婚約破棄ですか? ありがとうございます!

柚木ゆず

文字の大きさ
52 / 74

第22話 戦いを終えて蘇る、あの日の記憶 アルフレッド視点

しおりを挟む
『アルフレッド、ありがとう。あたしのためにずっとずっと、頑張ってくれてありがとうございました……っ』

『あたしね、今も昔も幸せだよ。アルフレッドと出会えて、アルフレッドに好きになってもらえて、アルフレッドを好きになれて。すごく幸せ……!』

 エメリックをぶっ飛ばした直後も、様々な処理をしていて馬車に乗り込む時も、父さんやおじさんの計らいでこうして2人でサートル家に帰っている間も。リルは俺の頬に氷をあてながら微笑んでくれて、その影響なんだと思う。


 あの日の泣き顔も鳴き声も、浮かんでこなくなった。


 その代わりに浮かんでくるのは、笑い顔と明るい声ばかり。


『アルフレッド……っ。あたしもずっと会いたくって、すっごく幸せ……っ』
 10ヵ月ぶりに再会した日の、笑顔と声。

『ぁ、ありがと。アルフレッドもその服、似合ってるよ』
 10ヵ月ぶりに買い物デートをした日の、照れた顔と声。

『アルフレッドの手料理だし、10ヵ月ぶりだし、隣にいてくれるのはアルフレッド。そしたら、こうなっちゃうよね』
 10ヵ月ぶりにランチをした日の、満面の笑みと声。


 すっかり、記憶が上書きされた。
 再会した瞬間から俺にとっても本当に楽しい日々が再開していたんだけど、しっかり片が付いてないから――。何かと、考えることや蘇ることがあった。
 でもそれはもう、なくなった。
 …………だから今夜くらいは、ちょっとくらい自分に甘くなってもいいよな?


 お疲れ様、俺。
 へなちょこなりに、よく頑張ったな。


 暗躍の日々を振り返って安堵の息を吐き、そうしていたら――。左隣に座っていたリルが、俺の左手の指に自分の右手の指を絡めてきた。

へなちょこ・・・・・じゃないよ、アルフレッドは。アルフレッドは、すっごくカッコよくって優しいあたしのヒーロー。ずっとずーっと、自分に甘くしても・・・・・・・・いいんだよ?」
「リル……。ありゃりゃ。俺の内心、ぜーんぶ読まれちゃってたか」
「幼馴染で恋人ですからっ。頬っぺたに触れてましたからっ。今夜はあたしにとっても特別ですからっ。アルフレッドさんの考えが、簡単に分かっちゃいましたっ」

 リルはイタズラっぽく片目を瞑り、くすっとはにかむ。そうやって可愛らしい笑窪を作った彼女は、「ね」とくすぐったそうに目を細めた。

「特別な夜だから、なんだろうね。こうやってたら、あの日・・・のことを思い出しちゃった」
「流石は幼馴染で恋人の、リルさん。俺も、おんなじだよ。その日、それとあの日のことを思い出してた」

 その日――。それは、告白した日。
 あの日――。それは…………。

 俺が、リルへの想いを認識した日。

 そうそう。そうだった。
 俺達の『この関係』は、あそこから始まったんだよな――。

しおりを挟む
感想 366

あなたにおすすめの小説

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

処理中です...