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第12話(4)
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「俺が、縁を切ろうとしない理由。それは、お相子だからですね」
アルフレッドは鼻の頭を人差し指で掻き、微苦笑を浮かべた。
…………。おあいこ……?
「リルには何度か伝えているんですけど、実を言うと俺も気持ちが揺らいでいる時があったんですよ。かつては別の人を気になっていて、そっちに移ろうかって考えてしまっていた時もありました」
「…………。アルフレッド様に、そんな事が……」
「ええ、ありました。……そういうことは、『自分もやったこと』ですからね。リルが関係を戻したいと思ってくれたのであれば、当然受け入れる。迷わず縁を修復し、ゆくゆくは今度こそ結婚しようと考えています」
「…………。…………」
「俺はこう見えて、外面、体裁を意識してしまう男でして。周りには内緒にしていましたが、幼馴染以外にも恋をした経験がありました。ですので、シルフィ様が懸念されている洗脳は有り得ません。今も昔も俺は、自分自身の意思で動いているのですよ」
アルフレッドはもう一度微苦笑を作って、それを見て聞いていたあたしは泣きそうになっちゃった。
ガーネ様関係の問題をまとめて解消するために、ありもしない話を作って自分を下げる。それを、当たり前のようにやってくれるなんて……。
あたしって……っ。幸せ者、だよね……っ。
「ちっぽけなプライドのせいで、ご迷惑をおかけしてすみません。俺はずっと、本心。そのため、貴方のお気持ちには応えられないのですよ」
「………………そう、だったのですか……。では、ワタシは……。単純に……。この女よりも劣っていた、という事ですか……?」
「俺の中では、リルが上回っているということです。シルフィ様はとても魅力的な女性ですが、今の自分には彼女がいますから。改めて、お断りをさせていただきたく思います」
アルフレッドは一歩離れて深く頭を下げ、頭を上げるともう一度、深く深くお辞儀を行った。
「シルフィ様を翻弄してしまったお詫びは、後日必ず行わせていただきます。暫くは私用が立て込んでおりまして、来月までお待ちいただけると幸いです」
「…………………………いえ、お詫びなんて不要ですよ。こちらこそ、ずっとごめんなさい。勝手に決めつけてしまい、アルフレッド様にご迷惑をお掛けしてしまいました」
ガーネ様も同じように腰を折り曲げ、最後に膝をチョコンと曲げて微笑む。
その笑みは異様なまでに明るく、ニッコリとしていて……。いつの間にか、全身に鳥肌が立っていた。
「……シルフィ様。お一つ、よろしいでしょうか――」
「すみません、用事を思い出しました。失礼させていただきますわ、アルフレッド様、サートル様」
ガーネ様は初めてあたしに様を付けて、あたしに対しても――あたしに対しては、それ以上にニッコリと微笑み……。そのまま馬車に乗り込み、去っていったのでした。
アルフレッドは鼻の頭を人差し指で掻き、微苦笑を浮かべた。
…………。おあいこ……?
「リルには何度か伝えているんですけど、実を言うと俺も気持ちが揺らいでいる時があったんですよ。かつては別の人を気になっていて、そっちに移ろうかって考えてしまっていた時もありました」
「…………。アルフレッド様に、そんな事が……」
「ええ、ありました。……そういうことは、『自分もやったこと』ですからね。リルが関係を戻したいと思ってくれたのであれば、当然受け入れる。迷わず縁を修復し、ゆくゆくは今度こそ結婚しようと考えています」
「…………。…………」
「俺はこう見えて、外面、体裁を意識してしまう男でして。周りには内緒にしていましたが、幼馴染以外にも恋をした経験がありました。ですので、シルフィ様が懸念されている洗脳は有り得ません。今も昔も俺は、自分自身の意思で動いているのですよ」
アルフレッドはもう一度微苦笑を作って、それを見て聞いていたあたしは泣きそうになっちゃった。
ガーネ様関係の問題をまとめて解消するために、ありもしない話を作って自分を下げる。それを、当たり前のようにやってくれるなんて……。
あたしって……っ。幸せ者、だよね……っ。
「ちっぽけなプライドのせいで、ご迷惑をおかけしてすみません。俺はずっと、本心。そのため、貴方のお気持ちには応えられないのですよ」
「………………そう、だったのですか……。では、ワタシは……。単純に……。この女よりも劣っていた、という事ですか……?」
「俺の中では、リルが上回っているということです。シルフィ様はとても魅力的な女性ですが、今の自分には彼女がいますから。改めて、お断りをさせていただきたく思います」
アルフレッドは一歩離れて深く頭を下げ、頭を上げるともう一度、深く深くお辞儀を行った。
「シルフィ様を翻弄してしまったお詫びは、後日必ず行わせていただきます。暫くは私用が立て込んでおりまして、来月までお待ちいただけると幸いです」
「…………………………いえ、お詫びなんて不要ですよ。こちらこそ、ずっとごめんなさい。勝手に決めつけてしまい、アルフレッド様にご迷惑をお掛けしてしまいました」
ガーネ様も同じように腰を折り曲げ、最後に膝をチョコンと曲げて微笑む。
その笑みは異様なまでに明るく、ニッコリとしていて……。いつの間にか、全身に鳥肌が立っていた。
「……シルフィ様。お一つ、よろしいでしょうか――」
「すみません、用事を思い出しました。失礼させていただきますわ、アルフレッド様、サートル様」
ガーネ様は初めてあたしに様を付けて、あたしに対しても――あたしに対しては、それ以上にニッコリと微笑み……。そのまま馬車に乗り込み、去っていったのでした。
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