大切な人のためにできること

柚木ゆず

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第10話 シャンタルとピエールに起きた異変 俯瞰視点(4)

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「愉快なもノを見せてもらった。そのゴ褒美をあげナいとね」
「!? ………………」

 久しぶりに怨霊こと真紅のマネキンが声を出し、シャンタルはようやく思い出しました。異形がこの場にいることを。

「殺ス。コろす。コロす。自由にハさせない」
「まっ、待って! わたくしは騙されてっ、それによって勘違いをして殺してしまっただけ!! 一番悪いのはこの男よ!!」

 自分は言い寄られたと思い込んでいた――。いいえ、思い込まされていた――。
 シャンタルは激しく首を左右に振り、気絶しているピエールを鋭く指差しました。

「そもそもっ! コイツが浮気なんてしなければ何も起きていないの! わたくしのせいでとかほざいていたけどっ、コイツが我慢すればよかっただけ!! 他の方法でストレスを発散すればよかっただけでっ、わたくしは何も悪くない!! むしろはわたくしは浮気によって動き始めただけの可哀想なっ、同情されるべき被害者! 憎まれる加害者はコイツだけよ!! あの殺人はこの男のせいで起きたのよ!!」
「違ウ。全然違ウ。殺害はこノ男であり、オ前のせいで起きた」
「どうして!? なんでよ!? なんでそうなるの!?」
「言イ分も聞かず、ロくに調べモせず、感情ニ任せて殺した。ソれだけじゃない。分カる。分かル。オ前は仮ニ彼女に非がないト知っていてモ、殺シた」
「殺さない!! 勝手なこと言わないで――」
「オ前の本質を視レば、分かる。オ前はそうイう生き物ダ」

 どんな理由があっても、あの人と身体を重ねたことは許せない――。あの人の身体を覚えていていいのは自分だけ――。可哀想だからあの人には一回だけ改心のチャンスを与えてあげるけど、あの女は見逃さない――。
 もしピエールの強制だと知った場合でも、そんな言い分でシャンタルはミア―ネットを刺し殺していました。

「そうじゃない!! わたくしの何が分かるのよ!? 勝手なことをほざくな――ぎゃああああああ!?」

 目を叫んでいる叫んでいた、そんな時でした。地面から赤色の手が2本生えてきて、シャンタルの足首をがっしりと掴みました。

「無駄話、おワり。オ前もソレも、裁キの場所へ連レて行く」
「さっきの話を聞いていないの!? わたくしは違う!! 被害者よ!!」
「オ前は元凶。放免なンて認めない。サあゆきましょうか。ゼツボウの世界ヘ!!」
「いっ、いやああああ!! いやあああああああ!! いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 いくら抵抗しても無駄。シャンタルの――ピエールの身体も無数の手に引っ張られてずぶずぶと地面に沈んでゆき、やがてその姿は消えてしまったのでした。
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