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第12話(5)
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「大丈夫だよ。もしも何かあっても、俺が守る」
去っていく馬車を眺めていたら、右肩にポンと手が置かれた。
「殿下の時は、結局ジタバタしただけで終わったからな。前にも言ったと思うけど、二度とリルを悲しませはしない。だから、安心してくれ」
「…………うん。ありがとね、アルフレッド。今も、さっきも」
その手と言葉には優しい力がこもっていて、そう言ってくれているのは大好きな人。だから、なんだろうね。不安は一気に消えちゃって、おっきく頷きを返した。
「アルフレッド、リル君、本当に申し訳ない。進入を阻止できなかったわたしを、どうか許して欲しい」
「相手は侯爵家、父さんのせいじゃないよ。な、リル」
「誰だって断れませんよ。おじ様、頭を上げてください」
「防ぎようのない問題に触れ続けても、意味がないって。そんなことより、ティーパーティーを続けようぜ。リルも、父さんと母さんとの時間を楽しみにしてくれてるからさ」
「…………うむ、そうだな。今し方の出来事は頭から追い出し、楽しむとしよう」
丸型のテーブルに、時計回りにあたし、アルフレッド、おじ様、ネックレスの並びで座って、まったりとした時間の再開。みんなでお菓子を摘まんで、お茶を飲んで、庭には笑顔の花が咲く。
「そうそうっ。アルフレッドにもらったジグソーパズル、ほらっ。完成させたよ」
「おっ、予想より早いな。リルは意外と集中力が続かないタイプだから、もうちょっとかかると思ってた」
「あたしだって、日々成長してるんですーっ。このくらい楽勝で、かなり余裕がありましたー」
「旦那様。手が空きまして、クレープを作ってみました。皆様でお召し上がりください」
「……レナモ君……。この短時間で頼んだ仕事を終わらせクレープを作るなど、不可能なはずだが……。君はリル君が絡むと、人間の限界を超えてしまうな……」
「恐縮でございます。本日は少しばかり、本気を出してみました」
「「「…………。それで、『少し』……?」」」
「んむ? 今、ネックレスが光ったような気がしたな。妻も、共に楽しんでくれているようだ」
「そうですね。……おば様、これからはまた自由に来れます。今後もずっとずっと、お茶をしましょうね」
「母さん、この時間も手出しはさせない。安心してくれ」
こんな風に時折レナちゃんも交えて、ワイワイ、ガヤガヤ。明るくて柔らかい雰囲気だけが漂い続けて、およそ1時間半後にティーパーティーはお開きになった。
我が儘を言うと、もうちょっと続けたかった。でもアルフレッドとおじ様達には、夜にも用事があるみたいだしね。今日はここまでです。
「アルフレッド、おじ様、レナちゃん、本日はお招きありがとうございました。すっごく楽しかったです」
「わたしも、楽しかったよ。来てくれてありがとう」
「俺も楽しかった。こっちこそサンキュな」
「こちら、お土産のシガークッキーチョコレートバージョンでございます。職務の合間に作ったため少量となっておりますが、どうぞ」
あたしは500グラムぐらいありそうな袋をもらって、3人で顔を見合わせて苦笑い。ラストにもう一度レナちゃんの超人ぶりを体験して、ロザス家の馬車に乗り込んだ。
「そうだ。次に会えるのは、3日後になると思う。明日から家で色々とやるコトがあって、終わる時刻は未定なんだよ。だからとりあえず、済んだらリルの家に行ってもいい?」
「うんっ、来て来て。いつでもいいから、待ってるね」
「ああっ。それじゃあ、またな」
「んっ。またね」
あたし達は今日も次の約束をして、バイバイ。アルフレッドが念を押してくれたため安全運転で到着して、御者さんにお礼を告げて家に入り――
「ぇっ」
入っていたら、突然靴紐が切れた。
靴の紐がこうなる時は、なにか不吉なことが起きる前触れ……。らしいけど……。
あたしは、怖くない。
『大丈夫だよ。もしも何かあっても、俺が守る』
その言葉と温かさを思い出して不安を追い払い、のんびりとお風呂に入ったのでした。
去っていく馬車を眺めていたら、右肩にポンと手が置かれた。
「殿下の時は、結局ジタバタしただけで終わったからな。前にも言ったと思うけど、二度とリルを悲しませはしない。だから、安心してくれ」
「…………うん。ありがとね、アルフレッド。今も、さっきも」
その手と言葉には優しい力がこもっていて、そう言ってくれているのは大好きな人。だから、なんだろうね。不安は一気に消えちゃって、おっきく頷きを返した。
「アルフレッド、リル君、本当に申し訳ない。進入を阻止できなかったわたしを、どうか許して欲しい」
「相手は侯爵家、父さんのせいじゃないよ。な、リル」
「誰だって断れませんよ。おじ様、頭を上げてください」
「防ぎようのない問題に触れ続けても、意味がないって。そんなことより、ティーパーティーを続けようぜ。リルも、父さんと母さんとの時間を楽しみにしてくれてるからさ」
「…………うむ、そうだな。今し方の出来事は頭から追い出し、楽しむとしよう」
丸型のテーブルに、時計回りにあたし、アルフレッド、おじ様、ネックレスの並びで座って、まったりとした時間の再開。みんなでお菓子を摘まんで、お茶を飲んで、庭には笑顔の花が咲く。
「そうそうっ。アルフレッドにもらったジグソーパズル、ほらっ。完成させたよ」
「おっ、予想より早いな。リルは意外と集中力が続かないタイプだから、もうちょっとかかると思ってた」
「あたしだって、日々成長してるんですーっ。このくらい楽勝で、かなり余裕がありましたー」
「旦那様。手が空きまして、クレープを作ってみました。皆様でお召し上がりください」
「……レナモ君……。この短時間で頼んだ仕事を終わらせクレープを作るなど、不可能なはずだが……。君はリル君が絡むと、人間の限界を超えてしまうな……」
「恐縮でございます。本日は少しばかり、本気を出してみました」
「「「…………。それで、『少し』……?」」」
「んむ? 今、ネックレスが光ったような気がしたな。妻も、共に楽しんでくれているようだ」
「そうですね。……おば様、これからはまた自由に来れます。今後もずっとずっと、お茶をしましょうね」
「母さん、この時間も手出しはさせない。安心してくれ」
こんな風に時折レナちゃんも交えて、ワイワイ、ガヤガヤ。明るくて柔らかい雰囲気だけが漂い続けて、およそ1時間半後にティーパーティーはお開きになった。
我が儘を言うと、もうちょっと続けたかった。でもアルフレッドとおじ様達には、夜にも用事があるみたいだしね。今日はここまでです。
「アルフレッド、おじ様、レナちゃん、本日はお招きありがとうございました。すっごく楽しかったです」
「わたしも、楽しかったよ。来てくれてありがとう」
「俺も楽しかった。こっちこそサンキュな」
「こちら、お土産のシガークッキーチョコレートバージョンでございます。職務の合間に作ったため少量となっておりますが、どうぞ」
あたしは500グラムぐらいありそうな袋をもらって、3人で顔を見合わせて苦笑い。ラストにもう一度レナちゃんの超人ぶりを体験して、ロザス家の馬車に乗り込んだ。
「そうだ。次に会えるのは、3日後になると思う。明日から家で色々とやるコトがあって、終わる時刻は未定なんだよ。だからとりあえず、済んだらリルの家に行ってもいい?」
「うんっ、来て来て。いつでもいいから、待ってるね」
「ああっ。それじゃあ、またな」
「んっ。またね」
あたし達は今日も次の約束をして、バイバイ。アルフレッドが念を押してくれたため安全運転で到着して、御者さんにお礼を告げて家に入り――
「ぇっ」
入っていたら、突然靴紐が切れた。
靴の紐がこうなる時は、なにか不吉なことが起きる前触れ……。らしいけど……。
あたしは、怖くない。
『大丈夫だよ。もしも何かあっても、俺が守る』
その言葉と温かさを思い出して不安を追い払い、のんびりとお風呂に入ったのでした。
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