婚約破棄ですか? ありがとうございます!

柚木ゆず

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第16話(1)

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「せめてものお詫びだ。彼が動いている間に、わたしが君の疑問を解消しよう」

 閣下は堀の深い顔を柔和に緩め、会釈をしてくださったあとアルフレッドへと視線を動かした。
 お詫びというのは、よく分からないけど……。お、お願いしますっ。よろしくお願いします……!

「把握しやすいよう、多少順を入れ替えて詳説をする。彼や使用人が携帯している銃があるだろう? あれらは、わたしが用意したものなのだよ」
「かっ、閣下がですか……!? 閣下とロザス家は、関係がないのに……。閣下が、用意してくださった……」
「うむ、そうだな。ではなぜ交流がなかった彼らに、あのようなものを提供したのか。その理由は、わたしが彼に――アルフレッド君に、感化されたからなのだ」

 感謝と自責が半分半分。メドス閣下は敬意と自虐の色を含ませ、微苦笑を浮かべた。

「彼は君を奪われた直後から、動いていたのだ。理不尽な振る舞いをする王太子と、それを甘やかし看過する国王夫妻。3人を無力化するべく――君を取り戻し『国を健全な状態』へと還すべく、東奔西走していたのだよ」
「……アルフレッドが……。私のために、動いてくれていた……」
「国王――兄さん達は圧倒的な権力を駆使し、隠蔽工作などを念入りに行っている。それ故に実現する方法は、クーデターのみ。アルフレッド君は賛同者を求め、正義感のある貴族を見極め接触を繰り返していたのだ」

 そうだったんだ……。ずっと、そんなことをしてくれてたんだ……。

「わたしも国王一家の『酷さ』は把握しており、何とかしなければと思っていた。だが所謂上級貴族の中には、操りやすい王太子が居る状況現状の維持を強く望む者も多かった。そのため大公といえど、迂闊には表沙汰にできなかった。全ての民を愛し、尽くすと誓ったはずだったのに……。家の地位保守我が身を優先してしまい、結束を呼びかけられずにいたのだよ」
「………………」
「だがアルフレッド君はそれでも動き出し、事情、王家の実態を詳しく伝えて回り、そういった勢力に悟られることなく賛同者を増やしていった。そうして彼はやがてわたしのもとへとやって来て、協力を依頼した。『勝ち馬に乗れる』と証明した上で、協力を依頼してきたのだよ。…………そんな姿を見ていたら――。どうしようもなく、自分が情けなくなった」

 閣下は改めて、アルフレッドに感心を含んだ視線を注ぐ。

「高い地位を持つ者には、相応の義務が生じる。その他の身分の者が出来ない事を行い、国に、人々に安定安寧をもたらさなければならない。……それがどうだ? 伯爵家の少年が必死になって、自分は知らんぷりこの有様だ。…………そうしてわたしはようやく、目が覚めたのだよ」

 そこからは自分も率先して動くようになり、他貴族に接触して賛同者を更に増やしていった。クーデター終了後に国が不安定にならないよう、下準備を進めていった。
 閣下は引き続き微苦笑と共に、これまでの出来事を説明してくださった。

「君との再会後もアルフレッド君達が動き回っていたのは、引き続きこの作戦を進めていたからなのだよ。想い人は運よく帰ってきたが、一家を放置していると第2第3の悲劇が生まれるかもしれない。あれらは、それを防ぐための『用事』――賛同の接触。アルフレッド君主体のためある程度は融通が利き、今回彼は監視をできたという訳なのだよ」

 ちなみに今は、おじ様がアルフレッドの分まで担当してくれているそう。
 なんでもお父様やお母様、ザックも手伝うとずっと言っていたみたいだけど、あまりにもあたしと関係が近い。そのため万が一の発覚を考慮して、不参加。その代わりに銃などの使用訓練を密かに行い、クーデター時には衛兵を怯ませられるように――無血で降伏させられるように、アルフレッドと一緒に射撃などの腕を磨いていたそう。

「『数』と『戦力』が合わされば、想像以上に大きな力となる。そのため賛同者には――特に真っすぐな心の持ち主には、質の良い武器を提供し、保管してもらっているのだよ」
「ああ……。あれの中身は、武器だったんですね」

 あの日リビングの隅にあった、謎の木の箱。あそこには、そんなものが詰まってたんだね。

「決行時は速やかに集合、実行できるよう、各家に備えてあるのだよ。……さて、以上が君が抱いている疑問への回答だ。他には何かあるかね?」
「いえ、何もございません。ありがとうございました」

 遠慮ではなく本当に聞きたいことは何もないので、姿勢を正してお辞儀を行う。そうしたら丁度アルフレッドが戻ってきた――んだけど、来るなり「思った通りでした」と閣下に対して肩を竦めた。
 ??? 思った通り……?

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