大切な人のためにできること

第１０話 シャンタルとピエールに起きた異変 俯瞰視点（２）

「オ前達。こノ女性を覚えテる？」
「この、女性……？　誰を言って――ぁ、ぁぁ……」
「……ミア―ネット……」

　真紅のマネキンの隣。そこに突然真っ赤な人間が現れ、色こそ違いますが、ソレは紛れもなく２人がよく知っている人物でした。

「ワタシ達はこの女性の声に応ジ、ワタシ達が作っタ世界ニ引きずり込ンだ。ワタシ達の目的ハ、分かル？」
「「……………………」」
「分からナいなら、教えてアげる。ワタシ達は、オ前達を殺しタいのよ」

　我が子を守る願いを叶えてあげたかった。しかしながら守護のお守りのせいで近づけなかった。ようやくお守りが消え、実行できるようになった。だから、始めた。
　真紅のマネキンはケタケタと不気味な笑い声をあげながら、経緯（いきさつ）を語りました。

「遺体かラ記憶を読み取っタ。可哀想ナ子……。彼女ヲ苦しめたオ前達を、許せナい。殺ス。殺ス。殺ス。殺ス」
「くっ、苦しめた！？　可哀そう！？　冗談じゃない！！　あの女は加害者でこっちは被害者！！　アレに同情される理由はないわ――あ、あなた……？　どうしたの……？」

　隣にいる夫の顔色がどんどん悪くなり、あっという間に青紫色になってしまいました。

「……………………」
「あ、あなた？　ねえ、あなたっ。どうしたの！？　ねえ！　ねえ！！」
「…………………………」
「語らナいのなら、代わリに語りましょウ。夫ハ言い寄られタ？　ナいナい。この男が強制シたのよ」

　応じないと、大切な家族が痛い思いをするような気がするぞ？――。ああ、美しい。なんて美しいのだ。君のような女性を抱きたかった――。
　などなど。ピエールがミア―ネットへと放った言葉のすべてが、明かされました。

「……う、うそよ……。うそよ……！」
「嘘じゃナい。夫の顔ヲ見てミ。嘘だト思う？」
「………………そんな……」

　血の気がなく、歯と歯をカタカタと震わせている。その様子で真実だと悟り、シャンタルは息を呑みました。

「……あなたから迫っていた……？　君のような女性を抱きたかった……？　わたくしを、裏切っていたのね……！？　わたくしのことを鬱陶しいとっ、邪魔な女だと思っていたのね……っ！？　嫌々、身体を重ねていたのね……！？　なにもかもっ、嘘だったのね！？」
「……だ、だってそう言わないと、大変なことに、なるじゃないか……。お前の執着心や独占欲は、異常じゃないか……。だから……好きといいつつ……別の女に逃げて……。ミア―ネットで口直しをしないと、この先もやっていけそうにないから……。深い関係を築こうとして……。愛を注いでいるうちに、子どもができてしま――ぎゃあ！？」

　首が取れそうなほどの、強烈な平手打ち。
　歯が一本折れてしまう威力のビンタを切っ掛けとして、この世界に漂っていた雰囲気が一変することとなり――