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第12話(1)
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「リー様が、またここでお茶をできるなんて……っ。興奮を抑えきれずに、おもいきり抱き締めてしまいそうだわ……っ」
アオプ湖でバイバイしてから、5日後。お庭でお茶を楽しむためにロザス家を訪れたら、長身の女性が飛んできて思いきり抱き締められた。
この人はココで働く、レナモ・タランキさん25歳。別れ際にアルフレッドが言っていた、あたしに会いたがってくれている人なのです。
「リー様をこの場でギュッとできる……。なんて幸せなのかしら……!」
「しまそうと言いながらガッチリやってる辺りが、レナちゃんらしいよね。……あたしも、ここで会えて幸せだよ……っ」
しっかりと抱き締められながら他の使用人さんに頭を下げて、この人に対してはくだけた笑みをお返しする。
レナモさんのお姉さんは結婚して子供を産むまでロザス家の使用人をしていて、その関係でこの仕事に就く前から顔見知り。そのため正式な場以外では『リー様』『レナちゃん』呼びなのだ。
「アルフレッドとの買い物とかを優先しちゃって、会いにい来るのが遅れました。ごめんなさい」
「ううん、坊ちゃまとの時間は何よりも大切だもの。ワタシもね、戻ってきたその日に会いに行きたかったのよ。……多々あった私的な用事が、憎いわ……!」
レナちゃんは拳を震わせ、そのあとは悔しさが由来の奇声を数回発して――
「レナモさん……。そろそろリルを、解放してもらってもいいですかね?」
「これはこれは坊ちゃま、失礼致しました。どうぞお楽しみくださいませ」
――アルフレッドが来たので、お仕事モードに移行。テキパキと紅茶とお菓子の準備をしてくれて、プチティーパーティーの準備が整った。
「本日のお茶は、アールグレイ。お菓子は坊ちゃま特製のスコーン、そしてワタシ特製のシガレットクッキーでございます」
「ありがとう、アルフレッド、レナちゃん。早速、いただきます」
「どうぞ、お召し上がりください。……あ、こちらは独り言でございます。クッキーを先に食べてもらえたら、ワタシは嬉しいなぁ」
「「………………」」
リル。
うん。
あたし達は苦笑いをしながらアイコンタクトをして、シガレットクッキーを食べてみた。
レナちゃんの一番得意だけあって、味は100点満点。食感はサクサクでバターの香りがふんわり広がって、いくらでも食べれちゃいそう。
「その表情で、どう思ってくれてるかは丸わかり。食べてくれてありがとね」
「こちらこそ、作ってくれてありがとう。それじゃあ次は、スコーンをいただくね」
アルフレッドが用意してくれたのは、あたしにとっても色々と思い出深い、チョコとクルミのスコーン。優しい生地とチョコとクルミの相性はバッチリで、こちらも100点満点。アールグレイとの相性もよくって、口の中が一気に幸せになりましたっ。
「……おや、そろそろ旦那様がお帰りになられるお時間。名残惜しいですが、行って参ります」
「今日は、父さんと別行動だったんだよ。俺の方は運よく早めに終わって、逆に父さんは遅れてるらしいな」
「そうなんだ。おじさんが戻ってきたら、形見のネックレスと4人で楽しく――…………。できないかも、しれないね……」
門が開いて馬車が入ってきたんだけど、その数は2台。1つはおじ様が乗っていたもので、もう一つは――
「アルフレッド様っ。お久しぶりですねっ」
もう一つの豪奢な馬車から、金髪を二つに結わえた美少女が降りてきた。
あの方は、侯爵家令嬢のシルフィ・ガーネ様。あたし達が学舎にいる時から、アルフレッドに想いを寄せている人だ……。
アオプ湖でバイバイしてから、5日後。お庭でお茶を楽しむためにロザス家を訪れたら、長身の女性が飛んできて思いきり抱き締められた。
この人はココで働く、レナモ・タランキさん25歳。別れ際にアルフレッドが言っていた、あたしに会いたがってくれている人なのです。
「リー様をこの場でギュッとできる……。なんて幸せなのかしら……!」
「しまそうと言いながらガッチリやってる辺りが、レナちゃんらしいよね。……あたしも、ここで会えて幸せだよ……っ」
しっかりと抱き締められながら他の使用人さんに頭を下げて、この人に対してはくだけた笑みをお返しする。
レナモさんのお姉さんは結婚して子供を産むまでロザス家の使用人をしていて、その関係でこの仕事に就く前から顔見知り。そのため正式な場以外では『リー様』『レナちゃん』呼びなのだ。
「アルフレッドとの買い物とかを優先しちゃって、会いにい来るのが遅れました。ごめんなさい」
「ううん、坊ちゃまとの時間は何よりも大切だもの。ワタシもね、戻ってきたその日に会いに行きたかったのよ。……多々あった私的な用事が、憎いわ……!」
レナちゃんは拳を震わせ、そのあとは悔しさが由来の奇声を数回発して――
「レナモさん……。そろそろリルを、解放してもらってもいいですかね?」
「これはこれは坊ちゃま、失礼致しました。どうぞお楽しみくださいませ」
――アルフレッドが来たので、お仕事モードに移行。テキパキと紅茶とお菓子の準備をしてくれて、プチティーパーティーの準備が整った。
「本日のお茶は、アールグレイ。お菓子は坊ちゃま特製のスコーン、そしてワタシ特製のシガレットクッキーでございます」
「ありがとう、アルフレッド、レナちゃん。早速、いただきます」
「どうぞ、お召し上がりください。……あ、こちらは独り言でございます。クッキーを先に食べてもらえたら、ワタシは嬉しいなぁ」
「「………………」」
リル。
うん。
あたし達は苦笑いをしながらアイコンタクトをして、シガレットクッキーを食べてみた。
レナちゃんの一番得意だけあって、味は100点満点。食感はサクサクでバターの香りがふんわり広がって、いくらでも食べれちゃいそう。
「その表情で、どう思ってくれてるかは丸わかり。食べてくれてありがとね」
「こちらこそ、作ってくれてありがとう。それじゃあ次は、スコーンをいただくね」
アルフレッドが用意してくれたのは、あたしにとっても色々と思い出深い、チョコとクルミのスコーン。優しい生地とチョコとクルミの相性はバッチリで、こちらも100点満点。アールグレイとの相性もよくって、口の中が一気に幸せになりましたっ。
「……おや、そろそろ旦那様がお帰りになられるお時間。名残惜しいですが、行って参ります」
「今日は、父さんと別行動だったんだよ。俺の方は運よく早めに終わって、逆に父さんは遅れてるらしいな」
「そうなんだ。おじさんが戻ってきたら、形見のネックレスと4人で楽しく――…………。できないかも、しれないね……」
門が開いて馬車が入ってきたんだけど、その数は2台。1つはおじ様が乗っていたもので、もう一つは――
「アルフレッド様っ。お久しぶりですねっ」
もう一つの豪奢な馬車から、金髪を二つに結わえた美少女が降りてきた。
あの方は、侯爵家令嬢のシルフィ・ガーネ様。あたし達が学舎にいる時から、アルフレッドに想いを寄せている人だ……。
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