が上の者には媚びて、下の者は見下している。消えて欲しいと思うくらい腹が立っている人は、いるはずだ))

 同列以下の子爵家と男爵家の人間を扱き下ろしている醜い姿を、何度も目撃していた。その際のエピソードを、何度も自慢げに話された。
 存在すると、確信していた。

((……その人達に、持ち掛けよう。当主夫妻、会頭夫妻の排除を、手伝ってくれませんか? と))

 母も父も殺人を犯していて、その娘も滅茶苦茶にしようとしていた。時効となっているものの厳罰を受けるべき人間で、私刑となってしまうが相応の罰をくださないといけないと思っていた。
 必ずや罰を受けないといけないと、強く思っていた。
 そこで経緯はどうであれ同じ感情を持っている人を探し、男爵家2家と商会持ちの平民1家――計3家が該当すると判明した。

((……この3家が味方になってくれたら、いける……!!))

 敵の強さが100としたら、各家の力はそれぞれ30、35、40。
 個々だと一蹴されてしまうものの、手を取り合ったら105。5上回る。

((そこに俺が持っている情報などを加えたら、より確実なものとなる。これでいこう!))

 邸内の様子や各人の配置。それらと3家の力があれば、侵入&拉致が可能となる。
 100回以上シミュレーションして自信を持った俺はすぐさま秘密裏に協力を要請し、

「受けましょう」
「いい話ですな」
「是非協力させてもらいましょう」

 目的は同じなため、快諾を得たのだった。


((……直近で邸内の気が緩むのは、やはり誕生日当日の夜だな。その日に決行だ))




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