婚約破棄ですか? ありがとうございます!

柚木ゆず

文字の大きさ
34 / 74

第13話 シルフィ・ガーネ視点(2)

しおりを挟む
「シルフィ・ガーネ様でございますね? 少々、お時間をよろしいでしょうか?」

 カフェを出て馬車に戻ろうとしていたら、端正な顔立ちの青年――アルフレッド様の3分の1くらいは顔が整っている男性が、やけに丁寧に会釈をしてきた。

(わたくしがお伝えするお話は、貴方様にとっても有益になると確信しております。人目があるこの場では自己の紹介を含めて一切お明かしできませんので、あちら――わたくしが使用しております、馬車の中まで御足労願えますでしょうか?)
(その服装、所作。それなりの位置にいる方とお見受けしますが、まだ身分を明かせないのであれば、完全には信用できません。ワタシの家の馬車の中でなら、お聞きしますよ)

 そう返すと、男性は即諾。同意の上で、うちの従者が密かにナイフを突きつけた状態で馬車に戻り、そのままの体勢で向かい合って座った。

「お望み通り、人気(ひとけ)がない場所に移りました。ですのでまずは、身分を明かしていただけますか?」
「はい、勿論でございます。……ガーネ様、こちらをご覧くださいませ」

 彼が懐から取り出したのは――っ! 王家の紋章がついた、ネックレスだった。

「わたくしは、王太子殿下の直属の部下。エメリック様の命を受けて、動いております」
「王族関係者、それも殿下の……っ。そんな方が、ワタシに何の御用ですか……?」

 急いで従者を退かせて、ゴクリと唾を呑み込む。
 こちらに有益な話、この人はそう言った。それは一体、なに……?

「シルフィ・ガーネ様。貴方様は、リル・サートルの殺害を計画しておられますよね?」
「えっ……!? い、いえ……。そんな思いは決して――」
「失礼と承知で数日間貴方様の情報を収集させていただき、リル・サートルに対する感情は把握しております。……そのお返事の内容によって、捕縛などは発生致しません。こちらは紋章に誓いますので、本心をお答えくださいませ」
「わ、分かりました。はい、その通りです。あの女を殺したいと、思っています」

 直属の部下の忠誠心は非常に高く、紋章に誓うと言えば厳守される。そのため正直に内心を明かした。

「やはり、そうでしたか。ロザス邸を去られる際の表情を拝見し、確信しておりました」
「あの時も、近くにいらっしゃったのですか……!? 数日間の収集といい、なぜ私をマークされているのですか……!?」
「その理由は、利害の一致。エメリック様の目的と貴方様の目的が、一致されているためでございます」

 彼の回答は、ますます混乱させるものだった。
 殿下と、一致? エメリック殿下も、あの女を殺したがっている? どうして? なんのために?

「今抱かれている疑問、そして『エメリック様から貴方様へのお願い』などなど。ここから先は王宮にて、エメリック様が直接お話をされる事となっております」
「で、殿下が……。直接……」
「こちらも同じく、一切の他意や嘘はないと紋章に誓います。シルフィ・ガーネ様、ご同行を受け入れていただけると幸いです」
「…………それは……。今すぐ、ですか?」
「はい。丁度現在、サーフィナ様が外出されている非常に都合がいい時間帯となっておりますので。お願い致します」
「……承知致しました。ただちに移動をさせていただきますわ」

 カムフラージュのため、王宮への出入りは彼の馬車で行うそう。なので速やかに乗り換え、従者達は先に家に帰して出発。
 予期せぬ幸福をもたらしてくれた人、エメリック殿下。ワタシは引き続き戸惑いながらも胸を躍らせ、恩人・・のもとへと向かったのでした。

しおりを挟む
感想 366

あなたにおすすめの小説

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

婚約破棄された宰相です。 正直、婚約者も宰相も辞めたかったので丁度よかったです

鍛高譚
恋愛
内容紹介 「婚約破棄だ! そして宰相もクビだ!」 王宮の舞踏会で突然そう宣言したのは、女性問題を繰り返す問題王太子ユリウス。 婚約者であり王国宰相でもあるレティシアは、静かに答えた。 「かしこまりました」 ――正直、本当に辞めたかったので。 これまで王太子の女性問題の後始末、慰謝料交渉、教会対応、社交界の火消し…… すべて押し付けられていたレティシアは、婚約も宰相職もあっさり辞任。 そしてその瞬間―― 王宮が止まった。 料理人が動かない。 書類が処理されない。 伝令がいない。 ついにはトイレの汚物回収まで止まり、王宮は大混乱。 さらに王太子の新たな女性問題が発覚し、教会は激怒。 噂は王都中に広がり、王宮は完全に統治不能に。 そしてついに―― 教会・貴族・王家が下した決断は、 「王太子廃嫡」 そして。 「レティシア、女王即位」 婚約破棄して宰相をクビにした結果、 王宮を止めてしまった元王太子の末路とは――? これは、婚約破棄された宰相が女王になるまでの 完全自業自得ざまぁ物語。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

「妹の方が可愛い」と不倫夫に捨てられた私。どうぞ借金まみれの実家ごと引き取って。私が肩代わりしていた負債、すべてお二人に引き継いでおきました

唯崎りいち
恋愛
「お前より妹の方が可愛い」 不倫した夫は私を追い出し、略奪した妹と笑った。 どうぞ、その「可愛い妹」と地獄までお幸せに。 私が肩代わりしていた実家と店の多額の借金、すべてお二人に引き継いでおきましたから。 「財布」を失った元夫と、逃げ場を失った妹。 身の丈に合わない贅沢を望んだ寄生虫たちの、惨めな末路を特等席で眺めさせていただきます。

裏切ったのはあなたですよね?─湖に沈められ記憶を失った私は、大公女として返り咲き幸せを掴みます

nanahi
恋愛
婚約者ウィルとその幼馴染ベティに罠にはめられ、湖へ沈められた伯爵令嬢アミアン。一命を取り留め、公女として生まれ変わった彼女が見たのは、裏切り者の幸せな家庭だった。 アミアンは絶望を乗り越え、第二の人生を歩む決意をする。いまだ国に影響力を持つ先の王弟の大公女として、輝くほど磨き上げられていったアミアンに再会したウィルは激しく後悔するが、今更遅かった。 全ての記憶を取り戻したアミアンは、ついに二人の悪事を断罪する。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

処理中です...