41 / 74
第16話(1)
しおりを挟む
「せめてものお詫びだ。彼が動いている間に、わたしが君の疑問を解消しよう」
閣下は堀の深い顔を柔和に緩め、会釈をしてくださったあとアルフレッドへと視線を動かした。
お詫びというのは、よく分からないけど……。お、お願いしますっ。よろしくお願いします……!
「把握しやすいよう、多少順を入れ替えて詳説をする。彼や使用人が携帯している銃があるだろう? あれらは、わたしが用意したものなのだよ」
「かっ、閣下がですか……!? 閣下とロザス家は、関係がないのに……。閣下が、用意してくださった……」
「うむ、そうだな。ではなぜ交流がなかった彼らに、あのようなものを提供したのか。その理由は、わたしが彼に――アルフレッド君に、感化されたからなのだ」
感謝と自責が半分半分。メドス閣下は敬意と自虐の色を含ませ、微苦笑を浮かべた。
「彼は君を奪われた直後から、動いていたのだ。理不尽な振る舞いをする王太子と、それを甘やかし看過する国王夫妻。3人を無力化するべく――君を取り戻し『国を健全な状態』へと還すべく、東奔西走していたのだよ」
「……アルフレッドが……。私のために、動いてくれていた……」
「国王――兄さん達は圧倒的な権力を駆使し、隠蔽工作などを念入りに行っている。それ故に実現する方法は、クーデターのみ。アルフレッド君は賛同者を求め、正義感のある貴族を見極め接触を繰り返していたのだ」
そうだったんだ……。ずっと、そんなことをしてくれてたんだ……。
「わたしも国王一家の『酷さ』は把握しており、何とかしなければと思っていた。だが所謂上級貴族の中には、操りやすい王太子が居る状況の維持を強く望む者も多かった。そのため大公といえど、迂闊には表沙汰にできなかった。全ての民を愛し、尽くすと誓ったはずだったのに……。家の地位保守を優先してしまい、結束を呼びかけられずにいたのだよ」
「………………」
「だがアルフレッド君はそれでも動き出し、事情、王家の実態を詳しく伝えて回り、そういった勢力に悟られることなく賛同者を増やしていった。そうして彼はやがてわたしのもとへとやって来て、協力を依頼した。『勝ち馬に乗れる』と証明した上で、協力を依頼してきたのだよ。…………そんな姿を見ていたら――。どうしようもなく、自分が情けなくなった」
閣下は改めて、アルフレッドに感心を含んだ視線を注ぐ。
「高い地位を持つ者には、相応の義務が生じる。その他の身分の者が出来ない事を行い、国に、人々に安定安寧をもたらさなければならない。……それがどうだ? 伯爵家の少年が必死になって、自分は知らんぷりだ。…………そうしてわたしはようやく、目が覚めたのだよ」
そこからは自分も率先して動くようになり、他貴族に接触して賛同者を更に増やしていった。クーデター終了後に国が不安定にならないよう、下準備を進めていった。
閣下は引き続き微苦笑と共に、これまでの出来事を説明してくださった。
「君との再会後もアルフレッド君達が動き回っていたのは、引き続きこの作戦を進めていたからなのだよ。想い人は運よく帰ってきたが、一家を放置していると第2第3の悲劇が生まれるかもしれない。あれらは、それを防ぐための『用事』――賛同の接触。アルフレッド君主体のためある程度は融通が利き、今回彼は監視をできたという訳なのだよ」
ちなみに今は、おじ様がアルフレッドの分まで担当してくれているそう。
なんでもお父様やお母様、ザックも手伝うとずっと言っていたみたいだけど、あまりにもあたしと関係が近い。そのため万が一の発覚を考慮して、不参加。その代わりに銃などの使用訓練を密かに行い、クーデター時には衛兵を怯ませられるように――無血で降伏させられるように、アルフレッドと一緒に射撃などの腕を磨いていたそう。
「『数』と『戦力』が合わされば、想像以上に大きな力となる。そのため賛同者には――特に真っすぐな心の持ち主には、質の良い武器を提供し、保管してもらっているのだよ」
「ああ……。あれの中身は、武器だったんですね」
あの日リビングの隅にあった、謎の木の箱。あそこには、そんなものが詰まってたんだね。
「決行時は速やかに集合、実行できるよう、各家に備えてあるのだよ。……さて、以上が君が抱いている疑問への回答だ。他には何かあるかね?」
「いえ、何もございません。ありがとうございました」
遠慮ではなく本当に聞きたいことは何もないので、姿勢を正してお辞儀を行う。そうしたら丁度アルフレッドが戻ってきた――んだけど、来るなり「思った通りでした」と閣下に対して肩を竦めた。
??? 思った通り……?
閣下は堀の深い顔を柔和に緩め、会釈をしてくださったあとアルフレッドへと視線を動かした。
お詫びというのは、よく分からないけど……。お、お願いしますっ。よろしくお願いします……!
「把握しやすいよう、多少順を入れ替えて詳説をする。彼や使用人が携帯している銃があるだろう? あれらは、わたしが用意したものなのだよ」
「かっ、閣下がですか……!? 閣下とロザス家は、関係がないのに……。閣下が、用意してくださった……」
「うむ、そうだな。ではなぜ交流がなかった彼らに、あのようなものを提供したのか。その理由は、わたしが彼に――アルフレッド君に、感化されたからなのだ」
感謝と自責が半分半分。メドス閣下は敬意と自虐の色を含ませ、微苦笑を浮かべた。
「彼は君を奪われた直後から、動いていたのだ。理不尽な振る舞いをする王太子と、それを甘やかし看過する国王夫妻。3人を無力化するべく――君を取り戻し『国を健全な状態』へと還すべく、東奔西走していたのだよ」
「……アルフレッドが……。私のために、動いてくれていた……」
「国王――兄さん達は圧倒的な権力を駆使し、隠蔽工作などを念入りに行っている。それ故に実現する方法は、クーデターのみ。アルフレッド君は賛同者を求め、正義感のある貴族を見極め接触を繰り返していたのだ」
そうだったんだ……。ずっと、そんなことをしてくれてたんだ……。
「わたしも国王一家の『酷さ』は把握しており、何とかしなければと思っていた。だが所謂上級貴族の中には、操りやすい王太子が居る状況の維持を強く望む者も多かった。そのため大公といえど、迂闊には表沙汰にできなかった。全ての民を愛し、尽くすと誓ったはずだったのに……。家の地位保守を優先してしまい、結束を呼びかけられずにいたのだよ」
「………………」
「だがアルフレッド君はそれでも動き出し、事情、王家の実態を詳しく伝えて回り、そういった勢力に悟られることなく賛同者を増やしていった。そうして彼はやがてわたしのもとへとやって来て、協力を依頼した。『勝ち馬に乗れる』と証明した上で、協力を依頼してきたのだよ。…………そんな姿を見ていたら――。どうしようもなく、自分が情けなくなった」
閣下は改めて、アルフレッドに感心を含んだ視線を注ぐ。
「高い地位を持つ者には、相応の義務が生じる。その他の身分の者が出来ない事を行い、国に、人々に安定安寧をもたらさなければならない。……それがどうだ? 伯爵家の少年が必死になって、自分は知らんぷりだ。…………そうしてわたしはようやく、目が覚めたのだよ」
そこからは自分も率先して動くようになり、他貴族に接触して賛同者を更に増やしていった。クーデター終了後に国が不安定にならないよう、下準備を進めていった。
閣下は引き続き微苦笑と共に、これまでの出来事を説明してくださった。
「君との再会後もアルフレッド君達が動き回っていたのは、引き続きこの作戦を進めていたからなのだよ。想い人は運よく帰ってきたが、一家を放置していると第2第3の悲劇が生まれるかもしれない。あれらは、それを防ぐための『用事』――賛同の接触。アルフレッド君主体のためある程度は融通が利き、今回彼は監視をできたという訳なのだよ」
ちなみに今は、おじ様がアルフレッドの分まで担当してくれているそう。
なんでもお父様やお母様、ザックも手伝うとずっと言っていたみたいだけど、あまりにもあたしと関係が近い。そのため万が一の発覚を考慮して、不参加。その代わりに銃などの使用訓練を密かに行い、クーデター時には衛兵を怯ませられるように――無血で降伏させられるように、アルフレッドと一緒に射撃などの腕を磨いていたそう。
「『数』と『戦力』が合わされば、想像以上に大きな力となる。そのため賛同者には――特に真っすぐな心の持ち主には、質の良い武器を提供し、保管してもらっているのだよ」
「ああ……。あれの中身は、武器だったんですね」
あの日リビングの隅にあった、謎の木の箱。あそこには、そんなものが詰まってたんだね。
「決行時は速やかに集合、実行できるよう、各家に備えてあるのだよ。……さて、以上が君が抱いている疑問への回答だ。他には何かあるかね?」
「いえ、何もございません。ありがとうございました」
遠慮ではなく本当に聞きたいことは何もないので、姿勢を正してお辞儀を行う。そうしたら丁度アルフレッドが戻ってきた――んだけど、来るなり「思った通りでした」と閣下に対して肩を竦めた。
??? 思った通り……?
13
あなたにおすすめの小説
「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」
歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。
「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは
泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析
能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り
続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。
婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
婚約破棄された公爵令嬢ですが、戻らなかっただけです
鷹 綾
恋愛
王太子カイル殿下から、社交界の場で婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リュシエンヌ。
理由は――
「王太子妃には華が必要だから」。
新たに選ばれたのは、愛らしく無邪気な義妹セシリア。
誰もが思った。
傷ついた令嬢は泣き、縋り、やがて戻るのだと。
けれどリュシエンヌは、ただ一言だけ告げる。
「戻りません」
彼女は怒らない。
争わない。
復讐もしない。
ただ――王家を支えるのをやめただけ。
流通は滞り、商会は様子を見始め、焦った王太子は失点を重ねる。
さらに義妹の軽率な一言が決定打となり、王太子妃候補の座は静かに消えた。
強いざまあとは、叫ぶことではない。
自らの選択で、自らの立場を削らせること。
そして彼女は最後まで戻らない。
支えない。
奪わない。
――選ばれなかったのではない。
彼女が、選ばなかったのだ。
これは、沈黙で勝つ公爵令嬢の物語。
「妹の方が可愛い」と不倫夫に捨てられた私。どうぞ借金まみれの実家ごと引き取って。私が肩代わりしていた負債、すべてお二人に引き継いでおきました
唯崎りいち
恋愛
「お前より妹の方が可愛い」
不倫した夫は私を追い出し、略奪した妹と笑った。
どうぞ、その「可愛い妹」と地獄までお幸せに。
私が肩代わりしていた実家と店の多額の借金、すべてお二人に引き継いでおきましたから。
「財布」を失った元夫と、逃げ場を失った妹。
身の丈に合わない贅沢を望んだ寄生虫たちの、惨めな末路を特等席で眺めさせていただきます。
裏切ったのはあなたですよね?─湖に沈められ記憶を失った私は、大公女として返り咲き幸せを掴みます
nanahi
恋愛
婚約者ウィルとその幼馴染ベティに罠にはめられ、湖へ沈められた伯爵令嬢アミアン。一命を取り留め、公女として生まれ変わった彼女が見たのは、裏切り者の幸せな家庭だった。
アミアンは絶望を乗り越え、第二の人生を歩む決意をする。いまだ国に影響力を持つ先の王弟の大公女として、輝くほど磨き上げられていったアミアンに再会したウィルは激しく後悔するが、今更遅かった。
全ての記憶を取り戻したアミアンは、ついに二人の悪事を断罪する。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました
歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と
罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが
やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、
エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」
辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。
商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。
元夫が「戻ってこい」と泣きつくが——
「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる