婚約破棄ですか? ありがとうございます!

柚木ゆず

文字の大きさ
61 / 74

第25話 恋人になった直後の、ギクシャクが消えるお話 俯瞰視点(2)

しおりを挟む
「アルフレッドさぁん。今日は6月、6月の奇跡の真っ只中。周りにいる方々は、皆さん仲良しですねぇ」
「ええリルさぁん、素敵なカップルばかりですねぇっ。………………そっ、そういえばっっ!」
「はい? なんでしょう、アルフレッドさん」
「そういえば俺達だって、恋人じゃあないですかっ。どっ、どうでしょうかねっ? いい機会ですしっ。俺達も、皆さんの真似をしてみませんかっ?」
「いいですねっ! じゃ、じゃあっ! あれしましょうあれっ!」
「あれですかっ? それってもしかしてっ! あそこで行われている!」
「そうですっ! あそこの2人がしているような――行為ではなく! そちらのお2人のように、微笑み合ってみましょうっ!」
「おおっ! そっ、それは名案ですっね! に、にこ~」
「に、にこ~」

 リルとアルフレッドは口元をヒクつかせ、心の中では崩れ落ちます。

((チャンスをフイにしちゃった! あたしのバカバカバカ……っ))
((俺のバカっ、なに同意してるんだ……っ。否定しろよ、俺……っ))

 実行したいのに、いざ実行できるとなると恥ずかしくなってしまう。2人はそんな自分を心の中で叱咤し、再び立ち上がります。

((…………さっきみたいに声に出して準備をしたら、意識してできなくなっちゃう。だったらっ。声に出さなければいい))
((動かすのは喉と口じゃなくて、手。心が『照れ』を見せる前に、繋いでしまえばいいんだ))

 名付けて、『心が反応する前にやってしまおう』作戦。2人は密かに、高速で手を動かす準備を始めました。

((今からはあたしは、右手を動かす。でもそれは、恋人繋ぎをするためじゃない。右手を右方向に思い切り動かしたくなったから、動かすだけ))
((今から俺は、左手を動かす。けどそれは、恋人繋ぎをするためじゃない。左手を左方向に思い切り動かしたくなったから、動かすだけ))

 よし。やろう!!

 リルとアルフレッドは自分の心を騙し、刮目を合図に手が動き出します。
 恋は人に、無限のパワーを与えてくれるもの。そのため、それはまるで流星の如き速さ。高速を遥かに超える神速で、2人の右手と左手は横に振られて――

「「ぎゃぁあ!?」」

 ――そんな手は激しくぶつかり合い、たまらず2人はしゃがみ込んでしまったのでした。

しおりを挟む
感想 366

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

婚約破棄された公爵令嬢ですが、戻らなかっただけです

鷹 綾
恋愛
王太子カイル殿下から、社交界の場で婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リュシエンヌ。 理由は―― 「王太子妃には華が必要だから」。 新たに選ばれたのは、愛らしく無邪気な義妹セシリア。 誰もが思った。 傷ついた令嬢は泣き、縋り、やがて戻るのだと。 けれどリュシエンヌは、ただ一言だけ告げる。 「戻りません」 彼女は怒らない。 争わない。 復讐もしない。 ただ――王家を支えるのをやめただけ。 流通は滞り、商会は様子を見始め、焦った王太子は失点を重ねる。 さらに義妹の軽率な一言が決定打となり、王太子妃候補の座は静かに消えた。 強いざまあとは、叫ぶことではない。 自らの選択で、自らの立場を削らせること。 そして彼女は最後まで戻らない。 支えない。 奪わない。 ――選ばれなかったのではない。 彼女が、選ばなかったのだ。 これは、沈黙で勝つ公爵令嬢の物語。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

「妹の方が可愛い」と不倫夫に捨てられた私。どうぞ借金まみれの実家ごと引き取って。私が肩代わりしていた負債、すべてお二人に引き継いでおきました

唯崎りいち
恋愛
「お前より妹の方が可愛い」 不倫した夫は私を追い出し、略奪した妹と笑った。 どうぞ、その「可愛い妹」と地獄までお幸せに。 私が肩代わりしていた実家と店の多額の借金、すべてお二人に引き継いでおきましたから。 「財布」を失った元夫と、逃げ場を失った妹。 身の丈に合わない贅沢を望んだ寄生虫たちの、惨めな末路を特等席で眺めさせていただきます。

処理中です...