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第14話 エメリック視点(1)
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「よく来てくれたね、シルフィ・ガーネ。応じてくれると信じていたよ」
王宮内にある一室。興奮気味の彼女を迎え入れ、僕達は用意してあったテーブルに向かい合う形でついた。
サーフィナを、不安にはさせたくない。彼女が戻ってくるまでに済ませよう。
「ガーネ嬢。利害の一致の話は、部下から聞いているね?」
「は、はい、伺っております。そ、その……。な、なぜエメリック様は、あの女――リル・サートルを狙われているのですか?」
「ふふっ。僕は、君の同志だ、もっとリラックスしてくれ」
興奮と緊張が半々の彼女に笑いかけ、そのあと自分の胸元に手を添える。
「彼女との縁はあのような形で切れ、僕は裏切られた。そして同時に、たっぷりと顔に泥を塗られた」
「…………『あんな女と婚約するなんて、殿下は見る目がないんだな』。身勝手に陰口を叩く声は、ワタシも耳にした事がございます」
「そうだね。だから僕はその元凶、とことん迷惑をかけてくれた彼女に、腹が立っているんだよ」
それは父さん達が仕込んでくれた、このように同情を誘う為の噂なのだが――。事実であるかのように頷き、怒りを露わにする。
「心優しい被害者が無罪放免とした事によって、法では裁けない。しかしながらソレでは納得できない。……そこで、私刑の出番だ。人生の中でも大事なイベントを台無しにしたあげく最悪の置き土産をした罰として、彼女の存在を抹消しようと決めたのだよ」
「…………あの女がもたらした悪影響は、あまりに大きい。ちょっとやそっとの罰では、治まりませんよね」
「そう、そうなのだよ。そこで僕は動き始めたのだけれど、本来私刑は違法。そのため両親――陛下達には、内緒で行わなければならない。それが些か厄介なのだよ」
2時の方角にある王の間を見やり、肩を竦めてみせる。
「どうやって秘密裏に決行するか――。そんな事を考えている時に、偶然君の話を耳にした。誰よりも早くリル・サートルの本質を見抜いていた人の、情報が入ってきたのだよ」
「っっ!」
この方は、分かってくださっている――。明らかにそう感じている様子で、小さめの瞳が見開かれた。
「ガーネ嬢。君が少し協力してくれれば確実に、完璧に完遂できるんだ。…………あの女が消えれば、君が好いている人は目を覚ませる。僕に、手を貸してくれないかな?」
「お貸ししますっ! 御協力しますっ、御協力をさせてくださいっ!」
即答。思っていた通り、おもわず身を乗り出して頷いた。
やはりシルフィ・ガーネには、そういう言葉がよく効くな。おかげで更に、操りやすい『駒』になった。
……さて。それでは、次のステップに移行だ。
王宮内にある一室。興奮気味の彼女を迎え入れ、僕達は用意してあったテーブルに向かい合う形でついた。
サーフィナを、不安にはさせたくない。彼女が戻ってくるまでに済ませよう。
「ガーネ嬢。利害の一致の話は、部下から聞いているね?」
「は、はい、伺っております。そ、その……。な、なぜエメリック様は、あの女――リル・サートルを狙われているのですか?」
「ふふっ。僕は、君の同志だ、もっとリラックスしてくれ」
興奮と緊張が半々の彼女に笑いかけ、そのあと自分の胸元に手を添える。
「彼女との縁はあのような形で切れ、僕は裏切られた。そして同時に、たっぷりと顔に泥を塗られた」
「…………『あんな女と婚約するなんて、殿下は見る目がないんだな』。身勝手に陰口を叩く声は、ワタシも耳にした事がございます」
「そうだね。だから僕はその元凶、とことん迷惑をかけてくれた彼女に、腹が立っているんだよ」
それは父さん達が仕込んでくれた、このように同情を誘う為の噂なのだが――。事実であるかのように頷き、怒りを露わにする。
「心優しい被害者が無罪放免とした事によって、法では裁けない。しかしながらソレでは納得できない。……そこで、私刑の出番だ。人生の中でも大事なイベントを台無しにしたあげく最悪の置き土産をした罰として、彼女の存在を抹消しようと決めたのだよ」
「…………あの女がもたらした悪影響は、あまりに大きい。ちょっとやそっとの罰では、治まりませんよね」
「そう、そうなのだよ。そこで僕は動き始めたのだけれど、本来私刑は違法。そのため両親――陛下達には、内緒で行わなければならない。それが些か厄介なのだよ」
2時の方角にある王の間を見やり、肩を竦めてみせる。
「どうやって秘密裏に決行するか――。そんな事を考えている時に、偶然君の話を耳にした。誰よりも早くリル・サートルの本質を見抜いていた人の、情報が入ってきたのだよ」
「っっ!」
この方は、分かってくださっている――。明らかにそう感じている様子で、小さめの瞳が見開かれた。
「ガーネ嬢。君が少し協力してくれれば確実に、完璧に完遂できるんだ。…………あの女が消えれば、君が好いている人は目を覚ませる。僕に、手を貸してくれないかな?」
「お貸ししますっ! 御協力しますっ、御協力をさせてくださいっ!」
即答。思っていた通り、おもわず身を乗り出して頷いた。
やはりシルフィ・ガーネには、そういう言葉がよく効くな。おかげで更に、操りやすい『駒』になった。
……さて。それでは、次のステップに移行だ。
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